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すくーるらいふ⑨

オカルト続きます。

え~…と、ここは…どこで、ボクはどうなったんだっけ?


目を開けると、見慣れたトラバーチン模様の吸音材が敷き詰められた天井が見える。うん…学校内だという事はわかった。

額に手の甲を当てて、もう一度目を瞑り思考を纏めようとしているんだけど…あれれ?


「あ、お目覚め?」

足元の方、半分開けられたカーテンの向こうから声がこ聞こえてくる。

ん?どちら様?

あ、マリー先生だ。

って事は保健室か、ここ。

「気を失ってここに運び込まれたんだけど…その前の事、わかる〜?」

気を失った?ボクが?

いやまぁ、ボクに決まってるよね。

ん~と、ちょっと待って思い出すから。

今日はHR中に連絡が来て、体育館に配布物の受け取りに行って、教室に戻った後は…ああ、そうだ、教科書と副読本の乱丁チェックしたんだっけ。それから授業範囲の説明や今後の授業予定を聞いて…それからどうしたっけ?

ええと…う~んと…マキ先生に説教だって言われて、生徒指導室に連れてかれて…連れて、行かれて…

影法師(ドッペルゲンガー)の話になったんだ!

そうだ、ボク達の会ったマリー先生は影法師(ドッペルゲンガー)だったんじゃないかって話しをしたんだ。そうだ、そうだった。その話をしている時に、凄く怖くなって、それで…気を失ったんだよ。

…まってまって!

今ボク、(くだん)の保健室に!

マリー先生と2人っきり!?

誰も見てない2人っきりぃ!?


と、とりあえず落ち着こう。

はひ〜ふへ〜…ほぉ…

よし、大丈夫だ。

上体を起こして、ベッドの上に座る。

「あ、あの、マリー先生…?」

「はいは〜い、なんですか〜?」

ひょいとカーテンの向こう側からこちらに入って来て、ボクの寝ているベッドの傍に座った。

「うん、顔色は良くなったかな?」

「先にちょっと診せてね〜。」

…あれ?このマリー先生は怖い感じはしない…ね?

いや待て、昨日のマリー先生だってイヤな感じはしてなかったじゃないか。それでも影法師(ドッペルゲンガー)だったって疑いがあるんだから、このマリー先生だってもしかしたら…?

「どれ、ちょっと上着捲って〜。」

あ、はい。…うひゃ。

ちょっと冷たい聴診器を当てられて、変な声出た。

「はい、後ろ向いて〜。」

うひゃい。聴診器チベたい。

「…うん。じゃあお熱計ろうか〜。」

お熱って…子供扱い…いや、先生方からすれば子供だよね。

非接触型体温計で、おでこにピッてしてお終い。

最近の体温計はすごいなぁ、腋に挟んだりしなくていいんだもんね。ピッだよ、ピッ。


「…少し低いかな〜?」

あ、ボク体温低めなので、たぶん平熱です。

「あら、そうなの〜?」

手元の用紙に記入しながら、いつも通りのちょっと間延びした癒し系ボイスで応えてくれる。このマリー先生は…本人なんだろうか?

あんな話の後だと、どうしても不信感は拭えない。

でもなぁ…どう見ても本人にしか見えないんだよなぁ…

「で?どう?倒れた時の事〜、覚えてる〜?」

「え〜と…はい、覚えてはいるんですが…。」

「怖い話をしてたんだって〜?」

「そうです…。」

「そっか〜。そういうの今迄もあったの?」

「いえ初めてです。こんな事今迄まで一度も…。」

なかったんだ。以前(ぜんせ)含めて一度足りとも。

お化け屋敷や怪談、肝試し、恐怖映画やスプラッタ映画。キャーキャー言いながら観たり聞いたりしてたけれど、怖かったかと問われれば…怖くはなかったと思う。だって作り物だし。

以前(ぜんせ)の世界じゃ普通に獣人(セリアンスロゥプ)やら機械化兵(サイボーグ)やら居たし、映画なんかよりエグいのたくさん見たし…あ~でも幽霊とかって見た事なかったな…。

……もしかして本物だから?以前(ぜんせ)のは本物は本物でも、人工物だったり実体があって人智の及ぶ存在だった。更に言えば科学的に再現可能なモノばかりだ。…だから平気だった?

って事は…

今回の件は初めて本物の怪異に遭遇したから?

理解の及ばない()()に初めて触れて、身体の方が拒否反応を出したとか?

…ありそうな気がする。


「う〜ん…そう、なかったのね。なら癖になってるって訳じゃないのね~…。」

癖になるなんて事があるんですか?

「あるわよ~。失神の原因っていろいろあるんだけど、心因性の場合は自己防衛反応だったりするから、逃避の一手段として……って、わかんないわよね。ごめんね~。」

いいえ大丈夫です。

…なるほどね、ボクの場合は、経験した事のない恐怖心から精神(こころ)を守る為に身体(からだ)の方が事前にブレーカーを落とした、みたいな感じかな。

で、それが成功体験になってブレーカーが落ち易くなる(イコール)癖になる、なんだろうな。……あんまり良くないね。気を付けよう。


「もうちょっと寝てて良いわよ〜。」

そう言って席を立ち、診察席…って言うのかな?お医者さんの定位置みたいな席に座り、PCに何かを打ち込み始める。昨日のマリー先生はPC弄ってたっけ?

ボクが見ていなかっただけで、使ってはいたのかも…あ、でも使ってたんなら在室証明は新しいタイプのを渡されていても良いはずだよね?

打ち込み終わるとデスクの上にある小さな機械が唸りだして、レシートの様な物吐き出した。

あ、あれプリンターなのか!小っさ!

へー、あんなのあるんだ。へー。

…いやいや、それはどうでもいいんですよ。

そうじゃない。

今考えるべきは、少なくとも今日のマリー先生はPCを使ったという事。今、出力されたのは新しい方の在室証明書だと思う。昨日は手書きの書類を渡された。

ってことは…影法師(ドッペルゲンガー)は古い知識を元に行動している可能性がある。

だとしたら、ここに居るマリー先生は本物の可能性が高い。…んじゃないかなぁ?自信ないけど。

確かめる…のは難しいよなぁ。


「あの…マリー先生…。」

「はいはい、直ぐ行きますよ〜。」

ボクの呼び掛けにゆったりとした口調で答え、ベッド脇まで歩いて来る。

「少しお聞きしたいのですけれど…宜しいですか?」

「ええ、もちろん。スリーサイズ?」

…これ、明之星(ウチのがっこう)の定番ネタなんだろうか?他にも言ってた人いなかったっけ?

「いえ、その、大変魅力的ですが、そうではなく… 」

「あら〜、残念。」

激しくデジャビュ!

「先生は、明之星の七不思議に影法師(ドッペルゲンガー)というのがあるのを、ご存知ですか?」

「ええ、もちろん知ってるわよ〜。私も明之星(ここ)の卒業生だからね〜。」

え?!マリー先生も卒業生なの?!

ええ、大お姉さまなんだ、おぉ…。

「で、それがどうしたの〜?」

「え〜と、いつぐらいから語られている話なのかな、と思いまして… 」

「そうねぇ、相当古くからあるはずよ〜?学生時代に明之星出身の先生に聞いた話だからうろ覚えだけど…昭和の中頃にはもう七不思議だったって言ってたと思うわ〜。」

昭和の中頃って…60年くらい前?!

「『昇降口の雨女』って知ってる〜?」

雨の日の昇降口で佇む女生徒っていうアレですか?そんな名前がついてたんだ…知りませんでした。

「そうそう。最初とは少し変わっているみたいだけどね、こっちはもっと古くてね〜。大正から語り継がれているらしいわよ〜?」

大正!!ほぼ100年前じゃないですか!?

1世紀!!すごっ!

「興味があったら文芸部の部誌を見てみたら〜?結構面白いわよ〜。」

へぇ…文芸部の部誌。図書室にあるのかな?それとも部室?今度見せて貰おう。

「そうそう、影法師の話よね〜。あれ私が高等部3年生の時、出たって噂になってたっけ。」

マリー先生は見てないんですか?

「私は見てないわね〜。」

「…確かマキ先生の影法師(ドッペルゲンガー)だったって聞いたけど…違ったかしら〜?」

え?!それ、すずな姉ちゃんの時の話だ!

「マリー先生、それ、高等部の鈴代先生が経験した話らしいですよ。」

「あら、そうなの〜?まぁまぁ、姉妹で目撃者なのね〜。」

ぱんっと手を叩いて楽しそうに笑う。

「きっと楽しい学生生活になるわよ〜。」

そうなんですか…?あ、そうか明之星の影法師(ドッペルゲンガー)は座敷童みたいなものって言ってたっけ…そういう、見た者に幸運を運ぶ的なモノなのかな?


キーンコーンカーンコーン


チャイム…何時間目のチャイム?

「4時間目終了のチャイムよ~。」

4時間目?!じゃボク2時間近く寝てたの?

いや、いくらなんでも寝過ぎでしょ。それにHRの話し合いに参加できなかったのは結構イタいなぁ。まぁ結果は なづなが教えてくれるんだろうけれど…やっぱりリアルタイムで話し合いに参加しているのとじゃ、気分的にも随分違うんだよね…。

4時間目が終わったんなら、あとはSHR(ショートホームルーム)だけだから…15分くらいで なづなが迎えにきそうだなぁ。


ベッドから降りてマリー先生が座っているデスクの近くまで歩く。

そういえば、こうしてまじまじと保健室の中を見回すのは初めてかも。

ほら、ボクほとんど怪我しないし、病気にもならなかったからね。

デスクの近くには丸いテーブルが置いてあって、その上には『保健だより』なる小冊子をはじめ、何冊かの本がおいてあった。

「マリー先生、これ、読ませてもらっても良いですか?」

「もちろん。ご自由にどうぞ~。」

デスクで何か書き物をしているマリー先生に声をかけ、了承を得て手前にあった小冊子を手に取る。

え~と、なになに?食中毒早見表…?なんじゃこりゃ…?


コンコン

「失礼しま~す…。」

「はいどうぞ~。保健室へようこそ~。」

…この返しはマリー先生の定番なんだろうか。

入口の扉を見れば、丁度なづなが入ってくるところだった。

「あら、鈴代なづなさん。お迎えご苦労様。」

「マリー先生、妹がお世話になりまして…。」

ボクの肩をポンと叩きながら脇をすり抜けてマリー先生の元まで進んで行き挨拶をかわす。こういうところはお姉ちゃん然としていて凄いなぁと思う。

マリー先生と なづなが話している間、ボクは数歩離れたところで冊子を手に取ったり、壁に貼られたポスターを眺めたりしていたのだけれど、結構手作りの物が多いね。

保健委員の子たちが書いたりしてるのかな?

マリー先生達の会話もなんとなく耳に入って来ていたのだけれど、なんかボクに言ったのと同じ様な七不思議の話とかをしているみたいだ。

きっと楽しい学生生活になるわよ、って。

ボクも言われたよね?


                                








申し訳ありません。

未完成ですが一旦UPします。

本日、日中に改稿版を改めてUPいたします。



追記

保存していた終盤部分を誤って削除してしまいこの様な形になってしまいました。

この回でまとめる予定だったのですが、分割する事にしました…




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