あふたーすくーるあくてぃびてぃ㊽
毎度の事で申し訳ありませんが…
後程、加筆致します。
教室に戻って来て早速送ってもらった写真のチェックを始める事になった。彩葵子さんと皐月さん、紗羅さんに小梅さんはミルクホールへと飲み物の買い出しに行ってしまったので、教室にはボクとなづな、椿さんの3人だけだ。
この作業も始めた当初は椿さんのスマホに直接送ってもらっていたのだけれど、さすがに量が多すぎてね、あっという間にスマホの容量がパンパンになってしまったらしく…今はクラウド? っていうの? そこに送ってもらっている。
詳しくは知らないけれど。
兎も角。一旦そのクラウドとやらに送って、椿さんが自宅のPCで保存、管理しているのだそうだ。ここでも任せっきりで申し訳ない…。
で、今現在の閲覧はスマホやタブレットからではなく、椿さんの私物のノートPⅭから行っているのだけれど、これも最近この作業の為にわざわざ自宅から持って来てくれているんだ。ホント頭が上がらないなぁ…。
「随分と量が増えたねぇ。」
「ですね。皆さんノリノリで撮ってくれるので選び甲斐がありますよ。」
言葉の通り写真の選別が楽しいのだろう、ズラリと並んだ写真を眺めている椿さんはホクホク顔だ。ボクなんかは、これだけの数になると『集めすぎたかなぁ』と思ってしまうタイプなのだけれど。
「今で何枚くらいあるの、かな? 」
「ええと、だいたい1,000枚…ちょっと欠けるくらいです。」
1,000枚!
そりゃあ撮ったもんだなぁ…。
「でも、クラス全員がそれぞれ30枚撮ったらちょうどそのくらいですよ? 極端に多いって程ではないです。」
32人✖️30枚、なるほど確かに。
実際にはボクみたいな“量より質”派も、反対の“数打ちゃ当たる”派もいるはずなので、枚数そのものはあくまで平均なのだが。
「早速みんなが上げてくれた写真を見てみましょうか。」
更新の新しい順に並んでいる写真を順番に開きつつ『U』『B』『A』等のアルファベットを書き込んだり、時折『❇︎』マークを付けたりしている。椿さん的な分類方法なのだろうけれど…どういう意味なんだろ?
非常に聞いてみたい欲求はあるけれど、かなりの速度で作業をしているので実に口を挟み辛い…!聞くのは一段落してからにしよう…。
「…あ。これですね? 小梅さんの。」
手を止めて示された画像は、確かに小梅さん渾身の一枚である。
なづなからも『おぉ… 』と呟きが漏れる。
「…良いですね。クラスアルバムにも使いたいです。」
でしょ〜?
ボクとしてもそれはお薦めなんだ。
偶然撮れたのだと言ってはいたけれど、この表情を切り取ったのは見事だと思うんだよね。一瞬を逃さない感性、観察力、そして何と言っても、あの桃萌香が格好良く写っているという事実!
文句なく推す価値がある写真だ。
「…なかなか失礼だねぇ。」
などと言いながらも、くっくっと笑って『理解らなくもない』と賛同を示してくれる2人。君達も大概じゃないか。
「次のは せりさんですか? …この走ってるの、よく撮れましたねぇ… 」
んっふっふっ。
結構タイミングとか頑張ったんですよぉ。
「その後のも良いですね…あぁでもこれは… 」
「ちょっと『やり終えた』感じになっちゃってる、ね。」
…やっぱりそう見えるよね。
実際に走り終えたところを撮ったからと言うのもあるのだけれど、小梅さんのと比べちゃうと少しアンニュイ過ぎるんだよなぁ。なのでこれはお薦め出来ません。
「次は…ソフトボール部ですね。」
なづな達の撮ったやつか。
そういや自信ありげだったもんな。どれどれ?
「…これは、凄いですね…雑誌に載ってそうだわ…。」
バッターが球を打った瞬間、球を打った直後バッタを手放しながら走り出さんとする瞬間、飛んで来た球を捕球する瞬間、捕球した球を塁へと投げる瞬間、そして投げた瞬間。それらがストップモーションの様な連続した形で収められていた。
え、なにこれ?!
凄い躍動感!
いや、それよりも!どうやって撮ったのこれ!?
ホントにプロの写真みたいじゃないか!
「どうやってって…普通に連写しただけ、だよ?」
連写?
そんな機能付いてないないよね?!
え? あれ?!なづなのスマホには付いてるの?!
でもボクのと同じ機種のはずなのだけれど…あれ? んん?
「同じ機種だよ? せりのだって同じ事は出来るじゃない。」
…はい?
どうやって?
「どうやってもなにも…ほら、こうして… 」
なづなが自分のスマホを取り出してカメラを起動し、トントントンと連続でタップするとパシャパシャパシャと同じリズムでシャッターが切れた。
まさかの手動!…ええぇぇ…そんな単純な事だったの? 連写機能とかじゃなくて?
「あんまり早いと反応しないけど秒間3~4枚はいけると思う、よ? 」
「…知らなかったんですか? 」
…知りませんでした…こんなのマニュアルにかいてあったっけ…?
なんてこった…知っていれば、もう少し楽に撮れたのに…!
「じゃあ、あの走ってる写真とかスタートダッシュの場面て、完全な一発撮りなんですか?!そっちの方が凄いですよ!? 」
いやぁ、それは何度かやり直したからね。
それに今回は桃萌香が被写体だったからスタートのタイミングが一定だったし、然程難しい事じゃなかったよ。
なづなだったら、あっという間に同じ事やって見せると思う。
うぅ… ゴメンよスマホちゃん。ボクの知識が半端な所為で君の性能を引き出してあげられなくて……次があったら…この技術、性能は十全に活用してやらなければなるまい。
「修学旅行に体育祭、文化祭に球技大会林間学校だってあるんです。いくらでも撮る機会はありますよ。」
写真のチェックをしながら、これからの主だった行事を挙げて、その時に腕を奮って下さいと言う椿さん。
ふむ。確かに。
ならば、その時にはバンバン撮りまくろう。
我がスマホちゃんの性能を見せつけてやろうじゃないか。
「…そんな暇が有れば良いねぇ。」
なんでよ?!っていうかどういう意味?!
「私達、執行部に入るんだよ? 一番下っ端なんだから、やる事も覚える事もいっぱいあると思うんだよね。イベント事で悠長に写真撮っている時間…あるかな? 」
「ああ、優先順位からすれば写真は後回しになりますよね。寧ろ他の人に任せなきゃですねぇ、きっと。」
む…そうか、そっちで忙しくなる可能性が高いのか。流石に全く時間が取れないなどという事はないだろうが、何かと便利に使われて走り回る事になる…気がする。
そうなると写真撮ってる暇は無いかもなぁ…。
ごめんよスマホちゃん、君の能力を見せつけてやる機会が減ってしまいそうだ。
「…うん。スナップとポートレートのバランスも良いですし、目玉になりそうな写真も結構集まりましたね。後は動画との兼ね合いを見ながら…盛ってみましょうか。」
盛る…?
「汗をキラキラさせたり色味を変えたり、って感じ? 」
「そうですそうです。なづなさん達のダンスもちょっと加工したので、合わせる意味でも派手にならない程度に、ですね。」
あのダンスも…加工、した…だと?
そりゃね、使用するのは了承しましたよ。しましたけれどね? あの恥ずかしいのを更に目立つ様にしたというのですか?!まだ見てないからどうなっているのかは判りませんが…ホントにやったんですか?
「ちょっと手を加えただけですけど、見栄えは随分変わりますよ。」
あゝホントにやったんですね。そしてやはりアレは使うんですね。…わかってます。理解ってはいるんです。でも、でもですね、『やっぱりこれ使わなくて良いや』なんて事もワンチャンあるんじゃないかなぁなんて思ってたんですよ。
…たった今、その小さな希望は儚く消えましたが。
ポンとボクの肩に手が置かれ、なんかもンの凄く複雑な表情で なづながふるふると首を振った。
ああ、うん…あきらめろ、と。




