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あわーくらするーむ⑫

「クラス参加となった以上、全員一丸となって、新入生を楽しませねばならない。覚悟はいいか?」

はい!と教室全体から声が上がる。

「よろしい。では、鈴代姉妹を中心に据えて何をするか。意見を出そうか。」

え?

なに?

どういう事?

「あ、あの、先生…、」

「なんだね?鈴代なづな君。」


なづなの問いに応えたのは、我がクラスの担任。

タイトめなパンツスーツが決まっている女性教師

入山瀬(いりやませ) マキ先生。

肩まである緩いウェーブのかかった髪と少しキツめの眼がアンバランスだけど、かっこいい感じで纏まっている。喋り方もハッキリしていて、如何にも先生!って印象だね。

とても生徒おもいの先生で人気あるんだよ。

すずな姉ちゃんの中等部時代も担任だったらしいから、少なくとも30中盤以降、下手をすれば40手前くらいのはず…なんだけど、とても若々しい。

年齢詐欺具合はウチのママといい勝負なんじゃない?


閑話休題(それはさておき)


「状況が全く呑み込めないのですが…?」

「ふむ。それもそうか。」

ぐるりと教室を見回して

「赤池。ざっとで良い。説明してやりなさい。」

「え…?あ、はい。」

赤池さん。廊下側の列、1番前の席の子だ。

つまり2年1組、出席番号1番という事だね

赤池さんが席を立って、ボク達に近づこうとした時、

「あぁ、2人に、じゃない。クラス全体に、だ。」

え?!

これまでの流れを発表会よろしく、全員に向けてスピーチしろと?うわ。HRで授業みたいな事させられるのか。…いや、HRも授業の一環なのか。マキ先生の授業は、もう始まっているって事か。


「え〜…今日、行うはずだった教科書等の配布は、業者さんのトラブルの為、明日以降に延期されました。」

うん、それは知ってる。

「配布の係が戻り次第、通常のHRを開始し自己紹介や各委員の選定を行う事にしたのですが、戻って来ないので、新歓祭の参加可否について話し合おうという事になり、現在に至ります。」

ふむふむ…。

いや、赤池さん!

肝心なところが抜けてて全然わかりません!


「赤池。端折っちゃダメなところを端折っちゃってるから、鈴代、全然わかってないぞ。」

こくこく。

赤池さん、自分の掌にメモを取る様な仕草をしながら、一生懸命話の流れを整理してるんだろう。上を見たり床を見たり、答えが書いてあるわけでもないのに掌を見つめたり。

「え、え〜…新歓祭に参加するか否か、参加の場合はどの様な事をするのか、クラス単位での参加か希望者のみか、等を話し合いました。」

ふむふむ、なるほど。


「よろしい。そこから先は加藤。おまえだ。」

「は、はい。先ずは参加不参加は、参加に決定しました。次に全員参加かどうかの話なんですが、部活等で参加する人は、基本サポートの様な形にしてみんなで参加する方向で纏まりかけたんですが…。」

…ですが?


「一部から、鈴代さんを正面に押し出したモノがいいんじゃないかという意見が出まして。」

だぁれだぁ!そんなこと言った子はぁ!?

あ。桂ちゃんがてへって顔してる。

おまえかぁ!!


「本人の意見を聞かずに決めるのはまずいのではないか、という人もいたんですが… 」

「先生が、初日のHRをサボるような愚か者に情けは無用、と仰いまして…鈴代さんを中心に据える事になりました。」

サボってないです!

誤解です!

サボっちゃおうかな〜と思わなかった訳じゃないですけれど!サボってはいないじゃないですか!帰ってきたじゃないですか!?

パクパクしてるボク達を見てニヤニヤ笑うマキ先生。

ぐぬぬっ!


「次、佐々木。」

「はい。次の問題として2人に任せて、サポートを付けるのか、全員参加でメインを鈴代さんにやって貰うのか、どちらが良いか、という事になりました。」

全振りの案があったの?!

ひどくない!?


「ここでまた先生から提案がありまして。」

今度はどんな…?

「鈴代さんが、HR終了まで戻って来なかったら、ペナルティとして全部2人でやって貰う。と。」

あっぶなぁ…!戻って良かった!

ん?

ちょっと待って?

ボク達がメインっていうのは確定なの?

サボってないのに?!


「うん。よろしい。佐々木ご苦労、座って良し。」

「ま、そういう事だから鈴代なづな、鈴代せり両名には新歓祭で張り切ってもらう。否はないのでそのつもりで。」

拒否権はないんですね…?


「当然だ。妹尾達は戻っている。お前達は遅刻しHRの円滑な進行を妨げ、既にクラスメイトに迷惑をかけている。穴埋めは必要だろう?」

うぬぬ、なんとなくそんな気になってきた…。


「寧ろ、お前達に丸投げしようという提案に乗らなかったクラスの皆の優しさに感謝し、率先して盛り上げようという気概を見せても(ばち)は当たらんと思うが?」

ぐぐぐ…なんか、その通りな気がする…!

クラスのみんなは、苦笑したり、大仰に頷いていたり、ニコニコと笑っていたり、反応は様々だけれど

迷惑かけたのは事実ではあるし、皆の優しさ…同情かな?も本当の事だろうし、まぁ一部は面白がっているだけっぽいけど。覚えてなさいよ桂ちゃん。

…ちゃんと考えれば、いくらでも反論出来そうなモノだけれど、別に絶対やりたくないって程でもないし、クラスの結束にはこういうイベントがあった方が手っ取り早い。誰がクラス委員をやるにしてもこの手のイベントで纏まっておいた方が、体育祭や文化祭の時にやり易くなる筈…。

仕方ない、人身御供、甘んじて受け入れよう。


「わかりました…。」

「お引き受けします…。」

あ〜もう、マキ先生、絶対ボク達は断らないって確信してたよね。思い通り転がされたに決まってる。

「よろしい。では、席に着きなさい。」


「よし。じゃあ3番に投票した者、放課後ミルクホールに集合する事。来なかったら権利放棄と見なすからな。」

はーい!と返事する子が15〜6人くらい?

クラスの半数だね?なんだこれ?投票?桂ちゃんが嬉しそうに手を挙げてるね?なんなの?

あ、ちなみにミルクホールっていうのは、生徒館っていう建物の一階にある学生食堂の事ね。

中等部には給食があるし、高等部のお姉さま方もお弁当持参してるから、利用者は高等部の生徒一部と体育会系の子達が多いかな?

安くて美味しいんだよ。


何はともあれ、ようやく自分の席に戻れた…。

前に座っている菫さんが、前を向いたまま体を反らして話しかけてきた。

「おかえり。遅かったわね?」

「ただいま。うん、ちょっと保健室にね。」

「何かあった…わけじゃなさそうね。」

「ああ、うん。後でちゃんと話すよ。」

「わかった、楽しみにしてる。」

大した話じゃないよ?

「ところで、ミルクホールに集合って?」

「…それは、後で…ね。」

言い難い事なのか…ボク達に関する事だな。


「全員揃った事だし、まずは自己紹介でもして貰おうか。出席番号若い順に。」

ボク達が居なかったから、自己紹介もまだだったのか、ホントすいません。

1番目はさっきの赤池さんだよね。


「赤池香澄(かすみ)です。」

香澄さんというのか。

ボク達の所為で、いきなりスピーチする事になっちゃって、ごめんね。後で改めてお詫びしておこう。

さっきスピーチしてくれた加藤さんと佐々木さんは、ボク達の列の一番前と二番目の席の子だ。

加藤小梅さん、佐々木エリカさん

2人にもお詫びしておいた方がいいよねぇ…。

あとでひとこと言っておこう。


ボクの席は廊下側から2列目

小梅さん、エリカさん、菫さんボク、なづな、最後尾が光さんという並びになっている。

ウチのクラスは総勢32人なので、一列あたり5〜6名が並んでいて全6列ある。

ボク達の席は廊下から二列目だね。

あ、前に言ったね、コレ。

クラスの人数は多くもなく、少なくもない。

初等部の頃からクラスの人数は、だいたいこのくらいの人数だったと思う。

高等部になるとクラス数が増えるけれど、ひとクラスあたり人数はほとんど変化しないみたい。


「……一年間、よろしくお願いします。」

パチパチパチパチパチパチ〜。

お、菫さんの自己紹介が終わった。菫さんって結構喋るの上手だよね。弁論大会みたいな堅苦しい感じではなくて、普通の話し言葉なんだけど、ちゃんと耳に残るというか…敢えて例えるならば…落語の様な?テンポが良くて抑揚の付け方が上手…なのかな?

スポーツの実況とかさせたら凄くハマりそうな気がするなぁ。…待てよ、いつか役に立つかも知れないぞ、この情報。覚えておこう。

あ、朗読会とかやったら子供に大ウケしそうだ。


次はボクの番だね。

席を立ち、教壇から戻ってくる菫さんとタッチを交わして、入れ替わる様に教壇前に立つ。うっひぃ…全員に注目されるのっておっかないね。


少し深めにお辞儀をして、クラスメイトをゆっくり見回す。

「まずはお詫びを。HRに最初から参加できず、大変ご迷惑をおかけ致しました。」

さて、何を言おうかな。



「鈴代せり、と申します。」

















新キャラ続々です。


赤池香澄さん


加藤小梅さん


佐々木エリカさん


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