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あわーくらするーむ③

なづなさん、轟沈中。






なづなが机に突っ伏したまま、うーうー唸っている。

満さんも椿さんも困ってるじゃない。

どうしたんだよぅ…。そろそろ教室にも人が増えてきたし一度自分の席に戻った方がいいと思うんだけど…いつまでも人の席占領してるのもまずいだろうし。


「なづな、一度席に戻ろう。満さん、椿さんまた後でね。」

なづなの手を引けば、抵抗しないで素直に立ち上がってついて来る。…のだけど、顔を押さえ俯いたままで全然目を合わせてくれない。

朝の浮ついた感じは随分克服出来ていたと思ったんだけど、またぶり返しちゃったのかなぁ?

ボク?ボクはなんかストンと、落ちるトコに落ちたみたいな感じで、恥ずかしいとか照れ臭いというのは感じていないんだ。

今は、だけど。


「ねぇなづな?どうしたの?朝の、ぶり返しちゃった?」

机に突っ伏たまま、ウーウー唸ってる。

ボクも机に頬をつけて、横から覗き込む様に話しかけたんだけど、こっち向いてくれない。

怒ってる…わけじゃないみたいだけど…。

「せりの、バカ」

あれ!?また言われた!?

「ばか馬鹿バカ莫迦。」

えぇ…。

「…怒ってる?」

「…怒ってない。」

「…恥ずかしかった?」

「…ちょっと。」

いくら今朝の告白があったからといっても、昨日も似たような事をしてるのに、ここまで恥ずかしがるなんて

「椿さん達に言ったの…まずかった?」

「そういう訳じゃ、ない…んだけど… なんかね…ちょっとよくわかんない… 」

わ、わかんないかぁ…。

それはどうすればいいのか、わからないなぁ。

「…せりのバカ… 」

あれぇ?!

「ご、ごめんね?」

「…うぅ〜… 」

今度は突っ伏したまま足をジタバタと動かして悶え始めた。あら可愛い。可愛いけど…

正直どう対処していいのかわからない。

今迄こんなふうに駄々をこねたのはボクの方だった。なづなが周りを困らせた事なんて1〜2度あるかどうか…。凄く珍しい事だと思う。

「ごきげんよう、せりさん。」

菫さんだ。今日も可愛いねぇ。キラキラしてるよ。

「ごきげんよう、菫さん。」

少し怪訝な顔をして

「なづなさん、どうしたの?」

ボクの前の席に鞄を置き、横向きに椅子に腰掛け脚を組んでボクの机に頬杖をつく。一連の動作が流れる様で、菫さんの気さくさが表れているね。

一瞬、全部ぶっちゃけちゃおうかとも考えたんだけど、流石に知り合って1日しか経っていない人に言うような事じゃないよなぁ…。

そんな人じゃないとは思うけど、面白おかしく言いふらされたらショックだし…そんな心配をするくらいなら最初から言わない方が良いよねぇ。

そう考えると…椿さんに言っちゃたのは失敗したかな…?ちょっとはしゃいでしまった感は否めない…。

椿さんはナイショのサインに同意してくれてたし、満さんはよくわかってない風だったから大丈夫だと思うけど。

たぶん。


「…ちょっと、色々あって…よくわからない内にこんな状態に…。」

うわっ。自分で口にしておいてなんだけど、ぜんっぜんわかんないぞ、これ。

「うん。なるほど。わかんない。」

ですよね!

「体調不良とかではないのね?」

「あ、うん。そうだね。」

「そう。それなら一安心だわ。」


「あ、そうそう。せりさん、昨日は突然お邪魔しまして。ご馳走様でした。」

椅子に座ったまま、膝に手をついて頭を下げる。

「いえいえ、お構いもできませんで。」

「あの後すずな姉ちゃん達が帰って来るの結構早かったから、運転荒かったんじゃない?大丈夫だった?」

「全然。安全運転だったわよ。山の方通ったから信号少なかったしね。」

あぁ山の方通ったのか。

隣の市に行く道は何本もあるけれど、山の方の道は脇道や分岐がないので使う人が限られる分空いているんだよね。うちの学院でも通学に使う子がいるけれど、道幅も決して広くない上に、坂が急なので推奨はされていない。


「ね、せりさん。昨日の話で恐縮なんだけど…。」

「うん?」

「執行部、私達も目指して見ようと思うの。」

ボク達がやるならやってみようかみたいな事言ってたけど、関係無く目指す事にしたのか。

「いいね。菫さんならきっと良い会長になるよ。」

「その時は せりさん達も一緒なんだけど?」

あ、ボク達も入る事前提なんですか。


「三年生のお姉さまに聞いたんだけど、元執行部のお姉さま方は下の代に声をかけなかったらしいわ。」

それは、ボク達の代にめぼしい人材が居なかった、という事だろうか?…いないって事はないと思うけど。

やる気のある人が手を挙げればいい、という考えなのかもしれない。

「立候補と指名、推薦が多数いた場合は…選挙なんだっけ?」

「そうね。定員ぴったりでも信任投票はするらしいけどね。去年は信任投票だったはずよ。」

そうだったっけ…?

あんまり興味なかったからよく覚えてないなぁ…

「興味なかったのね。」

菫さんが笑う。ぐ…完全に表情読まれてるなぁ。

「ごきげんよう光さん。」

菫さんがそう言ったと同時に、ボクの肩に手が置かれた。

「ごきげんよう菫さん、せりさん。」

振り返ると、ふわふわの栗色の髪を揺らす美少女が微笑んでいる。おぉ眩しい笑顔。

「ごきげんよう光さん。」

「ねぇ2人とも、あれ、どうしたの?」

光さんが自分の体越しに なづなの方を指差した。

見ればまだ突っ伏したまま、う〜う〜唸ってる。

時たまクネクネしてるのは何なの…?


「さあ?」と菫さんが肩を竦めてボクの方を見たんだけど…どう答えたもんかなぁ…。

「元々の原因はボクなんだけど、今、こうなってる理由は不明です…。」

今朝の告白はなんだかんだで緩和されたし、椿さんとのやり取りだって何時もやってる程度のもので、そんなにダメージを受けるとは思えないんだけど…。

「原因不明の奇病…?」

奇病じゃないと思います。菫さん。


「全校集会の間に復活してくれるといいのだけど。」

光さんの言う通りだ。

推してくれた人がいるんだから、その子達に恥をかかせる様な真似をする訳にはいかない。

「大丈夫…。ちゃんとやるよ。」

なづなが、突っ伏したまま答えた。

「お仕事はちゃんとやるから、心配しないで。」

「そう?無理そうだったら、ちゃんと言ってね?」

「ありがとう、光さん。」

あれ?普通に会話出来てる?

「なづな、もう平気なの?」

ぷい。

顔を逸らされた!?

「なづなさん?」

光さんが 訝しげな表情を浮かべ、なづなの逸らした顔を覗き込むように話しかける。

「あ、うん。なんでもない。」

あれれ?

「あの、なづなさん?」

ぷいっ。

顔を逸らされたっ!

なんで?!ボクが話しかけると顔を逸らすの?

「なづなさん。ちょっと付き合ってもらえるかしら?」

顎に指を当て思案顔だった光さんが、なづなを連れて教室を出て行く。

ボクはと言えば、顔を逸らされたのが地味にショックで…

「顔を見るのがイヤなのね。」

えっ!?

「そんな、この世の終わりみたいな顔しないで。」

菫さんが、困っているんだか笑いを堪えているんだかわからない表情で続ける。

「正しくは、顔を見なければ平静を保てる、かしら?」

ど、どういうことですか?!

「言った通りよ。顔を見る事があの状態になってしまうトリガーなの。」

「見つめたまま何か、凄く恥ずかしいこと言った、とか?」

言った、といえば言ったけど…それ程特別な事は…

あの状態は、椿さん満さんとの会話以降なんだから、原因はその辺にあるはずなんだけど…

菫さんは周囲を見廻して

「何にしてもそろそろ移動しないといけないわね。」

教室に居た子達が、ぞろぞろと廊下に出ていっている

全校集会は校庭で行う為、移動しなければならない。

ボク達も校庭に行かなきゃ。

「そうだね。移動しようか。」

ボクが立ち上がると、菫さんに肩を押さえられ、再び座らせられた。

「せりさん。私達、先に行っているから、後からゆっくり来てね。」

え?

教室を出た菫さんと入れ替わるように、なづなが入ってきた。ボクの席迄来ると立ち止まり、口をを開く。

相変わらず顔を伏せたままで、目を合わせてはくれないけれど。

「せり。さっきは、ごめん…。」

「あ、ううん。大丈夫…。」

俯いてモジモジしてる。

「あの…あのね…。」

「うん。」


「好き、が溢れちゃって顔が見られないのっ!」



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