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閑話 せり 心語り

短編です。









運命…運命の出会い

誰かが言ってたっけ。

ボク達の出会いは運命なんだって。



運命…ううん。奇跡だよね。

これは奇跡。

また会えるなんて。

今度は、ちゃんと姉妹として。


前は姉妹だって言っても、一緒に居た時間なんて無いも同然だったし。顔見たって、ああ似てるな、程度だったもん。

けど、お姉ちゃんは、ずっと、お姉ちゃんでいようとし続けてくれてたんだ。

ボクが、拒否してただけで。

ずっと、ずっと、お姉ちゃんだったんだ。

こっちに来てよ。

一緒にいてほしいよ。

私が守るから。

絶対、絶対、守るから。

そう言って手を伸ばし続けてくれてた。

ホントはね、嬉しかったんだよ?

ボク、捻くれてたから。ニンゲンの感情がよくわかってなかったから…。歪んでたんだ。


お姉ちゃんが前世の事、覚えてなくてよかった。

だってさ、覚えてて、恨まれてたら…憎まれていたら…そう思うと怖くて…。

今はボクが普通の妹だから、お姉ちゃんとして接してくれてるけど…覚えてる事を知られたら、今度は拒否されるかもしれない。そうなったら…どうしよう…怖いよ。

…でも、それでも。

逆に、逆にね?

ほんの少しだけ、前世の事覚えててくれたら良いな、って思ってるんだ。

もし、もしも覚えててくれたら、ちゃんと謝れるのに、って。ちゃんとお礼が言えるのに…って。

あの時、手を取れなくてごめんなさい。名前を呼んでくれたのに返事もしないでごめんなさい。何度も酷い事してごめんなさい。助けてくれたのにお礼も言わないでごめんなさい。素直になれなくてごめんなさい。お姉ちゃんって呼べなくてごめんなさい。…助けられなくて…ごめんなさい…。

名前を呼んでくれてありがとう。妹だって言ってくれてありがとう。笑顔を見せてくれてありがとう。手を伸ばしてくれてありがとう。…助けてくれて…ありがとう…。

ごめんなさい…ありがとう。

また、お姉ちゃんになってくれてありがとう。

お姉ちゃんって呼ばせてくれてありがとう。

愛してくれてありがとう。

愛させてくれてありがとう。

今度はボクが守るよ。

お姉ちゃんを、ボクが。

必ず。




「…せり……」

「せり、大丈夫…?」

んん…?なに?どうしたの…?

まだ薄暗い。夜明け前くらいかな…?

え…と。何がどうなってるのかな?

「せり?どうしたの?怖い夢、見た?」

んと…?ボク、もしかして、うなされてるのかな?

すごく心配そうな声が聞こえる。

どうやらボクは、なづなに抱かれて寝ているらしい。頭の上から声がする。まだ覚醒しない頭で、あぁ…あったかいな、柔らかいな、離れたくないなぁ…なんて考えていると、心配そうな声が降ってきた。

「せり、せり。大丈夫だよ、ここにいるよ。私は…お姉ちゃんはここにいるよ…。」

その言葉で急速に記憶が、感情が、鮮明になる。

あの、恐ろしい、記憶が。

頭に中、いっぱいに…!


なづな、なづな!

お姉ちゃん

お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!

涙が、溢れた。

なづなが、ぎょっとしてボクを抱く腕に力を込めた。

「せり?大丈夫、大丈夫だから。」

お姉ちゃんお姉ちゃんいかないで、ひとりにしないで、おいていかないで…

「何処にもいかないよ。独りになんてしないよ。置いていったりなんてしない、するもんか…。」

お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん

ごめんなさいごめんなさい

「平気だよ、何にも心配ないよ。お姉ちゃんはここにいるよ。ここにいるから。」

これは記憶だ

以前(ぜんせ)のボクの記憶

ボクになった子の記憶

ボクじゃ、ない。

魂は同じだけど、ボクじゃない。

わかってる

わかっているんだ。

わかっているのに…!

ボクをおいて(・・・・・・)逝ってしまった(・・・・・・・)お姉ちゃん…

なづなじゃない。

魂は同じだけど、なづなじゃない。

なづなは、ここにいる

ボクを置いていったりしない。

知っている。

確信出来る。

なのに

なんでっ…!


今度は、次は

お姉ちゃんを守るんだ

ボクがお姉ちゃんを

そう誓ったのに

また守られてる

また“あの子”に

また、なづなに。

守られている事が、悔しくて、情けなくて、それでも嬉しくて。

ボクは、なづなに、しがみついて泣いた。

大丈夫。大丈夫と繰り返すなづなの声が、まるで子守唄の様で…ボクの意識は、再び、ゆっくりと眠りの中に沈んでいった。


…………

どのくらい泣いていたのかな?

結構経っている気もするし、ほんの一瞬だった気もする。

浅い眠りが覚めはじめ

ボクが落ち着いたのを確認して、なづなが起き上がり、横になったままのボクの髪を撫でてくれる。

「大丈夫?うなされてたよ?」

…やっぱりうなされていたんだ。

悲しくて、苦しくてどうしようもない夢。

いや、たぶん…夢じゃなく、以前のボクの記憶が溢れたんだと思う。記憶はいつでも想い出せる。でも記憶に感情は付いてこない。その時の想いは感じ取れるけれど。

それが、夢の中だと感情が先にある。嬉しかった、楽しかった、悲しかった、苦しかった、辛かった。

感情が渦巻く、大きなうねりに押し流されるような…感覚。

その感覚だけが、残る。

なんで、こんな夢を…?

まさか…昨日、菫さん達を送って行くとき、ボクだけ留守番だったから?

おいていかれた様な気がしたから?

独りで家に帰るのが寂しかったから?

そんな事で?

家にはママもパパもいたじゃないか。

普段通りだったじゃないか。

なにが…こんなに不安なんだろ?

情緒不安定…だよね。

まって…

まってよ…

まさか、まだ

夢を見てるんじゃ…?

鈴代せり、が、夢を見てるんじゃなく

鈴代せり、の、夢を、ボクが見てる…とか?


ぞっとした。







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