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ほわいどんちゅーだんす⑳

ぅおおぉ…な、なかなかしんどい。


現在ボク達は午後の教室に混ぜてもらっているのだけれど…これがまた結構なスパルタでしてですね、キツイんですよ。いや体力的にと言うのではなく、なんと言うか精神的に? 『気を遣いつつ、気を遣わない様にしなければならない』…みたいな?

意味がわからないって?

だよねぇ。

ボクも言っててわけがわかんないもん。

まぁどんな練習かざっくり説明すると『相手がどんどん入れ替わっていく』というフォークダンスの様な事をしているんだ。で、なづなとボクはリーダーとパートナーを兼任しているわけ。

相手によって立場を変えているって事ね。

奥さん先生の言っていた『混ざる』が、文字通りに“()()()”事だとは思わなかったから最初は面食らったよ。

でさ、この『入れ替わっていく』っていうのが意外に厄介で、人によってステップも動きもまちまちだし、相手に合わせなくても合わせ過ぎてもいけないっていう…なので気を遣う部分と、遣わない方がいい部分があって、その線引きがまた個人差があるもんだから…え〜と…なんか言っててこんがらがってきた…いやぁ…まぁ、相手が変わるとこれ程までに感覚が変わってしまうのか…と、ちょっと驚きましたよ。

そんな感じ。



「はい!じゃあ小休憩!」


「うはぁ〜… 」


「きっつぅ〜… 」


「はいはい、ちゃんと水分摂ってね。」


奥さん先生の号令で全員が動きを止め、各々壁際に置いてあるドリンクやらタオルやらの所に向かって行く。

なづな は生徒さんの1人と談笑中。ボクは慣れない人と踊った所為でテンパり気味の頭をリフレッシュするべく、ストレッチをしています。

いや、ストレッチというよりヨガって言った方が近いか? ゆっくりと身体を伸ばしながら、深くゆったりした呼吸で気分を落ち着かせる、みたいな?

まぁ落ち着かせるだけなら座禅でもいいんだけれど、ここで座禅組んでたら場違いかなぁってね、思ったものだから。なんとなくね。


とまぁ、そんな事をしている時に生徒さんの1人に話かけられた。


「ねぇねぇ。え、と…せりちゃん…だったよね? 君、あっちの背の高い子と同じ学校なの? 」


話かけてきたのはちょっと小柄なお姉さん。

生徒さんの一人である女性で…年齢は二十歳くらい、かな? 言葉のイントネーションからすると地元の人みたいだが、ちょっと垢抜けた感じの雰囲気から察するに…大学生だろうか?


はい、 せりです。え、と? 背の高い子?

お姉さんが指差している方を見ると、リーダー役の生徒さんからステップを教わっている体操服の子が見える。

あ、なるほど。凛蘭さんの事か。

確かに凛蘭さんって年齢からすれば長身だよね。


「さっき仲良さそうにお喋りしてたから、学校のお友達ななのかなって。」


ええ左様です。同級生でクラスメイトですね。

仲良くしてもらってます。

…ん? 同級生とクラスメイトって同じ意味だっけか? …あれ? まぁいいか、後で調べておこう。うん。


「じゃあ3人とも明之星? 中等部だよね? 一年生? 」


お? おお? 何故その秘密を?!

む? 秘密にはしてなかったっけ。

…あ、いや、じゃなくて。

えっと、これでも一応二年生なのですけれど…よく明之星だと分かりましたね?


「だってあの子の体操着、明之星中等部の学校指定の物でしょう? ここ1〜2年で変わったのなら違うかもだけど。」


なるほど体操着、か。

…お詳しいんですね?

ボクがそう言うと、お姉さんはニコリと笑って自分を指差し「私、卒業生だもん。」と言った。

…あ!お姉様でいらっしゃいましたか!

なるほどなるほど!

自分で着ていたのなら詳しいはずですね!

いやぁ、一瞬『制服マニアなのでは?』とか考えちゃいましたよ。まぁ思ってても決して口には出さないけれど。


「そっか、今の中等部二年の学年カラーそれなんだ。私と同じ……あ、年齢(とし)がバレる。」


あはは、なるほど。

お姉様は少なくとも2周分は歳上(としうえ)って事ですね。

けれど、それくらいじゃあバレて困る様な年齢という訳ではないでしょうに。干支が一周している訳でもないんですから。

ん? 一周していても すずな姉ちゃんよりちょっと上なだけか? なんだ、全然離れてないじゃん。

…って、お姉様?

どうかされました?

あの…ボクの顔、何か付いてますか?

そんなに見つめられると照れちゃいます…。


「あ、ごめんなさい。いや、ほら『お姉様』なんて呼ばれるの久しぶりなものだから、懐かしくって。」


久しぶり、ですか?

あぁ、なるほど。

それはそうかもしれませんね。


「そうよぉ〜。卒業すると途端に交友関係が変わるし、私なんかは帰宅部だったから親しい後輩もあまり居ないし、外の大学とか行ったらお嬢様言葉なんて全然使わないもの。」


お嬢様言葉!

ボク達も大して使っていない気がするけれど…そうか側から見れば明之星の言葉使いって『お嬢様言葉』になるのか。そっかぁ。


「でもそうね、今初めて意識したけど…可愛い子に『お姉様〜』とか言われると、なんていうか、ちょっと、アレよね、うふふ…あぁ、やだ、顔が熱い!」


お嬢様…何か自分の頬を押さえてクネクネしてらっしゃいますけれど…何がどうしたのでしょうか?

そして『アレ』とは…?

…いえ追求する気は毛頭ないのですが。

なんとなく。


お姉様に対して適切な言葉ではないが…仕草が可愛いらしくて微笑ましいなぁ、学院に居ても違和感なさそうだぁ…などと思って眺めていたんだ。

けれどボクの視線に気づいたのかピタリと動きを止めてコホンとひとつ咳払いをし、姿勢を整えてくるりとボクの方へと向き直る。


「…ところで。」


あ。誤魔化した。


「あっちの…なづなちゃん? も明之星なの? 」


え? ええ、そうです。

幼稚舎からずっと一緒に明之星ですよ。

ついでに言えば上の姉もボク達と同じく初等部から、母も留学生という形でしたが明之星高等部卒なんです。

…まぁ実はつい最近まで知らなかったのですけれど…。


「あ、お母さんが外国の…って、お姉さんも? 今いくつなの?高等部? 」


いえ、姉は十程上なので、大学も出て今は明之星の高等部で先生やってます。

忙しそうですが、楽しそうですよ。

…って、パパが外国の人だと思っていたのか。


「へぇ〜…という事は、私が中等部の頃に高等部にいらっしゃったのね。もしかしたらお会いした事があるかもしれないわね。」


たぶん見た事はあると思いますよ。

姉は高等部の時ずっと生徒会に在籍していて、なんか色々やっていたみたいですから。全校集会の時とか朝礼台の脇に立っていたんじゃないでしょうか?

今の生徒会のお姉様方はそうしてらっしゃいますけれど…以前は違ったのかな?


…あれ…?

もしかして、これ…ボク達も立つ事になるんじゃ…?

…ま、まぁ、その時はその時だ…!うん!


「そうなの?!以前も集会の時は前に居たわ。なら見た事あるはず。え、でも、生徒会に金髪のお姉様なんて…いなかったと思うけど…。」


あ、姉はボク達と違って黒髪ですし、今のボク程ではないかもしれませんが結構伸ばしていたと思います。


「あら、髪の色は違うの? 」


はい。姉はパパ…じゃない…父譲りなんです。

あ、あと、その、手前味噌ですけれど、姉は…美人ですよ?


「ふふ、それはそうでしょうね。生徒会メンバーは“容姿で選ばれてる”なんて噂があったもの。ま、実際はみんな優秀だったから単なる噂に過ぎなかったのだけど。」


やっぱり言われてたんだ。

そういえばママも言ってたっけ。


「… それにしても…生徒会…で、ずっといた人…? 黒髪…ロング、かぁ… 」


お姉様、腕組みして本格的に考え込んでいらっしゃっいますね。いや、覚えていなくても無理からぬ事と思いますよ?

…っと、すっかり考え込んじゃって聞こえてませんね。

…うむ、こういうタイプの子身近にもいるよなぁ。


なんかちょっと親近感湧いちゃうね。






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