表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/247

あっとらいぶらりー㉓

そそそそうだった!

すっかり忘れてた!いや、つい満さんの話に夢中になってしまった。なにせ見学会が中断されたからね、気になってたんだもん!しょうがないよね!?

っていうか、なづな覚えていたの?それとも途中で気付いたのかな?気付いてたんなら教えてくれても良かったんじゃないかな?!


「今、思い出したんだよぅ。」


くっ、それじゃあ仕方ない。

取り敢えず、気付いてしまったからには報せに行かねばなるまい。満さんが此処に戻って来てから少々時間が経ってしまっているから、ちょっと急いだ方が良いだろう。

満さん本人に行かせると、寄って集って尋問されるのが目に見えてるし…だが後回しにしてもいずれは同じ結果になる、とは思うのだけれど…ボク達というワンクッションを置いた方が落ち着いて話せるだろうし…

ボクが行くかぁ…。


「ジャンケンで決めても良い、よ?」


それ、なづなとボクだったら、実質ボクに決定してるんだけれど?


「なづなさんジャンケン強いの?」


「そこそこ、ね。」


そこそこですって?まぁ随分と控え目な表現ですわね?お臍が茶ぁ沸かしましてよ、お姉様?

ボク、一対一でなづなが負けたの殆ど見た事ないんだけれど?


「そんなに?!」


そ。なづなって元々勘が良い上に動体視力が半端なくってさ、身体操作も抜群に上手いんで、相手の指の動きを見てから手を変えるとかすんの。

ボクも結構自信あるんだ。でも、ちょっとだけ、ほんのちょっと届かないんだよね〜…毎回いいところ迄行くのに。通算勝率で言ったら一割あるかどうかくらいじゃない?

ま、それでも真剣にやると楽しいから、よくやるんだけれど、さ。


「そんなに差はないんだよ。最後は“勘“だし。」


また、その勘ってのが厄介なんだってばさ。

勘っていうのは膨大なデータと経験の蓄積だと思ってるんだけれど、なづなは瞬間瞬間にアップデートしていくから、超早指しの詰将棋してるみたいな感じなんだ。

毎回それを崩そうって頑張ってるんだけれどねぇ、これがなかなか難しくて。


…あぁ、いけないいけない。こんな話してたら益々遅くなっちゃうね。てな訳で、ちょっと行って来るよ。


「じゃあ、お願い。行ってらっしゃい。」


うん行ってきます。あ、そうだ、満さんから新しい情報が出て来たら、後で教えてね?

そう言ったら満面の笑みと大きなOKサインが返って来た。満さんは()()()()してる。可愛い。


2人に手を振って階段へ向かう。

ボクは4階に登った事がないので、どんな造りになっているのか全然知らないからちょっと楽しみ。


螺旋状の階段を登ると見慣れない円形の空間が現れた。他の階に比べると天井が低い…低いと言っても普通の高さなのだろう。1〜3階が異様に高いだけだ。

天井は自然採光だろうか?照明とは違う柔らかな光が射している。

円形の空間は階段室の様になっているらしく、湾曲した壁にはいくつかの扉があった。…さて、どの扉に入るのが正解なんだろう?

別に間違えても何にも問題ないんだけれどさ。なんかこういうの一発で当てたくない?

あれ?ボクだけ?うそぉ?


さてさて、扉には何の表示もされていない…普通こういうのって〇〇室みたいなプレートがあったりするもんだと思うんだけどなぁ…委員会メンバーしか入らないから付けてないとか?

ま、どれでもいいや。北側の扉から時計回りに開けていこう。そうしよう。という訳で最初はこの扉。

…えっと、北ってこっちで良いんだよね?

うん、たぶん間違ってない。間違ってても問題ない。

そうと決めたら先ずノック!


「すいませーん、何方かいらっしゃいますか?」


「はいはーい。」


お、中から返事が!

よし、一発正解!


「あら、貴女双子ちゃんよね?お一人?」


扉から出てらっしゃった方が着ているのは濃い茶系のセーラー服、高等部のお姉さまな訳だが…あれ?中等部の子って満さんしか居ないの?扉の中もちょっと気になる…むぅ見えない…。

おっと、それよりご挨拶。


「はい。お仕事中失礼致します。姉は3階で探し物をしておりますので。(わたくし)が、1階の件は無事終了した旨、お伝えに上がりました。」


「……1階の件…?1階の件って… 」


どうも思い当たらなかった様で首を傾げるお姉さま。

あれ?もしかして全員が承知している訳じゃなかったのかな?


「あ!遥と満ちゃん?!」


あ、はい。そうです、そうです。

遥お姉さまと満さんの、ごにょごにょ…です。


「それで!?うまくいったの!?」


ええ、(つつが)なく。

詳細は当人からお聞きになるがよろしいかと存じます。

…満さんは、()()()()()()詳しく話さないかもしれませんが。


「あは!確かにね!ま、それはそれとして少し寄っていきなさいな。」


え、いやしかし、部外者が入って良いのでしょうか?

閉架書庫というのがどんな物か非常に興味はあるのですが、あの、お姉さま?

なんか強引に腕を引かれて部屋に引っ張り込まれてるんだけれど、良いのこれ?


「みんな、お客様よ!」


扉の中は少しひんやりとした部屋で左右共にぐるりと湾曲している。

…あれ?もしかして、扉は複数あるけれど中は一繋がりの部屋、なのかしら…?

なんだよぅ、だったらどの扉でも正解だったんじゃん!

部屋に入ると金属の箱の様な物がずらりと並んでいるのが眼に入ってくる。

なにこれ、金庫…な訳ないよね。TVで見たスーパーコンピュータとか企業のメインサーバーみたいにも見えるけれど、切れ間切れ間に普通の書架…本棚が見えるって事は……もしかしてこれ、可動式の書架なの?!え、凄い、どれだけあるのこれ?!


「どう?凄いでしょ?」


「ええ、こんな風になっているとは思いませんでした。カッコいいですね!」


正直こんな基地っぽい作りになってるとは思わなかった。もっと雑然とした…古書店とかそんなイメージだったんだけど、これは(まさ)しく『アーカイブ』だ。


「やっぱり!さっき話していた時、中の方をチラチラ気にしている様だったから、どうなっているか見てみたいんじゃないかって思って誘ったんだけど…そう、この良さが理解(わか)るのね!」


お、おお?

随分と熱いお姉さまだね?


「理解る、というか…燃えますね。SFみたいで。」


「さすがは満ちゃんのお友達なだけあるわね。」


実に愉快そうに笑うお姉さま。

曰く、満さんも特撮ヒーロー物に出て来そうと言ったとかなんとか。

確かにそれっぽいですね。

そんな話をしているうちに部屋の奥や書架の陰から、わらわらと人が集まってくるのだけれど…結構な人数がいたみたい20…いや30人以上いそうだ。よくよく見れば中等部の制服もちらほら…元クラスメイトの顔も見えたので、軽く手を振って挨拶すると向こうも手を振り返してくれた。久しぶり~。先程、階段でお会いしたお姉さま方もいらっしゃる。ご無沙汰…は、してませんね、先程ぶりでございます。

皆さんに向かって軽くカーテシー。

ほぅ…という吐息が聞こえ、中には顔を赤らめる方もいらっしゃった。

うん。好評な様でなによりです。


「で、双子ちゃんが来たって事は…遥の方は済んだのね?」


問うてきたのは階段で一緒だった方だ。


「はい、無事に。私見ですが『在るべき形に収まった』のではないかと。」


きゃあ、と小さく歓声が上がった。

口々に“やっとかー”だの“おっそいわよねー”だの、“まぁ言っただけマシ”だのと…好き放題言ってらっしゃいます。

…どうやら図書委員会の皆様は”早よくっつけ“と思っていたみたいですよ満さん。きっと後で根掘り葉掘り聞かれると思うけれど…がんばれ?


「まだ2人で1階に?」


「いえ、満さんは姉と3階に。受付業務は遥お姉さまお一人です。」


「なら、そろそろ交代してあげないとね。」


お姉さまの一人がそう言うと、漸く(ようやく)下に降りられる、お手洗いに行きたい、飲み物を買いに行きたい等々の希望者が殺到し、結局4階に居た委員会メンバーの半数が下に降りることになった。

ボクは3階迄だけれど15名を超える人数が1階迄行くのだ。その内の何人かは確実に事の顛末を本人から聞きたがるに違いない。

ボクが()()()()()()()()()間違いないよ。

…遥お姉さま…気を強く持って下さいね…!


ワイワイと談笑しながら、階下へ向かう階段へと移動を始めた集団の後にボクも続く。

と、中等部の制服を着た生徒がひとり、近付いてきた。

上履きのカラーは三年生のモノだ。

はて?おそらく初対面だと思うのだけれど…なんだろう?


「鈴代…せりさん、よね?」


「はい。鈴代せりです。え、と…お初にお目にかかります…?」


あ、いかん。なんか緊張して疑問形になっちゃった。

だ、だって、このお姉さま、何故かピリピリしてるんだもん!

苦情とか言われそうな雰囲気なんだもの、警戒しちゃても仕方ないでしょ!?

こちらが警戒してしまったのを察したのか、お姉さまは、ふと表情を緩め


「あ、ごめんなさい、そんなに緊張しないで。ちょっと聞きたいことがあっただけなの。」


ああ、よかった。苦情とかではないですね。

いやぁ…自分で気付かないところで何かやらかしちゃったのかと思って…内心ビクビクでした…。


「前にそんな事があったのかしら?」


ちょっと迷惑をかけたりした事は…ないとは言えませんです…はい。


「へぇ…意外。でも今回は違うから安心して。ちょっとした確認だから。」


確認、ですか?


「そう。確認。あ、でも答え何如(いかん)によっては結構影響出るかも…。」


えぇ…?なにそれこわい…。

お姉さま、周囲をきょろきょろと見廻し、手を口の横に添えて、ちょいちょいと手招きをした。耳を貸せ、と。

なになに?ナイショ話なんですか?


「あくまで噂、というか、ほんの一部の子が話していたのを小耳にはさんだんだけど… 」


ごくり…


「セリナちゃんと付き合う事になったんだって?」



……

………

…………はぃ?





セリナお姉さま絡みのお話。

ようやく書けました。

一寸嬉しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ