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のっと くおれる

サブタイトルの変更を行いました。

内容は、ほぼ投稿時のままです。


ご迷惑をお掛けします。









「配布物に関する話は明日以降になるから、そのつもりで。ああ、ミルクホール組は先に行っていてくれ。」


マキ先生がそう言い置いて教室から出て行った。

ざわざわとする教室の中で、ボクは直ぐ前にいる菫さんにめを向けた。

さっき、菫さんは“バレエをやっていた”と言っていた。嘘ではないのかもしれないが、やっていたと言うほどの期間ではないはずだ。

何故なら菫さんはレヴェランスを知らなかった。

習っていたなら知らないなんて事はない。

だって最初に習うんだから。ボクはそう教わった。

幼稚舎だったか、初等部低学年だったか覚えてないんだけれど、クラスメイトの誰かがバレエをやってて、何度も繰り返し練習してたっけ。その子に “最初に習うレヴェランスっていうバレエのお辞儀” だと教わったんじゃなかったかな?

ああ、そうだ。確か真似してやってみたら、凄い、似合うって褒められて嬉しくなって、そこだけ一緒に練習したんだ。


「菫さん、菫さん。」

前に座って何かメモを取っている菫さんの背中を(つつ)く。

「あふん。」

あふんて。

「あ、ごめん。気持ちよかった?」

「ええ、とっても。」

暫く見つめ合って、吹き出した。

「ごめんごめん。なぁに、せりさん?」

「あのね、その…えーと。う〜… 」

「何、どうしたの?」

もの凄く怪訝な顔をされてしまった。いやね、どう切り出せば良いのか考えずに声をかけてしまったものでね、先が出て来なくてね、どうしよう?

「聞きにくい事?」

「いや、えっと、さっき菫さん、小学生の時バレエをやってた…って…。」

「ええ、言ったわね。」

「…昨日、カーテシーの話したの、覚えてる?」

「ええ、もちろん。」

「あの時、レヴェランスの事を知らなかったから…その、ホントにやってたのかな…って…。」

「私が嘘を吐いた、と?」

あ、睨まれた…いや、あの、その…

暫くの間厳しい目を向けられて…あぁ、ごめんね、不愉快な思いをさせて、でも、その、気になっちゃって…菫さんが、その場の勢いで出任せを言う様な人だと思いたく無いので…

「…なるほどね。」

ふっ、と表情を和らげて。

「こちらこそ、睨んだりしてごめんなさい。」

頭を下げられた。

「説明した方がいいわよね?」

うんうん。

「確かにバレエを()()()()はないわね。」

「でも、やってたのはホント。」

ん?なんだって?習った事はないけど、やってた?

え?どういう事?日本語がおかしい?あれ?いやおかしくはない、のか?

「なんて顔してるの。」

くっくっくと肩を震わせて笑っているけど、そりゃこんな表情にもなるでしょ。理解できない日本語なんだもん。

「叔母がね、ジャズダンスをやっているの。」

ジャズダンス。

「ジャズダンスってね、クラシックバレエがベースになっているのよ。」

え、そうなの?

「そう。でも動きを取り入れているだけで、バレエではないの。」

あ…あ〜!そういう事か!

()()()()()()()()()()()、でもバレエの動きはジャズダンスの中にあるから、()()()()()

なるほど、確かに。動きしか知らないなら、レヴェランスみたいな用語には触れた事がなくても不思議じゃない。

バレエをバレエとして習っていない場合もあるんだ。

格闘技の動きを取り入れたダイエットプログラムとかあるんだし、元の格闘技のルールを知らなくても動きだけは知っている、ってのと同じだもんね。

これは盲点でした。はぁ〜…なるほどねぇ…。


ボクは立ち上がり、菫さんの近くに立って頭を下げて

「一瞬とはいえ、菫さんを疑いました。ごめんなさい。」

周りの子達がざわついているけど、構わない。

これは、ボクのケジメだ。

菫さんが慌てて立ち上がって

「ちょっと!やめて、元はと言えば私が紛らわしい事言ったんだから。」

「でも、不愉快な思いをさせたし… 殴ってくれても構わない。」

「メロスじゃないんだから…。」

じっと見つめていると、はぁ…、と息を吐いて

「わかった、わかりました。」

「…眼、瞑って。」

言われて、ギュっと眼を瞑る。


大丈夫。殴られる覚悟は出来ている。

友人を疑った。友人を疑わないと誓っていたのに。

以前(ぜんせ)の、たった2人しかいなかった友人の一人が、“キミには嘘は吐かない。絶対に。”と言っていたんだ。ボクはその言葉を信じなかった。

人は嘘ばかり言う。

すぐ裏切る。

騙して平気な顔してる。

でも、ボクを友達だと言ってくれたアイツは、一度も嘘を吐かなかった。

最期まで、約束を守ってくれた。

だから、ボクは友人と認めたなら、信じる。

そう誓った。

今の、この平和な日常だと、ちょっと重いかなと思わなくもないけど…そこは、信念ってヤツなので。

ごめんして。

…よし。

さあ、こい。


ふわっ、と、いい香りがして


…抱きしめられた。


驚いて目を開けたら、菫さんの髪がボクの顔の直ぐ横にある。彼女の両手がボクの腰と頭をしっかり包み、ガッチリと抱き締められている。

「菫、さん?」

「………。」

「…え?なに?」

なんて言ったの?声が小さ過ぎて聞こえなかった。

「ん〜ん。なんでもない。」

一度だけ肩に頬擦りして、ぱっと離れていく。

「…私が嘘吐きだなんて思いたくない、なんて。ふふふ、おかしな子よね。せりさんって。」

え、そう?

「重いわ。」

ぐっ! じ、自覚はしてます…。

「せりさん には嘘吐けないのね…。」

「いや、あの、ボクが勝手に信じるだけなので、その、出来れば騙し通してくれるとか、バレない様にしてくれれば… 」

「実質、嘘吐けないって事よね。」

「ぜ、全部ってわけでは… 」

「そうね、冗句(ジョーク)の類いは許して欲しいわね。」

そこまで駄目だなんて言わないよう。

エイプリルフールが楽しめないじゃない。

「うん、わかった。あなたには嘘は吐かない。絶対に…とまで言うと、それが嘘になりそうだから、出来る限り、にしておくわ。」

いいかしら?って笑う菫さん。

そんな約束してくれなくてもよかったんだけどな…でもありがとう。ボクは、キミに嘘は吐かない。絶対に。

あ、冗句(ジョーク)の類は別枠で。


ポカ

ん?

ポカポカ

な、何?

ポカポカポカ

なんか、なづながボクの背中を叩いてるんだけど?

なに?どうしたの?

「菫さん困らせたらダメでしょ。」

困らせてはいないんじゃないかな?!

「ごめんね菫さん。ウチの妹、頭堅くて…。」

喋ってる間中、ずっと背中をポカポカ叩いてるんだけど、微妙に痛い所に的確に入れてくるのやめて?

ね、ちょっと、ホント、痛くなってきたよ?

「ううん、いいの。私の言葉足らずが原因なんだもの。…言ってもらえて良かったわ。」

「なら、いいんだけど…。」

むう、ってちょっと不機嫌な顔をしてボクを睨んで来るんだけど、ポカポカ殴るの全然やめてくれないのはなんで?痛いよ?


「あの、そろそろいいかしら?」

なづなの後ろに居た光さんが声を掛けてきた。

あ、ずっと見てらっしゃったのですか。

「ええ。大丈夫よ、光さん。」

「そう、よかった。そろそろミルクホールに行った方がいいんじゃなくて?椿さん達はもう行ってしまったわよ?」

そういえば、マキ先生がミルクホール集合とか言ってたね?

クラスの半分程の人数は既にいないけれど、みんなミルクホールに向かったんだろうか?あぁいや、なんか参加条件があるんだったか。なら、帰った子もいるのかな?


「待たせちゃってごめんなさい。私達も行きましょう、光さん。」

「ええ。なづなさん、せりさん、じゃあ、私達はこれで。また明日。」

2人が手を振りながら早足で教室から出て行った。

…その間ずっと背中を殴り続けていた なづなが、ようやく手を止めて呟く。

「あ、私も行かなきゃ。」

「え、なんで?」

「これ、渡すの忘れてた。」

取り出したのは一枚の封筒。

あ。保健室で貰った在室証明!そうだった。あれ渡さなきゃいけなかったのに。すっかり失念していた。

「じゃ、ボク達も行く?」

「うん。行こう。」

ボク達もミルクホールへGOだ。


「ところで、お姉様。」

「なんでしょう妹様。」

「さっき、ボクは何故殴られていたのでしょうか?」

また少し不機嫌な顔をして

「せりが、鼻の下伸ばしてるからだよ。」

はい?菫さんに抱きつかれた時の事?鼻の下伸びてた?そんなわけないでしょ。

でも なづなは、ちょっと膨れっ面だ。

あら?

あらあら?

もしかしてヤキモチ妬いてくれたんですかお姉様?

さっきはヤキモチなんてやかないって言ってたのに?

え〜、えへへ〜。ヤキモチですか〜。

どすっ

おぐっ?

ちょ…肋骨の下端をえぐるのやめて…折れちゃうから

…こんな風に照れ隠ししてくれるなんてね。

ちょっとビックリ。

そりゃさ、菫さんみたいな美少女に抱き付かれて、何も感じないなんてあるわけないじゃない?

でもね、それは好意であっても愛じゃないんだ。

確かに友愛って言葉はあるよ?けど、あれって“仲間意識”みたいな意味でしょ?ボクが なづなに感じる“愛”とは全然違うものだよ。


「ボクはなづな一筋だよ。」

「…ばか。」


えへへ。

実はちょっとだけ理解したんだ。

ボク達は、間違いなくお互いを愛している。

けれど、ちょっとだけ、なづなは、ボクに恋心を抱いている。たぶん、小さな気持ちだから自分でも認識しづらいくらいの。恋心。

ボクを、求めてくれる心。

当然ボクにだってあるよ?

朝、言ったもの。ボクと一緒に生きて下さい、って。

これが相手を求める心じゃないなんて言えないよ。

おっと。

これくらいにしておかないと、また なづなの事ばっかりになっちゃう。

今は他にもやらなきゃいけな事たくさんあるもんね。

目の前の事をひとつづつ。


やっていきましょうかね。










あれ…?

こんな展開になるはずではなかったんですが…

書いてたら止まらなくなっちゃいました…

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