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ごきげんよう、お姉さま④

新たなお姉さま方との出会い


高等部のお姉さま方のお手伝い継続中


講堂のお姉さま方は「ジェミニちゃん」

体育館のお姉さま方は「双子ちゃん」

と、呼んでいます。


くそ…またオマエラか!

ボクが!あの子に近づかない様に!

何時も何時も何時も何時も何時も!!

邪魔ばかりしやがって!!!


なんでだ!

なんであの子と遊ばせてくれない!?

オマエラの都合なんか知った事か!


邪魔スルナラ!!


バ ラ バ ラ ニ シ テ ヤ ル





「せり」

「ん?なに?」

「随分、せくしー、だね」

畳の上に女の子座りして、ボクを見上げるながらふわふわと微笑んで、そんな事を言う。

「え?そう?…」と自分の身体を見下ろして

「!!!」

気が付いた。

しまっっっ………たぁ…!最後の看板書いた後、そのまま行動してたのか!髪を上げたのは良いとして、スカートも上げたままだった…!

ふともも丸見え、スカートを縛っている右側は下着も、ちらちら。

走ってた時は…オシリ…見えてた…かも、しれない。

うわあぁぁぁ…

道理で、何時もより視線が多い気がしたんだ…!

ただでさえ目立つのに、この格好は…!

「…に…似合うでしょ?!」精一杯強がってみる。

「うん。せりは線が柔らかいから。セクシーなのも似合うよ。…でも」

でも?

「他の人には、あんまり見せたくないかな。」エヘヘと頬を掻きながら照れた様に笑う。

ペタン

あう。膝の力が抜けた。腰が砕けた。

畳に突っ伏してドンドン叩きたい!

超照れ隠ししたい

「…なづなにしか見せない姿もあるよ?」

「知ってる。」

「ボクだけが知ってるなづなも…いる?」

「私の全部を見てるのは、せりだけ、だよ」座ったまま上体を倒してそろそろとなずなが近づいて…お互いの手が頬に触r

「そろそろ、いいかしらおふたりさん」

きゃあ!

叫びが声にならず、比喩じゃなく全身が跳ね上がり、思わず目の前のなづなに抱きついてしまった。

心臓が口から飛び出たかと思った、バックンバックンいってる。

恐る恐る声がした方向、自分の右側を見ると、ほんの1m足らずのところに蹲踞の姿勢でしゃがんでいる人が…いつの間にこんなに近くまで?

全然気付かなかった、っていうかそんなに集中して見つめ合ってたの?

ボク達?

「2人の世界に行っちゃってたから、声かけるのも悪い気がしたんだけど…」黙ってたら凄いところまで行っちゃいそうだったんで止めた、ごめんね?そう言ってボクの方に向き直る。

「それはさておき、助っ人ありがとう。」

動揺を抑えて平常を装い

「とんでも御座いません。間に合いましたか?」

「間に合ったも何も…」

「まだ始まってないからね」

えーと…え?

よく解らなくて、なずなに目を向ければ

「まだ手を付けてないの」

…なんで?



「先ずは、これを見て頂戴」

長めのポニーテールを揺らしながら凛とした印象のお姉さまによって図面が広げられていく。

目の前に並べられたのは看板のサイズや形状、種類が記載された図面の数々。講堂にあった看板より種類が多い。

「数はともかく種類が多いですね。」

ええ、そうねと呟き更に図面を追加する

アーチの図面だ

「これがね、ないのよ。」

ない、の意味がわからない。紛失したという事だろうか?校内で保管されているはずの、あんな大きな物が無くなるなんて事があるのだろうか?

「紛失した訳じゃないわ。このサイズの(・・・・・・)アーチがないのよ(・・・・・・・・)。」

「明星祭のアーチとは別の物、という事ですか」

「そのとおり」

新たな、もしくはかつて使用していた何かがあるのか。

「よしんば、あのアーチだったとしても使えないわ。私達だけじゃね。」

使えない?

「そ。あれ金属製よ?私達では組み上げられないわ。」

「業者さんに依頼したとかではないのですか?」

「実行委員に確認したけど、依頼したという話はなかったわね。」

「別のもがあるならば…例えば演劇で使った大道具とか…」

「当然その意見も出た。美術部と演劇部にも確認済み。けど知らないって。」下に何人もいるからね、と階下を指差す。

しかし企画が通っている以上何かしら現物があるはずなので総出で探しているのだそうだ。体育館の床にシートが敷かれているのに椅子並べが進んでいないのはそういう理由か。なるほどね。



「で、ふたつめ。」

まだあるの?!

「どれに何を書くのかわからない。」

…はい?

「指示がないのよ。」

そんな馬鹿な。

「サイズや形状は記載されているのに文言の指示がないの。」

トンッと図面を叩く。

あり得ない。現にボクは講堂で指示書を見て文字入れをしている。

図面に視線を落とし確認していく。多くはない文字列を辿り文言を探すが、確かにそれらしい記述は見当たらない。

「…ありませんね…。」

「でしょう。だから看板担当者は全員捜索に回って、双子ちゃんには待機して貰ってるわけ。」

顎に指を当ててしばし思案の後、顔を上げ

「講堂と同じでは不都合があるのででしょうか?」

2人がバッと勢いよくこちらを見て驚愕の表情を浮かべる。

え、なになに?なんなの、コワイ

「講堂にはあったの!?」

「え、ええ。書き終わったのでこちらに伺ったのですけれど…」

2人とも頭抱えて天を仰ぐ

「てっきり講堂で出来る事が無いから、此方に合流したのだとばかり…」



「教えて。」

「講堂は入学式、会場入口、来賓受付、案内所でした。」

「講堂に倣うなら、進級式、会場入口、来賓受付、案内所、という事になります。」

「ただ、」

「進級式に来賓が来られるのか、案内が必要な方がいらっしゃるのかわかりません。」

「それに進級式がアーチだった場合、立看板には別の文言が入る可能性があります。ですから、自分現時点で確定出来るのは会場入口だけという事ですね。」

「でも…」となづな

「アーチがwelcome gateだった場合、進級式は立看板だよね。」

そうだね、その可能性もある。

「ふむ、予備はあるのだから、書いてしまっても良いかもしれないわね。」

どうせ全部使う事なんてないのだから、とはお姉さまの弁。

「じゃ、とりあえず二枚、書いてちょうだい」その後はまた考えましょう、私は実行委員に連絡取ってみると言って退室していく。


なづなが板の間の壁に立看板を立て掛け、バケツに墨汁をあけ、よしっと腕まくりをする。なんとなく見ていたが、書き始める瞬間、

「あ!」

思わず声を上げてしまった。

「え?何?」

「この紙、全然吸わないから、立てて書くと垂れる…」

「なんだ、そんな事。」大丈夫大丈夫、任せてと言って流れる様な動きで文字を描き出す。

…垂れてない…

凄い。なんで?

1枚目を書き終わってふっと息を吐く彼女に

「垂れなかったね…」

と質問のつもりで視線を送る

「えっとね、筆運びでね、こう、余分な墨を誘導するの。で、トメ、ハネ、ハライの時に筆で掬い上げる。」

昔習ったんだけど、忘れちゃった?って苦笑気味に微笑む。

……習った。確かに習った。

半紙の上で筆から墨を多目に出したり、余分な墨をもう一度筆に吸わせたり、やった覚えがある。

ああ、ちくしょう、なんで忘れてたんだ

覚えていれば、あんなキツイ体勢で書く事もなかったのに


やっぱ、凄いなぁ、なづな。

流石、自慢のお姉ちゃんだ。


「ごめん、なづな。もう一枚の方、ボクに書かせて。」

振り返った体勢でちょっとボクを見て、パッと花が咲いた様に笑う

「もちろん。」


なづなは優秀だ。

前から(・・・)ずっとそうだった(・・・・・・・・)

この子を見ていたい。この子と一緒に居たい。この子の側に居たい。この子と遊びたい。この子と語りたい。この子と、この子と。

前のボクが願ってどどかなかった思い。今のボクが望んでそこにある想い。

共にいて釣り合う様に

側ににいて許される様に

その為ならどんな努力もする。

なんだって出来る様になってやる。

この子の、なづなの隣に立っていられるなら。


最後のトメを書き切り、ふッと息を吐く。

「お見事。」

「うん。やっぱり、せりの方が字が綺麗。」流石私の自慢の妹なんて言われて涙が出そうだ。



「うわ、ホントに上手ね、あなた達。これお金取れるわ…」

ポニーテールお姉さまが戻って来るなり開口一番、褒め言葉を口にする。

「「ありがとうございます。」」

「それで、お姉さま…」

「実行委員の方への問い合わせは如何でしたか?」

「ええ、ようやく連絡ついたわ。リスト届けてくれるって。」

「アーチの方は…?」

「絶賛捜索中。実行委員は、あるはずだと言うのだけど…見当たらないわね。」

デスヨネ。

「でしたら私達も捜索に参加させて下さい。」「猫の手でも無いよりマシだと思います。」リストが届くまでボ〜っとしてても仕方ないので手伝いを申し出る。

「…そうね、じゃあお願いするわ。」

「どちらから探しましょう?」

「体育館を総浚いしましょう、二重三重にチェックして見落としをしない様に。」

「「承知致しました。」」

3人連れ立って階下の倉庫から捜索開始。図面に拠れば文化祭のアーチより小型の様だけれど、分割されていてもそれなりの大きさなはず。

普通なら見落とす筈もない。用具室の中には跳び箱やらマットやらロイターばん…移動しながら捜索したのだろう、結構雑に移動されていた。

次の候補はステージ下収納スペース。パイプ椅子が仕舞ってある場所だが、もしかしたら奥の方にあったりは…しませんヨネ。もう何人も潜っていらっしゃいました。

第二用具室は球技用の用具が主な様だ。各種ボールにバレーのポールやネットバトミントンのラケットもある。部活用かな?授業でやった事ないもの。

あとは、ステージ袖の控室や放送室、配電盤室にキャットウォーク奥の調整室、ステージ上の機械室、ロビーの受付室、管理室、控室の様な部屋もいくつかあったはず。

指折り数えてみれば…あれ?結構あるな。



気がつけばもう直ぐ正午という時間。

皆さん、あちこちでグッタリと休憩中。

ボクが合流したのが9時半くらいだから、2時間は捜索に当てたはず。20人近い人数で。なのに見つからない。

実行委員の人も合流して捜索に参加しているが、どうも詳しい事はわからないらしい。

ちょっと…実行委員さん?


ポニーテールお姉さまが大きく溜め息をついて、全員に集合をかける。

「これ以上は埒が明かないわ。午後は捜索に5人残して他は椅子並べに回りましょう。会場設営を最優先に。双子ちゃんは、悪いけど残りの看板を書いちゃって。では一旦解散。」会場が出来ないのは本末転倒だからともうひとつ溜め息。


「私達もお昼に、する?」

そうだねぇと振り向きざまに何かに躓いた。

「ぶっっ!?」

盛大にコケた。

「双子ちゃん!大丈夫?!」

ポニーテールお姉さまが走り寄って来る。大丈夫ですと答えながら躓いたものに目をやれば、体育祭などに使うあの白いテントのパーツだった。来た時見たっけ。注意力散漫になってるなぁ…。

なづなが白い布袋を引っ張って退かそうとしているが、なかなか動かない。

結構重そうだ。

「これ、テントの屋根?天幕?ですか?」

袋の中を覗き込みながら、ポニーテールお姉さまに問いかける。

「そのはずだけど?」

なづなが首を傾げて

「せり。」ボクを呼ぶ。

転んだ体勢のままズリズリとにじり寄っていく

「これ…。」

袋の中を示しボクの顔を見る。

ボクが示された袋の中を覗き込むと、中にある白い厚ぼったいビニールの様なものを凝視した。

もしかしてこれ…

顔を上げ、なづなを見る。

「…たぶん。」と彼女は頷く。

再び袋の中のそれに視線をやり…



「「……あった。」」



またまた、お姉さま登場

ポニーテールで凛とした印象のお姉さまだそうです。

飄々とした感じが出ると良いのですが…

はてさて

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