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あわーくらするーむ⑬

「鈴代なづな、です。」

「先程、自己紹介をした鈴代せり の双子の姉です。え〜と、自己紹介で言える事は全部妹に言われてしまっているので…何を言えばいいんでしょうか?」


クスクスとあちこちから笑い声が聞こえる。

「強いて補足するなら、眼の色が左右逆、という事くらいです。」

へ〜、そうだったんだ、綺麗よね、ホントだ…等々の声が聞こえてくる。そうなの!なづなの眼って綺麗なんだよ。宝石みたいでさ、今度よく見せて貰うといいよ!


なんだかんだで意外と喋る事あったねぇボクと同じくらい時間使ったんじゃないかな?

光さんと入れ替わりなづなが戻ってくる。

「結構時間使ったね。」

「合わせたんだよぅ。」

は?

「せりと同じくらいの時間になる様に頑張った。」

そんな事出来るの?え、すごくない?

どこかのアナウンサーは話した文字数で時間が測れるとかって話があったけど、似た様な事が出来るの?

いつからそんな事出来る様になったの?

「…わかんない。いつの間にか?」

ほら光さんの自己紹介、って言われて前を向くと丁度一礼し終えたところだった。


妹尾光(せのおひかり)です。」

光さんの自己紹介は、特に変わった事を言った訳でもなければ、話が面白いという訳でもないものだったのだけれど、声質のせいだろうか?それとも話し方?あるいはその両方?のせいで、とても印象に残った。

ふんわりとした囁く様な声は、耳に心地よい。

あれは天性だよなぁ…。


その後も自己紹介は進み、桂ちゃんや椿さん、満さんも終わった。

桂ちゃんはなんというか、いつも通りだったんだけれど、あれを全部聞き取れた人いるかな?()()()()()にマシンガンよろしく喋る喋る。思いついた事を口に出すから、ガンガン脱線するし自己紹介なのに他人の紹介とか始めるし。ボクと なづなの話も出て来たよ。ずっと同じクラスなんだって自慢してた。…自慢になるの、それ?


椿さんと満さんは、大勢の前で話すのは苦手そうだったね。いやまぁ、得意な子の方が少数派だろうけどさ。ボクだって苦手だよ、出来るってだけで。

椿さんは、実に椿さんらしい控えめな自己紹介でした。自己主張はあまりしないけれど、ちゃんと芯のある言葉で話してた。

満さんも無難に纏めてたね。でも、無難に纏められるって事は文章力、構成力があるって事だから。

普段から小説(ラノベ)読んでいるから、知らず知らずの内にその手の能力が伸びているのかもしれない。

ひとつ満さんの事が知れたね。


そうそう、このクラス渡辺さんが3人いるんだよ。

正確には “なべ” の文字がそれぞれ違うらしいんだけど、読みは全員同じ ”わたなべ“ さん。

ボク達が住んでいるあたりは大きな川のが直ぐ近くに流れているんだけど、それが渡辺って苗字が多い理由なんだって。

…どゆこと?後で調べてみよう…


自己紹介も終わり、休み時間を挟んでHRはまだまだ続く。お次はクラス委員の選定だ。

まずは委員長だけれど、こういうのは大抵の場合過去の経験者から他薦される事が多い。その場合本人もあまり断らないので、今迄は揉めた記憶はないし今回もサクッと決まるだろう。

…と、思ってたのだけれど。


「申し訳ありませんが、辞退させて頂きます。」

他薦された光さんが辞退したのだ。

辞退の理由を知っているボク達は「まあ、そうなるわな。」くらいにしか思ってなかった。

推薦者は微妙に納得出来ていないっぽいけど、本人がやりたくないと言っているのだ。どうしようもあるまい。

…が、幾人か上がった次候補の中に何故かボクと なづなの名前があったんだよ。やめて。ホントやめて。

さっき新歓祭も引き受けたんだし、それで良くない?

その辺りも絡めてお断りしたい旨を発言したんだけれど、なんか食い下がってくるんだよねぇ。

あーうー。

執行部希望だって言えば引き退ってくれるんだろうけど、別に希望している訳じゃないし、正式に打診された訳でもないからなぁ、言い訳に使うのはなぁ…。


「はい。」

挙手をして発言を求めたのは椿さんだった。

「保坂。どうぞ。」

マキ先生に呼ばれ立ち上がり…ボク達の方を見て。

「なづなさん、せりさん、すいません。」

あ、あ、ちょ、ま、


「なづなさん と せりさんは生徒会執行部に推薦されています。」

ざわ…

「生徒会役員となれば、クラス委員長との兼任は難しいと思います。それを踏まえて辞退されているのではないでしょうか。」

ざわざわ…

「そうなのか?鈴代。」

問われれば答えねばなるまいね…

なづなと視線を合わせ、これはもう仕方ない、ぶっちゃけてしまおう、と、なづなと共に立ち上がり


「はい。昨日、高等部のお姉さま方から推薦状を提出したとお聞きしました。」

「ただ、正式に要請があった訳ではないので…黙っておきたかったのですが…。」

ざわざわ…


「…なるほど。それならば仕方ないな。」

だが別に隠す事もなかろう、とか言ってますけどね

先生?公言して執行部からお話しありませんでしたーとか、恥ずかし過ぎませんか?そんな事になったら引きこもりになっちゃうかもしれませんよ?

それにしても椿さん、自己紹介の時とは別人みたいにはっきり意見を言ったね。カッコ良かったよ。


若干の悶着はあったものの、委員長副委員長も決まり、図書委員やら保健委員やらの各委員の選定となるのだけれど、こちらは元々やりたい子が立候補してくれたので、何も問題なく決定しましたよ、と。

意外だったのは満さんが図書委員に立候補した事。

自分の活動を優先するタイプだと思っていたのは、ちょっと見損なっていたかもしれない。ごめんね。


「よーし。委員の選定も済んだ様だな。」

マキ先生は窓際の教卓へと向かい、ゆったりと腰を下ろした。

「では委員長、副委員長、前に出て議長を務めなさい。」

「はい。」

指名された2人が教壇へと歩み出て…

「あの、先生?」

「なんだね?」

「議題は……?」

「なんでも良いぞ?」

うわぉ!

先生、そこから投げっぱなしですか?!

あぁ!?

委員長と副委員長、2人で相談し始めちゃったよ!

話合う事が思いつかないなら、“何を話し合うか”を議題にしても良いでしょうに。

それに!話し合うならかなり重要な事があるでしょうが!まさか忘れてるんじゃあるまいね?!

「はい。」

「あ、鈴代さん、どうぞ。」

「え〜…新歓祭で、()()()()()()を話し合うというのは如何でしょうか?」


副委員長さんが、ハっとして慌てて黒板に “新歓祭について” と書いた。

「他に案はありませんか?」

「…無いようなので ”新歓祭について“ を議題とします。」


新歓祭というのは、読んで字の如く“新入生を歓迎する為のお祭り”な訳だけれど、文化祭の様に出店したり学校中を使ったりする様な大々的なものじゃない。

講堂に新入生を招待して、2〜3年生が何かしらの出し物で楽しませてあげよう!という、ある意味学芸会的なものだ。何をやるかは各クラスの自由なので、毎年様々な出し物が催される。

しかしこの新歓祭、新入生の投票で順位が決まるのだけれど、なんと!上位のクラスには文化祭の時の予算や資材が多く割り当てられるという特典付きなのだ!

更に言えば、文化祭も順位付けがなされ、こちらの上位には更なるご褒美が待っている!

つまり!文化祭の前哨戦であり!戦いは既に始まっているという事なのだっ!!

今年は負けないぞぉ!!!


…イエ、ナンデモナイデス。


「では、先ず決定している事項の確認から…。」

といっても大した事は決まっていない。ボクと なづな…鈴代姉妹を中心に据える事、クラス全員が参加する事。

確定しているのはこの2つだけだ。

まずクラス全員が参加、というのも何処までを参加と言うのか?例えば、クラス全員で合唱とかするなら完全な全員参加だけれど、それが演劇だったら?

衣装とか大道具小道具作りも参加だよね?

すなわち、()()()()()を決めない事には、()()()()()()()()()が決まらないんだよね。

部活とかやってる子は其方(そちら)でも新歓祭に出るかもしれない。部活によっては、しっかり練習に参加しなきゃいけないところもある。

演劇部とか吹奏楽部とか、合唱部とかね。

そういう部に所属している子達に皺寄せが行かない様にしないと可哀想だしね。

発表の時間制限もあるし、どんな物なら勝ちに行けるのか…。


…え?

勝つつもりなのかって?

何言ってんの。

当たり前じゃない。

負けるつもりで参加するなんてあるわけないでしょ。

第一、楽しんでもらう為には本気でやらなきゃ。

本気でやれば、ボク達だって楽しいもの。

そして

本気でやるなら


一番目指さなきゃ。


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