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すいんぐばい②

「一度、荷物置きに帰るつもりだから“寄り道”ではない、かな? 」


「え、なづなさん()って、そんな近くなの? 」


あれ? 言った事なかったっけ? 近くだよ。明之星(ここ)からだったら徒歩で…かかって30分くらい、かな。桂ちゃんの家もご近所さんだし、似た様なもんだね。

そっか、言った事なかったっけ。

初等部の頃に同じクラスだった事があるといっても、基本的に家の行き来なんてしなかったし、余程アグレッシブな子じゃなければ、学校外で遊ぶ相手は大抵が近所の子だもんね。

斯く言うボク達だって、近所の子と遊ぶのが常だった。

まぁ、近所の子となると別の学校、市立の小学校に通ってる子の方が多かったと言うか…大半がそうだったからなぁ…逆に学校外でしか会えなかったんだけれど。

小梅さんにしたって、もしお互い市立の小学校に通っていたのなら、学区が違うから学校そのものが別だった筈だ。つまりそれだけの距離があるって事で、流石にそれじゃあ放課後遊ぶなんて事も、気軽に家の行き来なんて事だってしないよなぁ。

教えていなくても当然かも知れない。


「そうだったんだ。そういえば学校外で遊んだ事って無かったわね。」


「小梅さんのお家は()()の方だった、よね? 」


「そう、ちょっと西側。」


西側と言えば弓道場があった方だよね。今は無くなっちゃったけれど、昔は すずな姉ちゃんが練習してるとこ見に行ったっけなぁ。まぁ、あの弓道場も随分と古い建物だったし当たり前と言えば当たり前か。


「なるほど駅向こうか…じゃあショッピングモールは帰り道の途中にあるって事だね? 」


「え? ええ、そうね…帰り道といえば帰り道…かしら? 」


いや確かに道順からすれば途中と言えなくもないが、お社の方に行くルートのスクールバスを使うんだったら、ショッピングモールの方は通らないんじゃないかな? ショッピングモールの近くまで行くのはボクらの使う駅南口発着ルートだけだよね?

…今、それは本題じゃないから一旦置いとこう。うん。

で、それを聞いて如何するのかな? なづなさん?

一瞬、考えたポーズを見せて なづなが言ったのは


「ねぇねぇ小梅さん。一緒に行かない? ボウリング。」


だった。

…は? え?

なに、突然?!

何の前触れもなく、いきなり誘うの?!

小梅さんだって突然誘われたら困惑するんじゃないの?!

いやまぁ、桂ちゃんは事後承諾でも『お!小梅さんがいる。なになに一緒に行くの?!」とか言うだけで、普通に受け入れるだろうけれどね?


「え…? ご一緒しても良いの…? 」


…おや?

意外と乗り気?

…ふむ。

ご迷惑でないのならば御一緒します…?

来てくれたならボク的には嬉しいけれど。

なんたって、学校外で小梅さんと遊ぶの初めてだからね。

初体験よ初体験。


「そ、それじゃあ…行く…。」


「よっしゃ。決まり、だね。」


あら、すんなり。

ふむ。では、どうしようか。

一旦ウチに荷物を置いてからとなると、小梅さんを余分に歩かせる事になるし、小梅さんの荷物もウチに置いておくって手もあるが、これも結局は帰りに寄らなければならないので二度手間になるよね?

ボクらも直で行くのが良いかな?


「うん、駅のロータリー迄行っちゃた方が楽だと思う。まぁ荷物は持ったままになるけど。」


そうと決まれば、桂ちゃんに一報しておくか。

えぇと…


現在教室にて待機中。

小梅さんも行く事になったので、その旨了承されたし。

部活終了次第連絡を乞う。


…送信、と。

後は、バスのタイミングだね。

…ん? 何、小梅さん?

鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔して。


「いえ…なんというか、えと、今のメールの文面が…その… 」


「ね、堅いよね。」


そ、そうかな?

簡潔で良いと思うのだけれど…変?

くっくっくと笑う なづなと、苦笑とも困惑ともつかない顔で視線を彷徨わせる小梅さん。


「簡潔だし変というほど変でもないけど、およそ女子中学生の書いた文章には見えない、ねぇ。」


「…堅いって言うか、映画の軍人さんみたいっていうか… 」


ええ?!

そんな事意識してなかった!

え!? そうなの?!

で、でもボク、前からこんな風なメール送ってたけれど、誰も何も言わなかったよ?!


「まぁ基本“連絡メール”の話だけどね。っていうか普段から滅多にメールなんてしないでしょ。私とせり宛のメールなら私が纏めて返信してるじゃない。『せりもOKだって』ってさ。」


む。そう言われれば、その通りですね!

いつもありがとうございます!

でも、そうか、()()のか。

変えた方がいいかなぁ?


「まぁ、無理に普通の文章にしなくたって良いんじゃないかな。私は、()()()()()()好きだよ?」


ええ? ありがとう?

じゃあ変えない。



「……っふ…!」


ん? なになに? どうしたの?!

突然吹き出す様な音が聞こえたので、音の出どころであろう小梅さんを見ると、俯き、口を押さえて肩を震わせていた。

…うむ。これは笑っているね…。

え〜と…今のやり取りで笑う要素…あった?


「ご、ごめんなさい、別に、その、会話が変とか可笑しいって訳じゃなくって…とても、えぇと……そう、可愛らしくて。」


可愛らしい!……可愛らしい?

なづなと二人、顔を見合わせて首を捻る。


「なんて言えばいいのかしら…普段は二人とも“お姉さん”っぽい感じなのに、二人だけの会話だとちゃんと“姉妹”なんだなぁって……あれ? なんかちょっと違うわね…ええと、うぅ〜…上手く言葉に出来ない…。」


うん、よくわからないけれど大丈夫。

取り敢えず普段のボクはお姉さんっぽくて素敵だと。

そういう事だね!


「…たぶん違うよ? 」


やんわりだけれど即否定?!








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