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椿の独り言

…ああ、可愛かった。

激しく照れている なづなさんも、目を合わせて語りかける せりさんもの真剣な表情も。

叶うなら写真、ううん、動画で保存したいわ。

もう映画よ。映画。

姉の頬に手を当てて顔を上げるシーンなんて、そのままポスターに使えるわ!


私に口を塞がれていたクラスメイトが、口を塞いでいる手の甲をトントン叩き、続いて教室内を示す。

あ、せりさんが時間を気にしだした?

「…私達も移動しましょう。私は前の扉の子達と西階段を使います。」

そう宣言して窓の下に隠れて、前の扉まで移動する。前の扉の陰で、半分呆けているクラスメイト達に移動を促して取り敢えず階段迄は無言で進む。

階段を数段降りたところで、クラスメイトのひとりが…

「ちょっと!なにあの子達!実在するの?!」

ええ?!

「ホントよ!映画か演劇みたいだった!」

あ、それはわかる。

「噂の双子をちょっと見たいと思っただけだったのに…あんなに可愛いなんて…外見だけじゃなく中身まで可愛いとか、反則だわ…。」

ですよね。

その気持ちはわかる。

「近くで見るともっと凄いわよ。」

「近くって?」

この辺、って手で自分の顔との距離を示して見せた。

「そ、それは凄そうね…。」

ゴクリ、と息を呑む音が聞こえる。

それはもう凄かったです。私気絶しましたもの。

「椿さんは、朝お話ししたのでしょう?」

「どんなお話したの?!」

皆さん興味深々ですね。

ねだられたのでは仕方ない。

歩きながら、朝の「プレゼントに込められた想い」の話をしましたよ。

やっぱり神妙な面持ちで考え込んでます。

そうでしょうね。私もそうなったもの。

「そんな風に考えた事なかった… 」

「確かにプレゼント贈る時は、喜んでくれるといいなとは考えるけど… 」

うんうん、みんな考えると良いですよ。

鈴代姉妹の可愛さ、賢さが伝わって喜ばしいわ。


全校集会は津々がなく終わり、私達のお仕事の時間が来ましたよ。

職員室に向かう途中、高等部のお姉さまに呼び止められて転びかけたり、それを支えて貰ったり。

名乗らされたり、撫でられたり。

蓬お姉さま、司お姉さまと仰る方達。

司お姉さまは、せりさん達とお知り合いみたいだったけど、美少女の周りって美少女か美人しかいないの?

自分がとんでもなく場違いな場所に居る気がしてならないのだけど!

程なく解放されたのだけど、せりさん姉妹も光さん達も、お姉さま相手に全く動じずに受け答え出来るなんて…はぁ、モノが違うわね…。

私なんて、すっかりお地蔵さんだったわよ。


職員室前に到着。

が、ここでトラブル発生。荷物が届いてない。

先生もいない。

職員室もしまっていて状況が全くわからない。

なづなさんが、個々に指示を出して皆がそれに頷き行動する。私は高等部のクラス、どこでもいいから、先生を見つけたら事情を話して職員室まで引っ張って行く役目を仰せつかった。

なづなさんの決断も早かったけど、せりさんなんか名前を呼ばれただけで、何をすれば良いか言い当てていたのには驚いたわ。なづな さんも特に否定も追加指示もなく、ひとつ頷いただけ。

正に阿吽の呼吸ってやつね。

どこまで通じ合ってるのかしら?

幸い私の役目は、問題なく済んだ。

高等部の校舎に行ったら、教室の中に担任の先生が普通にいらっしゃった。HR中だったので、区切りのいい辺りまで待たなきゃならなかったけど。

ひとりの先生に事情を話せば、後は簡単。

先生自ら各教室を周り、副担任の先生方をかき集めて下さった。後は職員室に戻るだけ。


職員室に戻ってみれば、やはりなんの進展もない様だった。せりさん は戻っているけれど、菫さんと なづなさんの姿はない。教室で足止めされているのだろうか?


せりさんが姉と合流したいと申し出、先生が条件付きで許可した。出された条件は2人で行動する事。

一も二もなく立候補したわ。

せりさんと行動したかったから。

聞きたい事があったのも理由だけど、単純に一緒に居たかったのよね。

自分で言うのもなんだけど、私、極普通の女子なの。そのつもりだったの。

確かにね、創作物、ライトノベルや漫画なんかではBLやGLも好んで読むんだけど、現実でそういうのは極少数で自分には関係無いものだと、そう思っていたのね。

けれど今日、自分の認識を改める出来事があって…

現実で女の子に恋をしてもいいんだって。

女の子同士でこんなにも純粋に愛を語れるんだって。

そう思わせてくれたこの子を見ていたいって。

思っちゃったの。



一緒に移動している間に、お話ししていたんだけど、やっぱり生徒会執行部に推薦されたというのは本当みたい。

凄いわよね。姉妹揃ってお姉さま方に気に入られるなんて。なかなかある事じゃないわ。

けど、話を聞いている内に、とても聞き捨てならないセリフが飛びこんできたのよね…


「セリナ様に時間取ってね、って言われたけれど…」


今、なんて言った?なんて言いましたか?!

せりさんが!セリナお姉さまに!個人的に!お誘い頂いた!ですって?!

これは、聞き流す訳にはいかないわよ?!

中等部10大美少女のひとり、百合沢セリナお姉さまが!

中等部10大美少女の双子、鈴代せりさんと鈴代なづなさんを!

ご自分のお側に、と!

お望みになられたと!?

だって、そうよね!?

今、せりさんは“セリナ様”って言ったもの!


この学院では先輩の事は、名前にお姉さまを付けて呼ぶのが習わしですから、「お姉さま」を外して呼ぶのは特別に許された、極近しい間柄の証左に他なりません!

セリナお姉さまと せりさん姉妹は以前からお知り合いだったのでしょうか?

前々からお知り合いなのだとしたら、こんな美少女が纏まっている場面を誰も目撃していないなんて事があるだろうか?いや、有ろうはずがない。

ならば、今日!全校集会の後!私達が別行動をとっていた、あの僅かな時間で!2人の関係が一気に縮まったという事!

やっぱり美少女は美少女と引き合うのよ!

赤髪のセリナお姉さまがプラチナブロンドの鈴代姉妹を侍らせている、そんな場面を想像するだけで、のぼせる程血が巡るのがわかる。うわぁ!写真撮りたい!絵に残したい!きっと綺麗だから!

身体が熱い!滾る!

プツッ

あ…



ん…あれ…?

私、なんで…寝て…?

え、目の前の、これ…なに?

制服…だよね?誰の?

さっきまで、何してたっけ?

えっと…職員室まで、先生と一緒に行って、その後せりさんと用務員室へ行く途中に…あれ?!

…え?

せりさんとセリナお姉さまが、って話をして…

そこで

まって、私、気絶したの?また?!

じゃ、じゃあ!この、後頭部の感触は…膝枕?!目の前の膨らみは、せりさんの!?

おっぱ…?!え?迫ってくる?


むにゅん


顔に押し付けられた柔らかいのに凄い弾力の!何これ!?ゼリー?!うわーっ!いい匂いがする!ミルクみたいな、甘い様な柔らかな、あ、赤ちゃんの匂いが近いかな?すごい、きもちいい、なにか、わきあがってくる、あたまのしん、が、しびれ

あ、ダメ、またおなかの、おくが、あつ

プツッ

…あ。




「あ。起きた?気分は?」


ここは…?

あれ…?…私、寝て…た?

え?…どこ?

今の声、お母さん、じゃない…よね?

思考が定まらない…。え、と?

今、私、どこで、何を…?


「椿さん。ボク、わかる?」

目の前にある、その顔のインパクトに

一気に意識が覚醒していく。

…わかる!わかります!わかりますけども!

また!こんな近くに、可愛いお顔が…!

「……せせせせせりさん!?」

わわわ、呂律が…っ!

そんな私の狼狽を気にする事もなく

「急に気を失っちゃったんだけど…貧血とか?」

「寝不足とかは?ちゃんとご飯食べてる?」

まるで母の様に、真剣に心配してくれる。

違うの!寝不足なのはよくある事だけど、心配される様な理由じゃないのよ!

せりさん が心配するような原因で失神したんじゃないの、ちょっと人様には披露出来ない様な、その、微妙に恥ずかしい理由でですね、だからね、聞かないで、お願い、後生だから!


その後この子ってば、私の髪を撫でて、お腹をポンポンって。凄く優しく撫でてくれたの。

子供を寝かしつける時にやるでしょう?

あんな風に。愛おしそうに。


実は…これがトドメになっちゃってね…


直ぐに起き上がって行動再開したんだけど…

どうしても…どうしても、この状態で動くのはキツくて…ちょっとだけ、お手洗いに行ってきますってその場を離れたの。

最寄りのお手洗いは職員用だったんだけど、かえって助かったわ…。

ここ、ハンドドライヤーがあったの。

…だから、かるく洗って、ハンドドライヤーで乾かして…ホントはいけないのはわかっているの!

わかっているんだけど!

だって、あんな…!

あんな状態じゃ…!

いくらなんでも、つけないで行動なんて出来ないし…

しょうがないでしょ?!

まさか、1日に2度もあんな状態になるなんて…

想像もしてなかったわ。

ああ、違うわね…実際は4度か。

2度目から4度目までが連続だったから。

…一気に溢れちゃったのよね…

あぁ…もう、穴があったら入りたい…

たぶん、気づかれてはいないと思うけど、それでも恥ずかしい事は恥ずかしいのよ。


詳しい事はノーコメント。

言ったでしょ。

私の沽券に関わるのよ。


ま、私の独り言だから、誰が聞いてる訳でもないんだけどね。








椿さん、色々大変な状態だった様です。

ハンドドライヤーのエピソードは、友人女性の実体験だそうで。

しっかり絞っておけば意外と乾くって言ってました。

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[良い点] 達してしまったか。仕方ない!
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