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ヒロイン、朝練がスパルタだった

 腰にタイヤを括り付けてグラウンドを走る。


 剣道に柔道果てには空手の練習をしていた私には懐かしい練習だ。


 過去の記憶を辿ってガキ王子をビシバシ扱く。ガキ王子は私に言われた通り、素直に王城の中庭でタイヤ轢きをしていた。


 汗に塗れてゼーゼーと息絶え絶えに広い中庭を走っていた。



 いや、この乙女ゲームの世界にはタイヤが存在しないからタイヤ轢きは無いか。



「姐さーーーーーーーん!! 丸太を括り付けて走るの辛いですよーーーーーー!!」

「ウダウダ言ってねえで黙って走りやがれ!! 私の背中を追いかけてくるんだよ!!」

「はあはあ……、姐さんって本当に十歳の女の子ですか? 僕と同い年って絶対に嘘でしょ?」

「減らず口は良いから足を動かせってんだよ!! て言うかサラッと年増発言するとかいい度胸じゃねえか!!」

「そ、そう言う意味じゃあ……、姐さんって中身はアレだけど見た目はすっごく可愛いし」

「あん? 何か言ったかよ?」

「何でもありません」



 王城の中庭、ここは今は亡き王妃のお気に入りだった場所。


 綺麗な花が数えきれないほど咲き乱れて訪れた者に癒しを与えてくれる場所。中央には噴水が有って周囲を花壇が取り囲む。


 私とグレゴリーは噴水の周りでタイヤ轢きならぬ丸太轢きで体を鍛えていた。


 ノルマは百周、噴水が一周でおよそ百メートルだから十キロの軽いウォーミングアップだ。


 私はグレゴリーよりも早くランニングを終えて次の訓練の準備に取り掛かる。遅れて走り終えたグレゴリーが地面に倒れ込んで大の字になる。



 ゼーゼーとまたしてもグレゴリーは息絶え絶えの様子で休憩に入るも、私が素振りを始めた事に驚愕したのか、ビビったのか。口をあんぐりと開けながら唖然とした様子で私を見つめる。


 私の振り下ろす木刀はビュンビュンと風切り音を鳴らす。


 グレゴリーは私の真剣な姿に風邪気味なのか顔を真っ赤に染めていた。そして恐る恐ると言った様子で話しかけてくる。「スポーツ系美少女の流す汗って凶器だ」とか良く分からない言葉を呟く。


 て言うかテメエは本当に貧弱だな。


 風邪なんて気合いで治しやがれ!!



「あ、あの、姐さん?」

「んだよ、情けねえ声出して」

「それは……一体何をやってるのですか?」

「ああん? 昨日言っただろうが、走り込んだら剣道の朝練するって」

「ケンドーって剣の稽古の事だったんですか?」

「言っとくけど私は実戦派だからな。傷の一つや二つは男の勲章だと思って我慢するこった」

「……姐さんの素振りが速すぎて目で追えません」



 早朝の王城、華やかさが際立つ中庭から甘えん坊王子の悲鳴がこだます未来は容易の想像が付く。この後、私の高速斬撃から逃げ回るグレゴリーを鬼神を宿した様な顔付きで追い回すのだった。


 ギャーとかヒーとかグレゴリーが大声で叫びものだから王城のメイドや騎士たちから何事かと怪訝の眼差しを向けられる事になる。



「死ぬ死ぬ死ぬ!! ギャーーーーーーー、側近の姐さんに殺されるーーーーーーー!!」

「テメエ、グレゴリー!! 女に背中を向けて逃げんじゃねえ!!」

「痛い痛い痛い!! 頭にこぶが出来ちゃいますってーーーーーー!!」



 因みにグレゴリーが私の事を姐さんと呼ぶものだから私は当分の間、城のメイドたちに名前をアネサンだと誤解されてしまった。



「うおりゃああああああああ!! 秘技・王族殺しーーーーーーーー!!」

「姐さん、その必殺技はダメですってえ!! 技名は今すぐ改名しましょう!!」

「テメエ、一丁前に私の編み出した技にケチつけるってのか!?」

「姐さん、目が怖いですよーーーーーーー!!」

「ったりめえだ!! こちとら手なんざ抜かねえでテメエを殺す気で木刀を振り下ろしてんだ!!」



 王城の中庭はグレゴリーの悲鳴と小鳥の囀りがオーケストラを奏でていた。

 下の評価やブクマなどして頂ければ執筆の糧になりますので、


お気に召せばよろしくお願いします。

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