イービルカナン
リーナがその力で皆の身体の傷を癒やそうとしている時、上空からラキを乗せた適応者がやってきた。
「あれは?」
「我の同胞。氷煉龍グランソアラだ。
ソアラ随分遅かったな。」
「すまない。
少しゆっくりし過ぎたのもあるが…
まぁ遅くなった理由もある。」
ソアラが降り立ちラキもその背中から飛び降りる。
「お前たちの様子とこのあたりの荒れ具合から察するにかなりの激戦だったようだな?」
ラキは辺りを見渡しながら口を開く。
リーナはフロウが一番怪我をしていると判断しフロウの傷を。
その身に宿した時の女神の力で巻き戻す。
「…あぁ、ありがとう。」
その行為にフロウは驚きソアラも目を丸くした。
リーナはその力で続けてプラチナ、シードと治していく。
「リーナは怪我してないか?」
シードの言葉に元気よく大丈夫と返したリーナ。
その様子を確認した後シードはラキとソアラに尋ねる事にした。
「初めまして…かな?俺はシード、ソアラと呼んでも?」
「あぁソアラで構わない。
たしかにシード、お前が目覚めてからという意味では初めましてだ。
眠っているときは死体そのものだったが…案外頼りがいのある顔をしているな。
さてお前たち何があった?」
「まずはそうだな…黒い鎧を身に纏った奴が居てそいつを観察していたら、気付かれてしまって戦闘になったんだ。
でだその気付かれた原因が…あそこに転がっている死体だ。」
辺りを見渡せば何とか吹き飛ばずに残った幻惑蝶の死体が見えた。
「気をつけてくれ。腹部の棘が爆発する。」
「あれは…まさか幻惑蝶…か?」
ラキが慎重に近付き確認する。
ラキは腕を組み考え込む。
「まさかな…だが…」
そう言ってソアラを見上げる。
「考えることは一緒のようだ。」
「一体何があったのですか?」
リーナの問いにラキが答えた。
「ここに来る前私たちは黒い鱗の適応者を目撃した。
その直後、奇妙な奴に襲われたんだ。」
「黒い鱗だと!?
まさか!?」
フロウはかなり驚いている。
「私はその適応者を知らないが話を続けよう。
襲ってきた奇妙な奴とは神速馬ではあった。
ただし背中には風迅鳥の翼を生やしたな。」
「シードのように神器を倒したからその力を使えるようになりました。
なんて理由で生えた訳では無いだろうな。
そこに転がっている幻惑蝶も同じだろうな。」
「つまりは…何らかの要因で別々の種族が合体とでも言うべき事態が起きていると。
それこそ他種族間での交配なんかが起きたとでも言うべきか?」
シードの問にラキは。
「あぁ私も同じ考えだったんだがな。」
そう言ってソアラとフロウに目配せをする。
仕方ないと言わんばかりの様子のフロウが答える。
「黒い鱗の適応者…
おそらくソイツが何かをしていると見て間違いないだろう。
道を違えたかつての同胞だ。」
「道を違えた?」
「かつて私達は生を諦めた。だが死を受け入れる事も出来ずにいた。
そんな中ソイツだけは強く生に執着した。」
シードはかつてのフロウの言葉を思い出していた。
真実に辿り着き生きることを諦めたと。
「ソイツの名は混沌龍イービルカナン。
カナンが何をしようとしているのか分からないが…」
「私達の障害になることだけは確実だ。」
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