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あわーくらするーむ⑩

「ちょ、ちょっとまって!?私も?」

そう言ったよ?

「な、なんで?!私、セリナお姉さまと面識なんてないよ?!」

ボクだって面識なかったよう。

でも、もう知り合っちゃったし、セリナ様は()()()()()()()()()なのだし、断る理由もない。行かないという選択肢はないと思うんだ。

「…うん、そうなんだけど。」

あれ?なづな にしては歯切れが悪いね?

「せりさん。」

なんかボクの袖をちょっと摘んでクイクイと引っ張ってくる。椿さん?どしたの?仕草が可愛いよ?

抱きしめていい?え?そういうんじゃない?

「なづなさん のアレ…もしかすると…」

もしかすると?

「やきもち…?」

やきもち?…え?!

「せりさんが 、なづなさん の知らないところで綺麗な女の子と仲良くなってるのが気に入らない、とか。」

…ええ…

「今朝の、アレの延長なんじゃないですか?」

…今朝の…あぁ!

ああそうか!そうだった!

なづなは“好きが溢れて止まらない”って言ってた!

じゃ、じゃあ!やきもちっていうのも、あながち間違ってはいないのかも…!

あぁ、なんだろぅ?

なんか嬉しい。

なづなが、ボクの事でヤキモチ妬いてくれてる!?

「ちゃんとお話ししないと駄目だけど…本気でイヤがっている訳じゃないと思うの。」

そうだ、今ここで甘えて見せてご機嫌取りするのは簡単だけど、それじゃ納得はしてもらえない。

ちゃんと話して、セリナ様が()()()()()()じゃないって事をわかってもらわなきゃいけないよね。

「そっか、ありがと椿さん。」


「なづな、ちょっといい?」

立ち止まり、声をかける。

「?教室戻らないの?」

「戻るよ。でも、その前に話があるの。」

「あとじゃダメ、なの?」

「ダメ。今じゃなきゃ。」

「…わかった。」

「みんなごめん。先に戻ってて。」


みんなには先に戻ってもらい、ボク達は2人で話の出来る場所へと移動する事にした。

選んだ場所は中等部棟の西階段。

その屋上階へ出る扉前、屋上階段室。

この階段そのものが校舎の西端にあり、昇降口から最も遠い事で、極限られたクラス…はっきり言えば各学年の7組の生徒しか利用しない。下手をすれば7組の生徒すら利用しない程に人気(ひとけ)がない。

そのせいで怪談めいた噂があったり、七不思議の舞台になっていたりして、ますます人が来なくなる、と。

けれど極一部の生徒の間では、人気のスポットなんだよ?誰も来ないからここでデートしてる子もいるんだって。

デートって言っても、お話ししたり、ただ2人の時間を過ごすだけなんだろうけど…。

まぁわからない事もないね。

ボクもなづな となら、一緒にいるだけで幸せだもん。

そういえば、階段室を使う時は踊場にサインを出しておくんだって聞いたんだけど…どうするんだっけ?

確かモップがどうとか言ってた様な…?

あ、あのモップの事かな?

あれを…どうすれば良いのかな…?

2人の時間を邪魔されたくない子達が、相互不可侵の為の秘密のサインみたいなのあったはずなんだけれど…なんだったっけ?

椿さんなら知ってるかな?

後で聞いてみようか。


階段室に到着して、なづなに向き直ると なづなも、ちょっとだけ表情を険しくした。


「なづな。」

「なに?」

「愛してます。」

「……は?」

「君以外、何もいらないです。」

「…ちょ、ちょ、ちょっと待って?」

「待たない。なづなが理解(わか)ってくれる迄何度でも言う。」

「え?…ええ?どういう事?!」

「なづなが、ヤキモチなんか妬かなくて済む様に、はっきりボクの気持ちを示しておこうと思って。」

「…ヤキモチって… 」

憮然とした面持ちでボクを睨む。

睨まれたってやめないもんね。

「ボクは なづな がいてくれるなら、それだけでいい。

君の側に居られるなら、他に何も望まない。」

正直なところ、これで拒絶されたら立ち直れない。

今だって膝が小刻みに震えているもの。

なづなは、はぁ〜…と大きく溜め息を吐いて

「知ってるし、一緒に生きるって約束したはずだけど?」

あれ?

「…なんで急にそんな事言い出したの?」

あれれ?

「だ、だって、セリナ様の話した時、なんか、気に入らなそうだったというか、イヤそうだったというか…そんな感じだったじゃない?」

「それはそうでしょ。いきなり“セリナ様”って。動揺もするよ。」

「だから、やきもちを… 」

「違うよ?」

違うの!?

「私がやきもち妬く事なんてないよ?」

がーーーーん!そ、そんな…

「だって、せり は私に全部くれたんでしょう?」

え、うん…

「私は全部せりの、だもん。」

う、うん…。

「それがわかっているんだから、やきもち妬く必要なんかないじゃない。」

「例えば…せり はさ、ほんの一時間の間に私が光さんの事を“光”って呼び始めたら驚くでしょ?」

「……驚く。」

「でも、それで私が せり の事より光さんの方を好きになっちゃったって思うの?」

「…そうは思わない…と、思う。」

「私は、せりの事信じてるから、疑ったりしないし、

嫉妬したりなんかしないよ?」

うぐぅ…そんな風に言われたら、ボクがなづな の事信じてなかったみたいじゃないか…!

「私が不機嫌に見えたんだったら、それはヤキモチとかじゃなく、せりが そう思いたかっただけじゃないかな?」

ボクの思い込みと早とちり…

椿さんの一言で、思い込みに拍車が掛かったって事か〜…うぅ…

「ただ…。」

「動揺してたのは事実だよ。」

ん?

「さっきひとりで行動してた時にね。」

うん。

「高等部のお姉さまに呼び止められて“ちょっと大変になるかもしれないけど頑張ってね”って、言われた。」

なにそれ?!

「もしかして、セリナお姉さまの事じゃないかな、って。」

あ、あ〜…そうか、そんな事があったのか。

それであんな動揺したのね、なるほど。

そっか、そこにボクの早とちりが加わってこんな事態に…


「あ、そうだ。なづな。」

「なに?」

「セリナ様ね、」

「うん。」

「お姉さまって言うとお(へそ)曲げるかも。」

「…え?」

「ボクと話してた時も“セリナ‘と呼びなさいって言われたから。」

「ええ…?」

「お姉さまって呼ぶと、きっと言われるよ。」

「私もセリナ様って呼ばないとないけないの?」

「間違いなく、そうなると思う。」

「…そ、そうなんだ…コワイ人なの?」

「全然。押しが強いだけで、優しい人だよ。」

説明して欲しいという なづな のリクエストに応じて、セリナ様との会話をほぼ全て解説付きで話した。

本当に大した会話はしていない、挨拶みたいなものだ。


「執行部絡みじゃない可能性もあるんだね…。」

「うん…そっちの方が可能性が高いかもね。実際、執行部の勧誘はされてないもの。」

その後も善後策を話し合ったんだけど、結局は、お誘い頂いた以上セリナ様との面接(?)は避けられないけれど、無駄に気負う事もないんじゃないかなってとこに落ち着いた。


それじゃ戻ろうかと腰を上げた時、なづなが

「ところで、妹様。」

「なんでしょう、お姉様。」

「なんで、ここで話そうと思ったの?」

「…ここで、って?」

「西階段の屋上階段室、なんでここだったの?」

え?人気(ひとけ)が無くて、内緒話にはもってこいだったから…なんだけど…

「…知らないで選んだんだ…。」

何故か、ホッとした様な、残念そうな複雑な表情で呟いた。って事は なづなは知っているって事だよね?

なんか意味があるなら教えて下さい。

「…やだ。」

えぇ…

「…後で知って身悶えるがいい…。」

うん?なんて?よく聞こえなかった。

「ううん、なんでもない。先に降りてていいよ。」

なんかちょっと悪い顔してるのが気になるけど、言われた通り踊場まで先に降りているとしよう

これから教室まで戻らなきゃいけないんだけど…

でもなぁ…今戻るとHRの真っ最中だろうし、なんて言い訳したものだろうか?いっそサボってしまうというのも…いやいや、それはダメでしょう…なづなが許すまい。

アリバイ作りに保健室に寄って行くのは…ありかな?

ちょっと気分悪くなっちゃいました〜って。

よくある手口だけど、1番無難な言い訳なんじゃなかろうか?


踊場まで降りて階段室の方に振り向くと、なづなが屋上への扉の方に向いて、何か話している様に見えた。

「なづな?」

「ん、今行く。」

また扉に向かって二言三言(ふたことみこと)声をかけているのだけれど、ここからじゃ聞こえない。

「何?おまじない?それとも…まさか誰かいたの?!」

「ん〜…おまじない、かな?」

どんなおまじないなのかな?

「百合の妖精さんに使わせてくれてありがとうって。妖精さんもお幸せにってね。」

百合の妖精さん?

そんなのいるの?

屋上に?

「いるんだよ。」

そう言って なづなが笑う。


「あ〜…朝、あんなに恥ずかしかったのに、今は全然平気になっちゃった…なんだろう、これ?」

それはコッチが聞きたいよ。

椿さん達と話してから、まだ1〜2時間しか経ってないのに、気持ちが全然違う。

あんなに浮き足立っていた なづなが、こんなに落ち着いているなんて。


「ねぇ、なづな。」

「ん?」

「保健室、寄って行こう。」

「…気分悪いの?」

「ううん。」

「…あぁ、アリバイ工作?」

「正解。」

「駄、イヤ…う〜ん…その方が角が立たないかな… 」

「言い訳しやすいと思う。」

「…せりが、悪い子に…。」

お目玉もらうより良いと思うんだけど?!

「どっちが病人?」

「なづな。姉を心配する健気な妹路線で。」

「なら妹を心配する心優しい姉でもいいじゃない。」

む。確かに。


結局ジャンケンになった。

じゃーんけーん

ポイ!

あいこでしょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!

ぐぉ!負けた!

また負けた…。

なづな強いなぁ…

「じゃ、心優しい姉路線で。」

にっこにっこの なづながボクの背中に手を回して

「よっ。」

お姫様抱っこされた。

「ちょ…!?」

「さっき椿さんを抱っこ出来なかったから。」

やってみたかったんだよね〜って。

意外と出来るものだねと軽く言ってるけど、ちょっとビックリ。確かに、最近ボクも前より重いもの持てる様になってたけれど、なづな もなのか。

成長期、恐るべし。

「せりは軽いね。」

そんな馬鹿な!体重は なづなと同じはずだよ?!

あ、つまり、自分は軽いアピール?

トントンと階段を降り、一階にある保健室に向かう。

保健室は中等部、高等部の校舎それぞれにあるのだけれど、学院の生徒はどちらを利用してもいい事になっている。

校庭から近いのは中等部棟だし、体育館や武道館から近いのは高等部だから、という理由らしい。

なるほどだね。

まぁ、ボク達は至って健康なので、あまり利用した事ないのだけれど。

今日はアリバイ工作に()()させてもらいます。

正しい利用法じゃなくてごめんなさい。


「失礼します。」












学院七不思議ネタ

少しづつやっていきたいですネ

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