無手2
「お前は一体誰だ?」
「私達はいや、私は太陽の化身。
この世に2番目に舞い降りし神、その神器。」
太陽の化身は陽光の長剣を横に振るう。
それをシードはかわす。
牽制のつもりなのだろうか。飛び出した炎の斬撃はシードを大きく逸れた。
それに太陽の化身は怪訝な顔を覗かせた。
「さてどうするつもりだ?
頼みの綱の神器である私達とどう戦う?」
太陽の化身は笑っている。
シードに戦う術がないと知っているから。
だがシードは拳を握り締め走り出す。
「無手で戦うか?
だがお前と戦う暇はない。」
太陽の化身は武器を入れ替える。
星の弓と陽光の槍を構えた。
そして星の弓に陽光の槍を番える。
「スターライトジャベリン。」
光が収束し放たれる。
星の弓が放つ神の裁き、ミーティアより速く。
陽光の槍の神の裁きより鋭い一撃。
避ける余裕などあるはずもなく。
それは正確にシードを捉えた。
本当に時が止まっているのか。
放たれた一撃は壁に当たるが壁を傷付けることはなかった。
そしてそれはシードにも言えることだった。
「何故外れた?」
放たれた陽光の槍は確実にシードを捉えていたはずだった。
しかし当たる寸前シードを避けた。
「太陽から生まれた陽光。
何故私に逆らう。
元は私の一部だった神器が。」
太陽の化身は右手に狼王の特大剣を。
左手には守人の大斧を担ぎ迫ってくる。
大振りな一撃を避けるのは反撃の手段を持たないシードが唯一取れる行動でもあった。
「どうした?避けてるだけでは私には!」
狼王の特大剣と守人の大斧の上段から打ち下ろす攻撃。
しかしそれは囮で上に注意を向けた瞬間腹部を思い切り蹴られ吹き飛ぶ。
「勝てんぞ!
Dead or Die!」
特大武器を使った流れるような連撃。
神器を振るう度放たれる紫と赤の斬撃。
おそらくあの神の裁きは紫苑と紅蓮の力も合わさっているのだろう。
ならば掠っただけでも致命傷。
シードは死に物狂いで避けることしかできなかった。
「くそ…!」
シードは逆転の手を考える。
武器は何もない。
勝てる算段は何もない。
だが考える。
それしか道が残されていないからだ。
「よくかわすな。
まるで踊っているようだぞ?だが滑稽な踊りだ。
お前の避ける事の出来ない技で、掠りでもすれば死ぬ神器で。
確実に仕留めよう。」
太陽の化身の両手には紫苑と紅蓮が。
紫苑は毒。紅蓮は回復させ続けることで出血。
つまりどちらを受けても絶命するのだろう。
「獣王無塵。」
太陽の化身の姿が消えた。
少しずつ近づいているのだろう。
剣を振るう音。地面を蹴る音。
風を切って走る音。
少しずつ大きくなっていく。
気付けば2つの刃がシードの体と頭を狙っていた。
反応することもできず。
走馬灯と言うものが頭の中を駆け巡る。
実に短い人生。
リーナと出会い旅が始まった。
今も、そしてそのときも自分が何者か分からず。
考えても自分がわからない。
何者なのか、何をすべきなのか。
ただ最後に疑問がよぎった。
頭の中に出てきたルーツは言っていた。
全ての欠片を手に入れたと。
全て集まったなら。きっとそれは何かが完成したのだろう。
頭の中で初めて会ったのはソルだ。
だがすぐ居なくなってしまった。
その次はハーランだ。
だがハーランは何も言わず座っていた。
何が違う?
ソルと他の神。
そして全ての欠片を手に入れて現れたルーツ。
いやそもそもソルもハーランも死んだ。
ならば頭の中に居るのは神器の作り出した幻。記憶の存在。
迫る凶刃。
死の間際、シードは静かに笑った。
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