向かった先
フロウとソアラだけで何か話している。
「ありえるのか?」
「だがそうとしか考えられない…
幸いあいつらは気付いてない。」
「超越者か…」
フロウとソアラは話を終えたのか、近付いてくる
「おそらくカナンはここより西に向かった。」
「ここから西に何か奴の興味を引くものがあると言うことか…
しかしどうする?
このまま奴を追うべきか?
それとも他の楔の塔に向かうべきか?」
ラキとソアラの言葉にフロウが答える。
「追って欲しくないのだろうな。
ならば追いかける方が賢明かもしれない。
それに気になることもある…」
シードにも気になることがあった。
先程の黒い鎧も腹部の変わった幻惑蝶も死体を切り刻み運んでいた。
食料なのだろうか?
だがもし食料ではないのなら…
「ラキ。神速馬に風迅鳥の翼が生えてたんだな?
もしカナンがそんな奴らを作っているのだとしたら生きている素体か死体が必要なんじゃないか?」
今この地は至る所で生存競争が起きている。
ならば簡単に死体が手に入るのかもしれない。
「先程我が倒した巨大者が無くなったのも同じ理由だと?
ならば西に行くのはカナンの拠点があると考えるべきか…」
そこにソアラが口を挟む。
「だが私達が戦った」
「暴風鳥馬だ」
ラキは名前を付けていたらしい。
「暴風鳥馬はカナンの向かった先とは逆東からやってきた。
西に住処があると考えるのは早計では?」
ソアラの言うことも最もだ。
なら他に西に向かう理由は?
死体ならこの地に溢れかえっている。
それこそ特定の住処を持っている種族が狙いか?
「くそ!狙いは統率狼達だ!」
シードの言葉にフロウとソアラが背をかがめ皆を背に乗せる準備をする。
フロウの背にはシードとプラチナが、ソアラにはラキに連れられリーナが跨った。
「なぜ統率狼が狙われる?」
「幻惑蝶と一緒で特定の住処から出ることはない。
つまりはそこに行けば確実に欲しい種族の死体が手に入る。」
フロウの背でプラチナが唸る。
自分の仲間が危機に陥るかもしれないと気が気ではないのだろう。
もし今の考察が当たるのならば…。
カナンが死体を集めているのは、死体を掛け合わせ配下を増やすのが目的か?
適応者達は真実を知って生きることを諦めた。
それがカナンと道を違えた理由になったようだ。
ならばその真実を知ることがカナンの行動理由を知ることになるのだろう。
「なぁフロウこの世界の真実ってなんなんだ?」
「…お前が全ての神器を手に入れれば真実に辿り着けるかもしれないな。
だがそれでも辿り着けはしないかもな…
雷滅龍…この世界の真実に最初に辿り着き、最初に絶望した者。
いつか奴に会え、きっと連れてってくれる。
かつてのルーツにそうしてくれたようにな…」
「連れてく?どこへ?」
そんな疑問を吹き飛ばすようにフロウは速度を上げた。
ソアラもそれに追従する。
風を雲を突き抜け目指すは統率狼の支配領域。
空には闇が迫り初めていた。
眼下に近付く統率狼の支配領域も少しずつ闇にのまれる。
なのにその森はまるで日が差しているかのように明るい。
まるで昼間のように明るく燃え盛っている。
「急ぐぞ!
掴まれ。」
フロウとソアラは地面に落ちていくように急降下していく。
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