あっとらいぶらりー⑦
サブタイトルを変更しました。
見つけたは良いけれど、ちょっと高い所にあって届かないね…脚立とかあるのかな?
「ちょっと待っててね。」
そう言って満さんは書架の端、というか書架と書架の隙間の様な部分へと歩いていった。あ、あんな所に仕舞ってあるんだ。けどこの書架、結構大きいんだけれど…上まで届くような脚立だと相当重いんじゃない?一人で大丈夫なのかな?
手伝った方が良くない?
…とか思って近付こうとしたら
ガラガラガラーーーーーッ
満さん、軽々と引っ張って来たよ。しかも片手で持ち上げて!
書架の上まで届きそうな長さの梯子を片手で。どう見ても3m前後はあるんだけれど?!ええ?凄い、力持ちなの?!
「あはは、そんな訳ないって。これ上にレールがあるのよ。」
レール…ここからだとよく見えないけれど、よく見れば梯子は書架に寄り掛かっているようにも見える。って事は書架の上のレールに梯子がぶら下がっているかんじ?
「スライド式の梯子…スライディングラダーっていうのかな?どこかの大学の図書館で使ってたよね?確か半円状のホールだったと思うんだけど…そこの書架にこんな感じの梯子が付いてた気がする。」
「流石なづなさん、よく知ってるね。それたぶん中嶋記念図書館って所だと思う。日本で最も美しい図書館のひとつって言われてるんだよ。」
日本で最も美しい図書館!
の、ひとつ!
最も美しい図書館がいくつも在るんだ。甲乙つけ難いって事なんだろうけれど、なかなか奇妙な日本語だよね。
「ひとつって事は他にもあるんだ?」
「あるよー。東洋文庫ミュージアムとか、ぎふメディアコスモスなんかは本当にカッコイイし水戸の市立西部図書館は映画にも使われたんだよ。変わったところだと京都御苑にある森の文庫かな。スッゴイ可愛いの。」
可愛い図書館ってなんか気になるね。どんななんだろう?
綺麗とかカッコイイっていうのは理解るんだけどなぁ…可愛い、ねぇ?
「まぁ明之星の図書室だって絶対負けてないんだけどね。」
うむ、確かに。
円柱状の建物で同心円状に配置された湾曲した書架、放射状に配置された閲覧机、高い天井、二重螺旋に据えられた中央の階段。とても中学高校の図書室とは思えないお洒落な設備の数々。負けてない。他の図書館の事知らないけれど。
満さんは、喋りながらひょいひょいと梯子を登って行って、先程なづなが指摘した棚を覗き込み一冊を手に取り、しげしげと表紙を見て首を傾げる。
「…星ヲ見ル?」
そうポツリと呟いて表紙を捲る。
『星ヲ見ル』というのが部誌の名前なのか。明之星がある場所も明星山って山の上だからね、まあ無難というか、連想し易いタイトルではあるのかな。
ペラペラとページを捲ってゆき、奥付けの辺りで手を止めた。
「うん。文芸部の部誌で間違いないね。」
はい、と部誌を差し出してくれる。
あ、直接は届かないや。と、なづなが梯子を2段ほど上がり受け取っってボクに中継してくれる。
これ、置く台がないと持ち切れないな。どっかに置く場所…あ、あれ借りて来ようか。
周囲を見回したところ、ひとつ先のブロックにブックトラックがあるのを見付けた。丁度いいや、どうせ何十冊も降ろすんだからアレに並べちゃおう。
「満さん、ブックトラック借りて良い?」
「どうぞ〜。どれでも使って。」
「了解、ありがとう。」
ブックトラックを梯子の下まで引っ張ってきて、次々と渡される部誌を並べてゆく。こうして手に取ってみると良くわかる。なづなの言った通り、年によって装丁も紙質も印刷も、全てが異なっている。
ホントにバラバラだ。
最初に受け取ったものは表紙の紙こそ綺麗だけれど、本のタイトルと花の図案がワンポイント入っているだけの、よく言えばシンプルな物だった。
でも次第に内装の紙も質が上がり、表紙にイラストが入ったり、表紙がカラーになったり、ビニールの様な物でコーティングされてたりと、どんどん豪華になってゆく。予算が増えたのか印刷代が安くなったのか、それとも、その両方なのか。
いずれにせよ、最近の物ほど高価そうに見える。
特にこのコーティング。飲み物溢しても平気そう。
「あぁ、それね。PP加工っていってねポリ…ポリなんとかってのを貼ってあるんだって。最近の同人誌ではデフォルトだよ。」
同人誌、薄い本ってヤツですネ!
ふむ、PP加工ね。後で調べてみよう。
しかしこういう本って、ちゃんとした印刷屋さんで刷るんだよね?部誌みたいな少数印刷を受けてくれるんだねぇ。
取り敢えず去年の物まで受け取って、ここ迄の物に目を通してみる事にした。昭和50年より前の物は閉架書庫らしいので後回しだ。
先ずは目次だけ見て、七不思議に関するものがあるかどうかを確認。あったら弾いておいて後ほど内容を精査していく、と。目次に目を通すだけと言っても、流石に7〜80冊もあると中々骨が折れるね。
そうなんだよ!80冊近くあるんだよ!
何故か年一冊づつだと思い込んでいたけれど、甘かった。1冊の年もあれば2冊3冊と出している年もある。これは部員のやる気の違いなんだろうけれど。
やる気が有るのは素晴らしいんですが!…作り過ぎだよぅ…。
「あ…ダメだ…もしかしたら全部攫わなきゃいけないかも…。」
え?!なづな、今、凄く恐ろしい事言わなかった?!
「目次に七不思議関係の事が書いてないのに、本文中で言及してるのがあった…ほら、ここ。」
なづなが示す場所を、満さんと一緒に覗き込む。
え〜と、なになに?…10日の夕刻、突然の雨で足止めをくらった私は、昇降口の軒下で見慣れない制服を着た女の子と出会った…?
昇降口の雨女、だっけ?あれの体験談みたいな書き方だね?
「これ、体験談なのかな?それとも七不思議を題材にした創作…?」
「先を読んでみないとわからないけど…この手のが混じってると厄介、かも…。」
「まず目次だけやっちゃおうよ。全部読むのは無理だよ。」
だよね。ボクもそう思うよ。
それにボク達が探しているのは影法師だ。他のはこの際どうでもいい。いやまぁ、興味はあるんだけれどね。それはまた今度ね。
「目次に七不思議関係のタイトルがあったのは12冊…意外と多かったねぇ。」
「いつの時代も七不思議って廃れないものなんだね。やっぱり占いとか、おまじないみたいに好きな子が多いのかな。」
まぁオカルトとかスピリチュアル系は、何時だって一定以上の人気があるコンテンツですからね。そうそう廃れたりはしないでしょう。
それにしても12冊とはねぇ、ほぼ3年に一度特集されているって事だもん。
後の問題は内容の濃さだね。
さてさて、どんな事が書いてあるのやら…研究考察なのか体験談集なのか、将又、単なる噂話を纏めただけなのか。
マキ先生もマリー先生も、すずな姉ちゃんも影法師については悪く言っていなかった。寧ろ『出会った者は充実した学院生活を送った』とまで言っていたんだもの、その理由がわかるような記載があったら嬉しいんだけどなぁ…。
「取り敢えず、ちょっと休憩しない?目が痛くなっちゃった…。」
ああ確かに、ずっと小さな字を見続けていたからねぇ。
流石のボクも目がしぱしぱしてきたよ…。
「そうだね、ひと休みしようか。」
ごめんねぇ満さん手伝わせちゃって。
…っていうか、ボク達の事手伝ったりしてて良いの?
図書委員のお仕事で受付に居なきゃいけなかったんじゃないの?
「ううん大丈夫だよ。二人のお手伝いしないで戻ったりしたら遥ちゃん…じゃなかった、遥お姉さまに叱られちゃう。」
それなら良いんだけれど…。
って、また遥ちゃんって言ったねぇ。
うふふ…さぁ、吐いてもらおうか…?二人はどんな関係なんですか?
おねーさんに言ってごらん?うけけけけ。
「えぇ?!そんな事言われても…特に変わった事は…。」
「ちょっと、せり。ダメだよそんな無理に聞き出そうなんて…言えない事や言いたくない事だってあるかもしれないじゃない。」
う、それは、その通りだね…。
「で?実際のところ…どう、なの?」
ぅおい!?なづな!?
「いやホントに…小さい頃から一緒に遊んでた仲の良いお姉ちゃんってだけで…。」
そういう割には指をいじいじしたりして、なんかあるって言ってる様なものだけれどね。いやぁ、他人の恋路を愛でるって、こんな感じなのかぁ。そっかぁ。
これは…いいねぇ。うんうん。
で?
つづき、どうぞ?
「え…えぇ…?」
本文中の図書館は実在します。
明之星の図書室以外は。
名前を出した図書館は実際に『日本で最も美しい図書館』のと呼ばれており、本当に美しい図書館ばかりです。
私は東洋文庫のモリソン書庫が特にお気に入りです。まぁ、ここは図書館というより博物館なのですが…。
もし興味が御座いましたら検索してみて下さい。
きっと、行ってみたいと思う事請け合いです。
なお、明之星の図書室にもモデルは存在しますが複数の図書館を組み合わせた物なので、いうなれば自分の理想の図書館…でしょうか。




