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あわーくらするーむ⑪

「いらっしゃ〜い。保健室へようこそ〜。」


軽いノリの言葉で出迎えてくれたのは、ロングヘアをサイドアップにして、前に流している白衣の天使。

この人は養護教諭の黄瀬マリ子先生。

通称マリー先生。

マリーゴールドって呼ぶ子もいるね。

なんでマリーゴールドなのかって?

黄色いマリーゴールドの花言葉が “健康” だからなんだって。納得のネーミングだね。


保健室!って感じの消毒液の匂いを嗅ぎながら、室内に進む。ボクまだお姫様抱っこされてるんだけど、マリー先生ってば、全然動じないね?

女の子が女の子をお姫様抱っこって、結構なインパクトのある絵面だと思うんだけれど…?

「マリー先生、ちょっと妹が調子悪いみたいで…」

「はいはい、そこの椅子に座らせて〜。」

言いながら聴診器と体温計を取り出し、ボクの前までやって来て正面の椅子に腰掛けた。病院によくある丸い椅子に座らせられていると、なんか緊張するのは何故だろうね?

「どれどれ?ちょっと診せてね〜。」

マリー先生の間延びした喋り方は緊張感に欠けるけれど、なんとなく安心するんだよね。話術なのかな?

痛いの痛いの飛んでけ〜って言ってくれたら、本当に痛くなくなりそうな気がする。

目を見せて〜、舌出して〜、脈を診るよ〜、聴診器を構えて、はい服捲って〜、はい次、背中〜。

テンポよく診察が進んでいく。

実際は体調悪い訳じゃないから、異常なんてないはずなんだけど。

「熱は…。」

ピッとおでこで計る。

「ふむ。」

「軽い貧血。…()()()()()()()()()()()。」

にっ、と笑いカルテの様な物に記入していく。

あぅ…仮病だってバレてるね、これ。

なづなを見れば、同じくバレているのを察したらしく苦笑している。

「すいません、先生…。」

「毎度毎度じゃ困るけど、たまには、ね。」

私も覚えがあるものってボク達の頭を撫でて、自分の席に戻ってゆく。

「そうね〜、10分程休んで行きなさい。」

そうすれば言い訳には丁度いい時間でしょ、だって。そんな事まで察してくれるとは…。

さては、そういう生徒が結構な数いるんだな?

まったく、けしからんね。


すいません。


ボクはベッドまで移動し、上履きを脱いで横になる。

あ、糊の効いたシーツ、気持ちいい。

意味もなくサワサワとシーツを撫でてみた。

「鈴代さん。」

「「はい?」」

ビックリした!マリー先生、ボクらの事知ってたんですか?!

「そりゃ、知ってるわよ〜。有名だもの。」

有名、ねぇ…目立つだけだと思いますよ?

主に容姿で。

「確かに容姿は注目されるわね〜。」

高等部に進級すれば、留学生もいるし海外の子も増えるからそれほどでもなくなるでしょうけど、って。


「それより、これ。」

ピッと封筒と紙を一枚を出して、なづなに手渡した。

「これは?」

「在室証明。この時間、保健室にいましたよ〜っていう証明書。兼、診断書、ね。担任の先生に渡す事。忘れちゃダメよ〜?」

へぇ〜、そんなのあるんだ。

その紙を覗き込むと、時間と所見、それに先生の署名とハンコがあった。

「いい〜?あなたは、教室に向かう途中目眩がしてお姉さんに付き添われて保健室に来た。大事を取って少し横になって様子を見てから、教室に戻った。」

そういう筋書きよ?私は聞かれたらそう答えるからね〜?ちゃんと覚えといてね〜?



なんというアフターケア。

口裏合わせまでしてくれるなんて…!

「今回は特別よ〜?」

勿論です!

何度もお手を(わずら)わせる様な真似は、致しません!

よろしい、と頷いて再び書類に目を向ける。

保健室の先生って、実は凄く忙しいんだって、すずな姉ちゃんが言ってたっけ。

怪我の手当は勿論、持病のある子のケアやカウンセリングやら、それこそ全校生徒の病歴まで気をつけなきゃいけないらしいから、やる事多すぎでしょう…。

そんな中、今のボクらみたいな仮病の生徒の相手まで

してくれるんだから、ホント白衣の天使だよね。


マリー先生曰く、

仮病の生徒と、遊びに来る保健委員しかいないのが一番良い事なんだって。

それじゃ先生やる事なくなっちゃうじゃないですかって言ったら、世の中には暇な方がいい職業って沢山あるのよ〜って。

警察、消防、医者、軍人、葬儀屋、弁護士に裁判官、

いないと困るけど、暇であってくれた方が平和だと思わない?だって。

はぁなるほどねぇ。

言われてみれば、そうかもしれないね。


「さ、そろそろお戻りなさい。」

マリー先生に促されて、ベッドから身体を起こし上履きを履いた時、初めて気付いた。奥のベッド、カーテンで仕切られた向こう側にもお客さんがいたみたい。

ありゃ…ホントに具合の悪い子が居るのに、アリバイ工作の為に保健室使うとか…良心が痛い!ぐぅ…!


「マリー先生、ありがとうございました。」

「どういたしまして〜。サボりは感心しないけど、病気や怪我で来られるのも嬉しくないから〜、元気に遊びに来なさいな。」

あっはっは、それ、いいのかなぁ?

でも、そうだね。

その方が平和だもんね。

「はい、そうします。」

その答えに満足した様に笑い、ボク達の頭を撫でる。


「失礼しました。」

一礼して退室するとき、ヒラヒラと手を振ってくれる先生が眼に入った。


「教室、戻ろうか。」

「そうだね。戻ろう。」

そう言ったところで、ふと思い出した。

「そうだ。ね、なづな。」

「ん?」

「抱っこさせて。」

「はい?」

「抱っこさせて。」

「いや、聞こえなかった訳じゃなくてね?なんで、いきなり抱っこなの?」

いきなりじゃないよぅ。

さっき、なづな はボクの事抱っこしたじゃない?

ボクも なづなを抱っこする権利があると思うんだよね。減るものでもないし、いいでしょ?

「べ、つに良いけど…。」

よっしゃ。じゃ、早速。

縮こまる なづなの背に手を添え、足を掬い上げる様に

「よっ、と。」

持ち上げ…おぉ?

持てるね。

うん、充分持てる。

「あは、なづな、軽いねぇ。」

なんか嬉しくなってクルリと回ってみた。

「わぁ!」

小さく悲鳴をあげてるけれど、別に怖がっている訳じゃなさそうだね?

このまま教室まで行っちゃおうか。

「だ、駄目だよ!病み上がり設定なんだから!」

おっと、そうでした。

「そうだよね、ごめん。」

それにしても随分と軽く感じたなぁ。

この半年程で体型も目に見えて変わったし、もしかして筋力も上がってるのかな?

恐るべし成長期。

願わくば身長も伸びてくれると良いのだけれど…

パパ似だからなぁ…いやいや、それでもあと10cmくらいは…伸びるといいなぁ…。


階段を昇り3階へ。

3階の東端の教室がボクらの教室だ。

身を屈めて窓の下に隠れる様に3組、2組の教室を通り越して我らが1組の扉にたどり着く。

そ〜っと中を覗いて見たんだけど、やっぱりHRをやってるね。

…どうしよう?

堂々と入るべきか、こっそりと入るべきか…

こっそりと、かぁ…う〜ん…

漫画やアニメ、ドラマでも、速攻見つかって名前呼ばれて、みんなに笑われるってのがお約束のパターンだよねぇ。

なら、堂々と?

遅れました!って元気よく入って行けば…注目を浴びるだけで済む…か?

結局悪目立ちするんじゃん!

「どうしよう?」

「普通に入って行くのが一番無難だと思う、よ?」

「だよねぇ… 」

仕方ない、そうしよう。

どっちにしても目立ってしまうなら、潔く


「鈴代姉妹。さっさと入って来い。」


ひぃ!

驚いて見上げたら、窓を開けて担任の先生が顔を出していた。

すすすすいません!ただいま参ります!

教壇側の扉を開けて教室に入ると、何故か歓声が上がった。

え?何?

「はい。静かに!」

先生の一言で教室が静まった。

「え〜、これで勝負はついた訳だが…異論はないな?みんな。」

はい、問題ありません、よし、やった、勝った勝った等々勝利の声が上がるかと思えば、あ〜失敗した、あっちにしとけば良かった、も〜鈴代さんってばぁ、って声もちらほら聞こえてくる。

ええ?

なになに?

どういう事?


「では、新歓祭はクラス参加で決定した。」


…は?


はい?!








保健室の養護教諭

黄瀬マリ子


通称 マリー先生

一部ではマリーゴールドと呼ばれています

明之星女学院卒業生

ゆる〜い雰囲気と話し方で人気の先生。







また書いてる途中で勝手に投稿されてしまいました…

これ投稿時間設定が効いてないのかしら?

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