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はろーまいふれんど⑦

光さん、菫さん

帰途に着きます。






アイツ…!

あの子“にくっ付いていたあの黒髪!

またこんなトコに…!

なんでわざわざ危ないトコ来るんだ!

来んなって言ったのに!

ああ

もう!






「お邪魔しました。」

お構いもしませんで。

「お夕飯食べていけば良いのに。」

「ママ…それじゃ遅くなっちゃうでしょ。」

「泊まっていけば良いのに…。」

それは、そう、かな?…いや駄目でしょ。新学期初日からお泊まりなんて、親御さん心配するに決まってるじゃない。しかも、知り合ったばかりのクラスメイトだよ?旧知の仲の友人宅なら兎も角、そんなポッと出の、顔も知らないような相手の家に大事な娘を預ける訳ないでしょう!?ママなら、そんな事する?!

「娘が選んだ友人よ?親が信じないでどうするの。」

ぅあぁ…!信頼が重い…!

「でもまあ、そうよね。これから長いお付き合いになるのだろうから、また遊びにいらっしゃい。」

「はい。ありがとうございます。」

「またお邪魔させて頂きます。」

菫さんと光さんが揃ってい頭を下げる。

「じゃあママ、駅まで送ってくる。」

「ええ、ちゃんとお送りするのよ。」

「「うん、行ってきます。」」

4人連れ立って駅へと向かう。

家から駅までは徒歩で5分ちょっとなのだけれど、初めてでは迷う可能性も…いや、ないな。家の直ぐ側にある踏切から駅が見えてるもの。これで迷えるのは、漫画レベルの方向音痴だけだろうなぁ。

まぁ、ホントのところ、もうちょっと一緒にいたいなと、思っただけなんだけれど。

なんだろうね?菫さんが“運命の出会い“みたいな事、言ってたから意識しちゃってるのかな?


運命の出会い、か。

なづなと、また会えた事。いや違うな。これは運命というより、奇跡。双子姉妹として生まれたながら一緒に居られなかったボクらが、もう一度双子姉妹になれたんだよ?奇跡だよね。

たとえ、以前ぜんせの記憶が彼女になくても、なづなが“あの子”だって確信出来る。なんていうんだろ、魂が呼び合う、みたいな?そんな感じ。まぁこんな事誰かに話したって、漫画か小説の話だと思われるだろうし、本気で訴えれば訴えるほど、変な子扱いされるのは分かりきっているから…誰にも言わないけどね。

ボクだけが理解っていれば良い事だもん。


おとと、また脱線した。

それで、まぁ、なんとなく別れ難かったので、駅まで案内するよって申し出て送ってる最中。

車の通らない裏道を選んでお散歩がてら道案内。

「ボク達が生まれる前は、この辺全部田んぼだったんだって。冬は町内会で“どんど焼き”ってイベントやってたらしいよ?」

「どんど焼き?」

「どんどん焼き14日、猿の穴は真っ赤っか、って歌うの。」

「なぁに、それ。」

菫さんが可笑しそうに笑う。そりゃ笑うよ、変な歌だもん。

「ええと、門松とか書初めとか正月飾りを燃やして、長い棒の先に、こう、三色のお餅を付けて焼くの。」

「無病息災のおまじないみたいなもの、かな。」

「へぇ…そんな風習があるのね。」

菫さんの家の辺りにもある風習だと思うんだけどな?住宅街だと出来ないから、見た事ないのかな?

「この辺りじゃ、出来なくなっちゃったらしくてね、イベント広場みたいな所で開催してるんだって。」

「ほら、駅北のお社さん。あそこの公園でやってるよ。すっごい盛大なの。来年、行ってみる?」

「あ、行きたい!」

「じゃ、来年の予定、ひとつ予約。」

「ふふ、鬼に笑われそうね。」

確かに。

「こっちって昔は公園だったんだっけ?」

「パパの写真で見た事あるね。こっち側が公園で、向こう側が野球場だったと思う。」

「ボク達が小さい頃は、もう無かったよね?」

「無かったんじゃ…ないかなぁ?覚えてないねぇ。」

「せりさん達はこの道よく通るの?」

「う〜ん…あんまり通らない、かな?」

「通らない、ねぇ。」

「自転車で移動する時は、線路沿いを通っちゃうもんね。」

「そうだね。あっちの方が広いし。」

普段使う道って、意外と固定されるんだよね。此処に行くときはこの道、みたいな。なんとなく決まっちゃうと、なかなか他の道は使わなくならない?なるよね?

あれって何なんだろうね。ジンクスみたいな?

幅2mくらいの用水路に掛かった木の橋を渡り水路沿いの道を進む。

「こんなところに保育園がある…。」

「知らなかった…。」

へぇ…前は無かったよね…

「この水路、柵がないけど子供が落ちたりしないのかしら?」

用水路の幅は2mほど。水深こそ浅いものの流れはそこそこ速い。小さな子だと流されちゃいそうだね…。

「そこは保育士さんの手腕、なんじゃない?」

それは大変そうだなぁ。

北側の道路に出ると駅の南口は目と鼻の先だ。あれ?この角って雑貨屋さんじゃなかったっけ?え?閉店してたの?

徒歩5分圏内がこんなに変わってるなんて…

「菫さん、光さんそこが駅だよ。スクールバスもここから出てるの。」

「ボク達は、途中乗車だけどね。」

「駅、本当に近いのね…。」

「光さんのお家は駅から遠いの?」

「ええ、少し遠いかしら。」

え!?そうなの?じゃ、じゃあ今から電車に乗ったら家に着く頃には暗くなっちゃうんじゃないの?大丈夫なの?自分の家が駅から近いからなんとなく、皆んなもそうなんじゃないかと、勝手に思ってた…。そんなわけないのに。

「菫さんは?」

「うちは15分くらいかしら?」

ええ…それもよろしく無いのでは…?

しまったなぁ…知っていればもう少し早い時間の電車を薦めたのに…。

逡巡してても仕方ない…取り敢えず駅に入るしかないもんね。

プップッ

ん?

プップップー

んん?クラクション?

「すずな姉ちゃん?」

え?あ、ホントだ。あのパステルピンクの軽自動車は間違いなく、すずな姉ちゃんだ。

「なづなー。せりー。おーい。」

なんでこんなところに?

「ちょっと、行ってくる。」と言ってなづなが走り出し姉ちゃんの車に向かってゆく。

何事か話し凄い勢いで戻って来た。

「光さん、菫さん、あのね、すずな姉ちゃんがお家まで送ってくれるって。」

おお!それは良い。友人の姉で高等部の教師が車で送るならば、親御さんも安心してくれるのではなかろうか?

「え、でも…。」

「高等部の先生が送迎してくれるなら、安心じゃない?」

「そうだけど…良いのかしら?」

「問題ないよ。先生からの提案なんだから。行こ。」

2人の手を引き車の側まで寄った時、ボクは大変な事に気付いてしまった…

この車…4人乗りだッ!

全員は行けないじゃないか!

後部のドアを開け2人を放り込んで

「どうしよう?」

「どっちが行く?」

………じゃーんけーん…ホイ!

あいこで、しょ!しょ!しょ!しょ!おわっ!負けた!

くぅ…

「わたし〜。」

なづなが挙手してアピール。

「おっけ。乗りな。せり、悪いけどママに伝えて置いてくれる?ちゃんと送って来るから心配ないって。」「あ…もしかして、ママが送る様にって…?」

「そ。向こうに着く頃暗くなっちゃうだろうから、車で送ってあげてって。私もその方が良いと思う。」

おお、流石、ママ。

「ごめんね。1時間で帰って来るから、良い子にしてな。」

そう言ってボクの頭をくしゃくしゃ撫でて、運転席に乗り込む。

なづなの居る助手席の窓から中を覗き

「2人とも、また明日ね。」

「ええ、また明日。」

「お母様によろしくお伝えください。」

「はい、承りました。」

くすっ、あははは。

「じゃ、なづな、気をつけて行ってらっしゃい。」

「うん。気を付けるのは姉ちゃんだけどね。」

む。そりゃそうだ。

「すずな姉ちゃん、気をつけてね。」

「ん。任せてくれて良いよ〜。」

ピンクの車がロータリーを廻って通りへ出て行く。

ボクも帰って夕飯の準備、手伝おうか。それともお風呂洗う?まだ宿題は無いし…あ、でも来週頭に実力テストやるんじゃなかったっけ?「実力テストは勉強などせず、真に実力で解かねばならぬ。」って言った人がいたとか、いなかったとか。


「ただいま〜。」

「おかえりー。」

キッチンに行くと、ママが料理中。

「あら。今回は、なせりが居残りなのね。」

「うん。姉ちゃんから伝言で、ちゃんと送るので心配ない。それと、1時間でかえる。だって。」

「そう、わかった。じゃあ、せりちょっと手伝って。」

「はい、なんなりと。」

「そこの人参、短冊にしてくれる?」

「了解!」

結局、夕飯の準備を手伝う事になったみたいだ。

すずな姉ちゃんが帰って来るまでしばらくあるし、お手伝いしながら待つ事にしましょう。


早く帰って来ないかな。









次回は

せりの心のお話。

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