楔の正体2
紫苑と紅蓮はシードの目の前で止まっていた。
確実に首と胴体を切り裂き命を刈り取っていたはずの刃。
それは光を放つ何かによって阻まれていた。
「バカな…何故。
何故お前のような者がそれを扱える?」
シードは目の前のそれが自身の手に握られているのを確認すると切っ先を振り上げた。
凄まじい光を放ち振るわれたそれは太陽の化身の持つ紫苑と紅蓮を破壊した。
太陽の化身は吹き飛ぶ。
吹き飛びながらも星の弓を構えた。
「ミーティア!」
星空の黒を押し固めたような漆黒がシードに迫る。
「返してもらったぞ。
Dead or Die。」
手に握られたそれを体を支点にして振り回した。
漆黒の矢はシードの放った神の裁きにかき消された。
光が弾け視界が閉ざされる。
光の中からシードは飛び出し手のそれを太陽の化身目掛けて突き刺した。
太陽の化身は星の弓を犠牲に切っ先をなんとか逸らした。
星の弓は破壊されたがシードの武器を腕と腹の間に挟むように封じる。
星の弓の代わりに左手に守人の大斧を担ぎ振り抜く。
しかし体は強張り動かない。
腕と腹で抑えていた光放つ何かをシードはなんの抵抗もなく引き抜く。
シードは動けない太陽の化身の腹部を思いきり蹴る。
太陽の化身は吹き飛び守人の大斧を地面に突き立てそれ以上吹き飛ぶのを塞いだ。
シードは遠く離れた太陽の化身に向かって右手のそれを振るった。
瞬間迸るは空を支配する天の一撃。
太陽の化身はそれをなんとか避ける。
避けることができたのはそれを知っていたから。
何が放たれるか理解していたから。
「何故、何故だ!
それは…」
シードの持つ光が弾け手には紫苑と紅蓮が握られていた。
「…」
シードは何も話さない。
シードは駆け出す。
紫苑と紅蓮で太陽の化身に切りかかる。
太陽の化身はそれを守人の大斧と右手の狼王の特大剣で叩き潰そうとする。
間合いは太陽の化身の方が長い。
シードは紫苑、紅蓮の間合いでもなく。
それこそ太陽の化身の間合いでもないところで二つの神器を振るった。
神器から光が放たれ、太陽の化身の体が強張り動かなくなる。
その瞬間紫苑と紅蓮で連撃を叩き込む。
連撃の最後に紫苑と紅蓮は光輝く。
光放つ一撃は守人の大斧と狼王の特大剣を完全に破壊した。
しかしその一撃はまだ止まらない。
太陽の化身を切り裂き地面へと吸い込まれる。
時が止まっているかのようなこの場所で、止まることなく地下深くへとその光は吸い込まれた。
「また返してもらったぞ。」
その言葉と共にどこからか鐘の音が響き渡る。
太陽の化身は立ち上がり左手には三日月の大鎌を右手に陽光の槍を握って迫る。
シードを氷と炎が襲いかかる。
「タイダルウェーブ。」
氷は巨大な津波は氷も炎も等しく飲み込む。
「くっ!
オーバーレイ!」
放たれる光の奔流は巨大な津波を凍てつかせ、燃やし吹き飛ばす。
巨大な津波が霧散した、その向こうで。
シードが星の弓を構えていた。
「ミーティア。」
短かく放たれた一言と太陽の化身に向けて放たれた神の裁き。
三日月の大鎌でその神の裁きに対抗する。
致命傷は免れたが三日月の大鎌は破壊される。
太陽の化身は陽光の槍と長剣を構え迫る。
「ふざけるな!
貴様が、貴様に!
使えるはずがないんだ!」
シードは狼王の特大剣を一振り。
その一振りで槍も長剣も破壊された。
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