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あふたーすくーるあくてぃびてぃ㉖

「あゝいたいた。桂ちゃんと皐月さん。」


わいわいと談笑する集団の側に、体操服姿の桂ちゃんと皐月さんが何やら手元を覗き込んでいるのが見えた。

察するに桂ちゃんを撮った写真のチェックといったところだろうか。

あぁやっぱり桂ちゃんは、制服よりも活動的な服装の方がしっくりくるなぁ。腰に手を当てラケットを肩に担いだポーズも如何にもテニスプレイヤーって感じでサマになっているし、白い体操服に小麦色の肌がよく映えているね。

いや制服が似合わないとか、そういうんじゃなくてね?

ただ凄く馴染みがあるって話。

それにしても…


「こうして見ると桂ちゃん真っ黒だねぇ。皐月さんと並ぶとオセロみたいだ。」


「それ、きっと私達が並んでも同じ事言われると思う。 」


確かにね。でもボクらで挟んでも一向に白くならない…って、そもそも日焼けしていない桂ちゃんを見た事あったっけ? 色白の桂ちゃんなんて全然記憶にないんだけれど? いつもクッキリとした日焼けの境目を見ては『外れそう… 』とか考えてた気がする。


「…言われてみれば…いや、でも初等部の頃は焼けてなかったんじゃない? あれ? まって、卒業式の時は焼けてたような…… 」


う〜む、なんか気になっちゃったぞ? 家に帰ったらアルバム引っ張り出してみよう。



「おーい。なづなぁ!せりー!」


おぉっとと。他所っこと考えてたら桂ちゃんから声がかかった。

物凄い勢いで手を振ってるし、声は大きいし。はいはい直ぐ行きますよ。本当にもう、ほんの10数メートルなんだから、そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえるって。元気だいっぱいだなぁ。


「皐月さんお待たせ、桂ちゃんも。どんな塩梅? 」


「なづなさん、せりさん、お疲れ様。えっとね… 」


2人から受けた説明に依ると、部活動中の全体の撮影はNG、動画も避けてほしい、ただし撮影時間は休憩の間の10分間で、部所属の生徒だけならば撮ってもOK。つまり桂ちゃんだけであればテニスウエア姿だろうが何だろうがテニスコートで撮り放題って事らしい。時間制限付きだけれど。

何故全体がNGなのかというと、ボク達のクラス中等部2年1組が『庭球(テニス)部の部活紹介をしている 』という誤解を避ける為なのだとか。

クラスという単位が“特定の部活に肩入れしている”と見られない様にという配慮な訳だ。

新歓祭にはアンケートや投票があるので、例えばの話、参加クラスの多くがが庭球(テニス)部を紹介した場合、庭球(テニス)部の部活紹介が大して面白くなかったとしても庭球部という存在は印象に残る事になる。

印象に残った残ったらアンケートや人気投票に影響が出てしまう可能性があるので、執行部からお叱りを受ける。

そうすると今度は予算委員会の時に不利な条件になってしまうから極力それは避けたい、と。

なるほど、なるほど。

よくまあ考えているなぁ。

前にそれで揉めた事があるのかもしれないね。


「で、写真は? 撮ったんでしょう? 」


ふっふっふ、と、それはもう自慢気な顔で笑う桂ちゃんと、それを見てクスクスと笑う皐月さん。


「ええ、間島さん、格好良く撮れましたよ。」


「いやぁ、みんなが四方八方からカメラで私一人を狙っているなんてね、もう本っ当!スタープレイヤーになった気分だったよ!いつも以上にビシッと決まった気がするね!」


ほほう?

それは是非見せて貰わねばなるまい。どれどれ?


「ふふん、目にして驚き、私の格好良さに慄く(おののく)が良いわ!さあ皐月さん!見せて差し上げて!」


いや感心する事はあっても慄く(おののく)事は無いでしょ。

なに言ってんの。まぁそれだけよく撮れているのだろうけれど。


「はい、これです。」


苦笑しつつ差し出されたスマホの画面に映る桂ちゃんの姿は、なるほど恰好良かった。連射で撮られたであろう連続の写真の数々は躍動感あふれるもので、スポーツ雑誌に掲載されている写真だと言われても信じてしまいそうな程だ。

汗が散ってキラキラしていたり、ボールを追う真剣な眼だったり…さすが言うだけの事はある。


「どぉよ。」


桂ちゃん渾身の()()()


「ま、みんながカッコよく撮ってくれたってだけなんだけどさ。」


お、おお? 突然謙虚だね?

けれど…これはなかなか面白い。真横からと少し下から、撮っている方向は同じなのにアングルがちょっと違うだけでこんなに変わって見えるのか。

これはどれを使うか悩むなぁ。一応ひとりにつき2~3枚は使おうって話になっているけれど、写真が良すぎて選ぶのに悩む事になるとは。

優秀なカメラマンが隠れていたんだねぇ。プロみたいだ。


「いやでも、これは…うん恰好良い。」


「でしょ~。皐月さん達が凄く褒めてくれるからさ、ノっちゃってね。普段より真面目にラケット振ったくらいだよ。」


軽くサーブの様にラケットを振ると『ヒュッ!』っと鋭い風切り音を立てる。

おお!前に聞いた時は『ブン』とか『ブォン』みたいな鈍い音だったのに、いつの間にかこんなに鋭い音に変わってるなんて…!随分と練習したんだろうなぁ。選手に選ばれたっていうのも、その努力をお姉さま方が見ていてくれたからなんだろうね。


「桂ちゃん振りが鋭くなってるね。これは来年、羽子板で遊べないフラグ…?」


「あっはっは、なづなに言われるとちょっと自信持っちゃうなぁ。けど羽子板はどうだろうね? なづな達の動体視力を上回れる気がしないんだけど…今年だって墨だらけにされたもんねぇ。あ、でも来年はお返しに落書きしまくってあげるってのも良いね!そうだ、そうしよう、うん。」


うおぉい?!なんか仕返し宣言されたのだけれど!?

待って待って? 今年の正月だって結構バッテン描かれたじゃん!? かなり容赦なかったと記憶しているよ!?


「いやぁ、せりと良い勝負になるなんて少ないからね。ヤれる時にヤっとかないと負けっ放しになっちゃうじゃん? 」


ヤれる時にって、物騒な事言わないでほしいな?!


「ええ? 桂ちゃんの方が強いゲームとか沢山あるじゃない。」


そうそう、ゲーム系は桂ちゃん得意だもんね。

サッカーとかのゲームは兎も角、車のレースや戦闘機の操縦系なんかじゃ殆ど勝負にならないもんなぁ。ボク、ああいうのやると身体ごと動いちゃってさ、自分で言うのもなんだけれど騒がしい事この上ないんだよね。桂ちゃんからは『セルフ体感ゲーマー』とか言われたっけ。しかも弱い。


「あのねぇ、そんなの数える程度でしょうが。」


そんな心底あきれた様な顔をされても…


「まぁいいわ!なづなと せりに『恰好いい』って言わせたんだもん。満足満足。」


『にしし』と白い歯を見せて笑う。

焼けた肌に光る汗、輝くような笑顔。


桂ちゃんは小さい頃から恰好いいよ。






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