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ごきげんよう、お姉さま⑩

チーズケーキが食べたい。








…あれ?

…ああ、また挑戦槽の中か

隣の子

いなくなっちゃたな…

あっちの子

なんか犬みたいになってる

向こうの子は

凄く大きくなってるね

みんな変わっちゃてるなぁ

ボクはどうなんだろう?

ああ…

また…

眠く…









「さて、着くまで…着いてからでもいいけど、詳しく聞かせて貰いましょうか。」

うんうん、と同意を示す蓮お姉さまと、まるで獲物を前に愉悦の表情を浮かべる捕食者の様な顔をした花乃お姉さまに肩を抱かれ、なづなとボクは滝の様な冷汗を流していた。


「いえ、あの、今も2人部屋で、同じベッドで寝ている、という事をお話ししただけで…」

花乃お姉さまは、にたぁ…と笑い

「それだけじゃない、でしょう?」

ひぃ

「む、昔、私達がひとりで寝るのを嫌がっていた事とか、を、ですね…」

「ダメよ。それじゃあ。」

蓮お姉さま?!

「一言一句、細大漏らさず、皆にした話を私達にもするのよ。」

「そのとおり。あの場に居た子達だけで独占して、私達が蚊帳の外だなんて、看過出来ない由々しき事態よ。」

そこまで?!

「私の可愛いあなた達の事を知らないのは最早、罪!」

罪!?

「お姉さまと呼ばれた以上、妹達の全てを知るのは姉としての義務!」

義務ではないと思います!

「まぁ花乃の冗談は置いといて。」

冗談だったんですか?!

愛の告白(・・・・)、というのを聞いてみたいわ。」

「嫌、かしら?」

「いや、ではないです…けど。」

「一度お話ししていますし、知られる事自体は良いのですが…。」

「「同じ話をもう一度すのが恥ずかしいんですっ!」」

「それは我慢なさい。」

ばっっさりだ!

一言の下に斬り捨てられたよ?!

うう、これは必ず話させるという強い意志すら感じるよ…

「…わかりました。」


学院の門を潜り坂を降る。

ボク達の通うこの学校は、市内を一望出来る山の上にある。山全体が学院の敷地と言ってもいいくらいの広さがあるので、何故正門があんな山の上の方にあるのか疑問なのだけれど。今、ボク達が歩いているこの道も学院の専用道路みたいなものだ。

その長い坂を降りながらさっきの話を繰り返す。

完全に同じとはいえないけれど、ほぼ再現出来たと思う。

「…で、最後にこう、額を合わせたところで、お姉さま方があの状態に…。」

「なるほど…。」

蓮お姉さまは納得したといった表情で頷いていたのだけれど、花乃お姉さまは少し難しい顔をしていた。

あれ…想像していた反応と違う…。

もっとはしゃいで笑い飛ばしてくれるものとばかり…

お気に召さなかったろうか。いや、話せと言われた事を話しただけなので、お気に召そうが召すまいが、そこはボクの所為じゃないですよね…

「花乃お姉さま…?」

問いかけるなづなの声にフッと表情を緩めると、肩に回していた手で頭を抱き込み頬を当てる。

「そう…。素敵な告白だわ。」

「なづなちゃんは幸せね。こんなに思われて。でも…」

花乃お姉さまは、そこで一回区切って遠くを見る様に

「姉離れしなきゃいけない時が来たら、大変ね、きっと。」

「…まだ、ずっと先の話だろうけどね。」

そう言ってボク達の頭をくしゃくしゃと撫で回した。

お姉さまにもそんな人がいたのだろうか?

それとも別の誰かの話…?

気になるけれど、これは聞いちゃいけない話みたい…

そんな気がする。


坂の下の交差点まであと少し。角には目的地のケーキ屋さんが見える。ここも結構前からあるよね。

「蓮お姉さま。」

なづなが蓮お姉さまの袖を摘んで声を掛けている。

「なぁに?なづなちゃん。」

「あの、昨日、統括生徒会の話が出たと思うのですが…。」

「生徒会の話…ええ、したわね。」

「それで、少々伺いたかったのですが…。」

「ええ、どうぞ。」

「お姉さまは生徒会に所属してらっしゃるのですか?」

「…え、え〜と、誤解があると思うので、先に訂正したいのだけど、良いかしら?」

「?…はい。お願いします。」

「まず、今の質問。生徒会に所属しているか?の、答えはYES。良い?」

「はい。」

「で、ここから先に誤解、というか勘違いしてる事があると思うんだけど、なづなちゃんとせりちゃんも、所属しているのよ。」

「「え?!」」

思わず声が出た。

「花乃も前の子達も、あなた達のお友達も、生徒会所属よ。」

え?どういう…あ!

「そう。中等部の生徒は全員、中等部生徒会員。」

「勿論、高等部も同じよ。」

なんとなんと、初めて知りました!

「では、生徒会というのは…」

「生徒会長とか会計とかの子達を指して言っているのなら、生徒会役員、若しくは生徒会幹部、ね。」

そうだったのか…!

「で、その幹部達の事を生徒会執行部、と呼ぶのよ。」

へぇーーーーー!

「耳馴染みはないと思うけど、生徒議会というのもあるわね。」

花乃お姉さまが補足を入れてくれた。

「執行部と各部長職の子達が参加する予算委員会が、それにあたるのよ。」

「例えば、図書委員とか体育委員とかの委員会は、全部執行部の下部組織ね。」

なるほど〜。

「で、最初の執行部の話に戻るとね、実は執行部の人員は立候補又は推薦、指名なのよ。」

「立候補多数の場合は選挙になるけど、大抵は前任者の指名で決まるわ。」

「有望な子がいれば、推薦して執行部で育てるのよ。次代の幹部としてね。」

はぁ〜…そういうシステムだったんですね。

…ん?待って、昨日不穏な事言ってませんでしたか?

「あら?その顔は…もしかして気づいた?」

お姉さま達が、口が耳まで裂けてるんじゃないかという笑顔を見せて恐ろしい言葉を放つ

「私達は連名で、鈴代なづな、せり姉妹を推薦しておいたわ。」

嘘でしょ!?

「い、つ、そんな事を…。」

「鍵を返却した時に。書面は昨夜製作したの。」

「蓮が作った書類に私が賛同者として署名した。」

他にも何人か賛同者がいるわよ、と前歩くお姉さま方を指さす。

動きが早い!

「会長になれとは言わないから安心なさい。執行部に入りなさいと言ってるだけ。」

「先程は手元に置いておきたいって仰って下さったじゃないですか…!」

「花乃が、ね。」

「そ。私は手元に置いておきたかった。けど…。」

…けど?

「来年、執行部で指揮を取り、私達を使いこなしてくれる。そんな未来も素敵だと思わない?」

来年…現執行部が引退した後の話…。

早ければ今年11月以降の話…。

…期待がッ重いっ!!


「こんにちはー。」

店内に入ると、花乃お姉さまが店員さんと話して予約の確認を行い、席へと案内されたのだけれど、20人近い人数がいるのでほぼ満席、貸切状態だ。

各々、好きなケーキと飲み物を注文して席に着く。

ボク達の前には花乃お姉さまと蓮お姉さま。横には菫さん、その向こうに光さんと並んでいる。

「菫ちゃんと光ちゃん、よね。今日は手伝ってくれてありがとう。」

「少しでもお役に立てたなら、よかったです。」

「2人は双子ちゃんのクラスメイトだと聞いたのだけど、いつ頃知り合ったの?」

「初めてお話ししたのは、今朝、です。」

そういえばそうだった。なんか違和感なく話せたから知り合ったばかりという感覚が薄い。

「そうなの?随分と馴染んでいるから旧知なのかと思っていたわ。」

「それはきっと、菫さんのおかげ、ですね。」

「なづなさん?」

「彼女の言葉には、垣根がないというか…構えたところがなくて話し易かったんです。」

「あと、美少女だったので。」

「せりさんっ?!」

ひとつも嘘は言ってない。

「光さんも話し易いのですけど…話し易いというより聞き上手なの、かな?」

「うん。それと美少女だったので。」

「せりさん…。」

嘘は言ってない。

「なるほど。理解したわ。」

花乃お姉さまが納得の表情で大きく頷く。わかって頂けましたか。流石ですお姉さま。

「西洋人形と日本人形が並んでいるのね。」

そっちでしたか。

「確かに。こうして並んでいると壮観だわ。」

「クラス編成した人は、よく解っている様ね。」

なにか予想と少しズレた納得の仕方をされてしまったけれど、まぁいいか…いいかなぁ?


全員がケーキセットを注文したのだけれど、ケーキはみんなバラバラだった。

ボクは抹茶ショコラ、なづなはミックスベリーのレアチーズケーキ。菫さんは抹茶のベイクドチーズケーキ、光さんのは…なんだあれ…ぶどうの…よくわからないケーキ。

あ、チーズケーキ美味しそう。あっちのお姉さまのモンブランもいいなぁ。

蓮お姉さまはパウンドケーキのクリーム添え、花乃お姉さまは…アイスケーキ!?そんなのあったんだ。

どれも、美味しそう…


「みんな、揃ったかしら?」

「では、みんな。二日間お疲れ様。またイベントの時は声をかけるから、是非手伝って頂戴。」



「「乾杯!」」












花乃お姉さまは2人の危うさに気づいているのでしょう。それでも直接手を出さず、見守る事を選んだ様です。


花乃さんが来年の話をしていました。

…何話分書いたら、そこまで辿り着けますかね?

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