すいんぐばい④
加筆予定です。
ロータリーに着くと、部活帰りの生徒が数人、既にバス停に並んでいた。
バスのルートは複数あるので、ルートによって混んでいたりガラガラだったりとまちまちなのだけれど、ボク達が普段使うルートには誰も並んでいない。
何故か?
答えは単純。
たった今、ボク達が到着する寸前に、出発してしまったからだ。
……やってしまった…。
いやまぁ、よしんば間に合っていたとしても、桂ちゃんがまだ合流していないので乗る訳にはいかなかったのだが。
で、だ。
今、行ったバスが戻って来るまで、どれほど甘く見積もっても40分はかかるはず。そうなると待っているよりも移動した方が遥かに早いのだけれど…小梅さんがなぁ…誘っておいて『歩いて行こう』ってのもなぁ…う〜ん…どうしたものか。
「なづなー、せりー!お~い!」
んお?
桂ちゃんが来たようだ。
声の方向を見ると、凄い勢いで走って来る桂ちゃんの姿が目に入った。あ、あぁ、そんな全力ダッシュしなくても、もうバスいないから!ほら、スカート!スカート捲れてるから!後ろからだと丸見えだから!たぶん!
「慌てなくていいって言ったのに… 」
…なるほど、こんな事だろうと予想していたのか。
当の桂ちゃんはといえば、翻るスカートも気に留めず全力疾走してきて、ボク達の目の前でキュッと止まる。
うおぉ、速かったねぇ。でも。でもですよ? スカートで全力疾走は如何なものだろうか? 庭球部のお姉様方に見られていたらお叱言案件ですよ?
「お待たせ!」
ううん、今来たとこ…ってデート前の会話みたいだな!
「もう…慌てなくっていいって言ったでしょう? なんでダッシュして来るかなぁ…あぁほら、タイもちゃんと結んで…上着のファスナー開けっ放しだし…。」
おお? 最近はあまり見なかった なづなのお姉さんムーブ!
あ、 桂ちゃん相手にって事だからね? ボクに対しては毎朝毎晩お姉ちゃんしてるよ? 正直な話あまえっ放しでさ、それじゃ宜しくないとは思うのだが…なかなかねぇ。
「ね、せりさん…。」
はいはい。なんでしょう、小梅さん?
「なづなさんって前からあんな風だったかしら? 」
『あんな風』というとアレですか、世話焼き具合が前以上だって事でしょうか?
それならたぶん、ボクが抜けてるからじゃないかな? ボクの世話を焼いてるうちにそれが当たり前になって、よく一緒に居る桂ちゃんにも“飛び火”したって感じだと思うよ? だから誰にでもあんな感じに接する訳じゃなくて、ごく近しい人にだけ…じゃないかな? クラスメイト相手でもあんな風に世話を焼いてるのって、あまり見た覚えはないもの。
や、スキンシップが激しめなのは昔からだけれどね。
んん? あれ、まてよ…今ほどじゃなかった、かな…?
小梅さんと同じクラスだった頃は…どうだったっけ…初等部の低学年、だよね?
低学年といえばボク自身、以前の記憶の影響が一番出ていた頃で色々奇行が目立っていたはず…そのくらいの時の なづな か…むぅ…奇行に走るボクを心配して付きっきりだった様な気もするし、微妙に距離を取られていた様な気もする。
…あれぇ…? どっちだったかなぁ…?
ん~…ごめん、よく覚えてないなや。
まぁでも、ひとつだけ確かなのは『誰に対してもああでは無い』って事かな。直感的になのか観察によるものなのかは判らないけれども、ちゃんとやる相手を選んでるっぽいね。
例えば、そうだな…桃萌香なんかも若干ズボラな面があるけれど、それには突っ込まないんだ。桃萌香は上から目線で言われると反発するタイプだから、なづなも指摘はするけれど、桂ちゃんにした様な接し方はしないんだよね
逆に、近づいても大丈夫な子には最初から距離が近いよ? ウチのクラスだと光さんとか菫さんがそれに該当するかな。初日からハグしてたし。ボクもしたけれど。
おっと、これだと“世話焼きお姉さん"って話からはズレちゃうか。えっと、ボクや桂ちゃんだけを対象とするのならば、かなり前からあんな風だったと思うよ? ただ、人前ではやってなかったかも知れないね。
「そっかぁ…ふぅん…。なるほど。」
え、なになに?
なんで納得したの?
「え? ああ、えぇと…お姉さん気質なのかな、って思ったの。意外…って言ったら失礼かもしれないけど、見た目とは少し印象が、ね。」
見た目で言ったら“お姉さん”という言葉からはかけ離れてるわなぁ…。
「あ!ごめんなさい!その、悪い意味じゃなくて、その、」
大丈夫大丈夫、わかってるって。




