あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑲
なづなが少し丁寧なお辞儀をして数歩下がってボクの隣に立つ。
え?カーテシーじゃないのかって?
うん、今はトレーを持っているからね。
和風の、ちゃんとしたお辞儀だよ。
で、お姉さま方の反応はといえば…
あぁ固まってる固まってる。
ひさしぶりだなぁ、こういう反応。
小さい頃は結構あったんだよ。なづなかボクの片方とだけ面識があって、後で二人揃って対面するとびっくりされる、みたいな。 なづなとボクを間違える人もいたなぁ。なづなが髪を切ってからは間違えられる事は少なくなってたかもだけれど、帽子被ってたりするとね、なかなか見分けがつかなかったらしいんだ。瞳の色が左右逆だから慣れれば簡単なんだけれど。
あ。でも、そういえば桂ちゃんはボク達の事、ちゃんと見分けてたっけなぁ。一度も間違えた事無かった気がする。
…いや、一度くらいはある、かな?
…まぁいいや。
でね、やっぱりほら、幼稚舎や初等部からエスカレーター式で一緒の子も多いし、中等部に上がってから一年経ってるし? 良くも悪くも目立つ容姿なので、ちょっと噂になったりね? した訳ですよ。
まぁそんな理由で、そうそう驚かれたりはしなくなくなってたんだけれど…
久々に驚かれてますね。
オキクお姉さまはポカーンとしてらっしゃるし、マユミお姉さまはボク達を見比べて『え? どっちがどっち? 』ってナレーションが入りそうな表情だ。うん、気持ちはわからんでもないデス。
同じ顔が並んでいるのを初めて見ればね。
でも実際は一卵性双生児なんてそれ程珍しいものじゃないんだよ? 割合で言うと0.3%くらいだけれど、千件の出産の内四組が一卵性だっていうんだから、学校内の1学年にひと組はいるくらいの計算なんだ。
ね? 少なくはないでしょ?
うん。また脱線したね。
「ちょ…ちょっと蓬!なづなちゃん帰ったって… 」
「言ってないわよ?」
「ここに居たって過去形で言ってたじゃない!」
「実際その時点でここに居なかったのだから間違ってないわよね? 」
隣には居たけどね、と蓬お姉さまが奥の部屋を指差してニコニコと微笑む。
これはアレですかね。ボク達を使って、ちょっとした悪戯を仕掛けたってところでしょうか。
「最初っから教えてくれても良かったんじゃない? なづなちゃんを隠したりしないでさぁ。」
「あら。なづなちゃんが奥に居たのは偶然よ?」
…偶然でしたっけ?
ボクが奥に引っ込んだのは偶然かもですけれど、なづなは待っててと言われたのでは…? あ、いや、元々は偶然だな、なづなが自分で行ったんだから。ただ『待ってて』と言われてこちらに来なかっただけだ。うん、間違ってない……間違って…ない、かなぁ…?
「そもそもね、蓬が…… 」
「あら、そんな事を言ったらお菊だって……」
蓬お姉さまとオキクお姉さまが楽しくケンカしているのを眺めていると、クイッと袖を引かれる感触があった。当然、引いたのは なづなだけれど。
なにか話したい事でもあるのかな? とはいえ普通に会話するわけにもいかないので、かろうじて聞こえるであろうくらいの小声で応えてみる。
「…どしたの?」
「…楽しそうだなぁと思って。」
え? いや、うん? 楽しそうだっていうのは同意だけれど…それだけ?
「なんかさ、すご~く仲が良さそうじゃない? 」
確かにね。やりとりに遠慮がないというのはお互いの信頼があってこそだもの。これだけ言い合っていても険悪にならないのは、ちゃんとお互いを理解しているから…なのだろう。
まぁ要するに。
戯れてるだけだ。
まさに“楽しくケンカしている”、と。
…ボク達はあまり言い合いとかしないからなぁ。
議論はしても、思考の方向性が似てるからヒートアップする事がほとんどないしねぇ。いやまあ意見の相違が全然ない訳じゃないし、完全に思考が一致している訳でもないから、稀にだが口論もある。が、あっても大抵はホンっとにくだらない事なんだよ。
例えば?
…例えば、そうだなぁ…
ギラファノコギリとパラワンオオヒラのどっちが強いか、とか…? そんな感じのどうでもいい事かなぁ…?
…いやだから、くだらない事だって言ったでしょ?!
それよりまた思考が脇道に逸れてるよ!
戻せ戻せ。
「…ああいうの、良い、よね。」
なんか随分と…しみじみ言うね? そんなに羨む程じゃない、というか…ボク達にだって親しい友人がいない訳じゃないでしょうに。
あ、そうか、なづなは“家族”とか“仲間”っていうのを殊更に大事に思う傾向があるから、その琴線に触れたのかな?
なづなが家族や友達を大事にするっていうのも、おそらくは以前の世界での想いや経験が魂に刻まれている…みたいな理由なのだと思う。
…でもなぁ、以前での なづなの仲間の事、ボク全然知らないんだよなぁ…あぁ、“あいつ”だけは知ってるか。あのお節介娘。
今のボクの感覚からすると『頑張り屋の超いい子』で『子煩悩なお姉ちゃん』なんだけれど…なんか以前のボクは苦手に思ってたんだよなぁ。
“あいつ”だったら なづなの仲間の事色々知ってたんだろうなぁ。
ボクの知らない なづなの事も。
…む。ちょっと、じぇらしー。
って、ぅおい!また盛大に脱線してるじゃん!
もういい加減自重しない?!この癖…!
いや落ち着け、まだ何秒も経ってないんだから普通に受け答えすれば良い。脱線した思考は一旦放棄だ。
「なづなは”仲間“とかに弱いもんねぇ。」
「…うん。弱いねぇ。」
如何にも微笑ましいものを見る様な目で、お姉さま方の口論を見つめる なづな。本人は“何故弱いのか"って理由は理解ってないんだろうなぁ。わからなくてイイんだけどさ。
なづな にとっては、もしかすると辛い記憶かもしれないからね。
…いやしかし、蓬お姉さまとオキクお姉さまの言い合いも、なかなか収まりませんね? っていうか話題? 内容? が、どんどん関係ない方へシフトしちゃってるんですけど大丈夫なんですか? 終わります? これ?
P.M.15:10
短いですが、一旦終わります。
もう、ほんと…情けない…
自分の文書力の無さが恨めしい。




