岩の鎧
岩のような鎧なのか。
鎧のような岩なのか。
それは近付いてくる。
右手には岩のような棍棒を持ち、
左手にはこれまた岩のような大盾を持っている。
歩く度地面が軋むような振動がする。
それほどの重量なのだろう。
「シード様、あの方は神様のようです‥ですが、私はあの方を知りません‥
あのような鎧を身に纏う神の話を聞いたことがありません‥」
「人の子よ、お前はリアナの知り合いか?」
岩の鎧はリーナに問いただす。
「そうです。私はリアナ様から導き手としてこちらのシード様をお連れするように頼まれここに来ました。」
岩の鎧は今度はシードを見て聞いた。
「人の子よ。お前は誰だ?」
「俺は‥シード。
俺が誰かは分からない。だからここに来た。
リアナと言う神が俺の事を知っているかもしれないから。
ソルにここを目指せと言われたから。」
「ほう。お前はソルに言われたと‥」
そう言って目の前の岩の鎧は笑い出す。
「教えてやる。
お前は侵入者だ。
この場所にどうやって入ってきたか知らんが‥
排除する。」
言い終わらないうちにこちらに岩の棍棒を振り上げながら迫ってきた。
「リーナ!逃げろ!」
「と言いたいんだが、生憎人の子に振るう刃を持ち合わせていない。
久方ぶりの客人だ。
話をしようじゃないか?」
そう言って岩の棍棒を地面に置いてそれを椅子代わりにして座った。
リーナを守るように立ち塞がったシードに対して
「何のもてなしも出来ないが取り敢えず座ると良い」
そう言って手招きをする。
シードは警戒しながら、リーナはそんなシードの隣に腰をおろした。
「さて、まずはお前達の話を聞かせてくれ。」
その言葉にリーナが答えた。
「私はリアナ様にこちらのシード様をアルタの平原へとお連れするようにと‥
ここより北の山間。その中腹の洞窟からやってきました。」
「ほう。なるほどな。リアナの真意はまるで分からんが‥リアナを臆病者と言った件を謝罪しよう。」
そう言って岩の鎧を纏う神は頭を下げた。
「頭を上げてください!敬うべき神様にそのようなことされるわけには‥」
「そうは言うが私の言葉はあまりに無神経であった。
幸運の女神ラキとして謝罪をさせてくれ。
すまなかった。」
そういって岩の鎧、女神ラキはさらに頭を下げた。