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はろーまいふれんど③

菫さん、光さんと交流は続きます。







久しぶりに“あの子”と遊んでる

やっぱりいい

凄くいい

反撃はあんまりして来ないけど

ボクの攻撃、全部受け止めたりいなしたり

凄い凄い

ボク、コンクリート砕けるんだよ?

鉄骨だってへし折れる

本気でやれば戦車だって壊せる

それを受け止めるんだよ

凄いよね

もっともっともっと

遊ぼう!






「明日は全校集会という名の始業式と。」

「HRで各学級委員の、選定。」

「…で、終わりなのよね。」

「休み明けでいきなり授業に入られても、気持ちがついていかないもの。良い事だわ。」

現在、教室にて作戦会議中。

最初のHRは出欠確認と簡単な今後の予定の発表、担任、副担任の先生が自己紹介した程度で終わった。新しい教科書等の配布は明日のHRで行うらしい。去年の学級委員長経験者と他数名がその手伝いに指名されている。

…ボク達もだ。

ぐおぉ、委員長なんてやった事ないのに、何故選ばれた?!クラス代表とかは正直柄じゃないので、毎回お断りしていた。やりたい人だっているだろうし、向いてる人だっている。そういう人にお任せすれば良いじゃない。そう思わない?

なのに何故か毎回名前が上がる。やめて、ホントに。

光さんは委員長経験者という事で、御指名だし。

菫さんは他薦。ボク達も1年生の時のクラスメイトの推薦で決まった。

…1年生ン時のクラスメイトの子達のせいだったか!もちろんその中には桂ちゃんもいる。

おンのれぇ。覚えてろよぉ。ボクはたぶん忘れるからなぁ覚えててくれよぉ。


「全校集会が終わったら、職員棟に行って教科書受け取って教室まで運べばいいんでしょう?」

「そうね。台車があるから、それほど大変ではないはずよ。階段以外は。」

「階段は上がらなきゃいけないけれど、そこは仕方ないから人海戦術で。」

「まぁ6人いるのだから、どうにかなるでしょう。」

ボク達4人とあと2人が明日の輸送用人員だ。

他の2人は、同じクラスになった事がない子なので、残念ながらよく知らない。見た感じだと真面目そうな子達だったけど、あんなか弱い女の子に、重い物を持たせるのはちょっと可哀想だよなぁ…光さんと菫さんに至っては、ダンボール箱持って階段を上るの無理そうな見た目だし。

階段はボクが運べばいいかな。トレーニングがてら。

「せり。」

「うん?」

「自分が運べばいいやとか考えてる、でしょ。」

げ。

「ダメだよ。みんなでやるの。」

「はい、わかってます。」叱られちゃった、しょぼん。

「せりさん、そんな事考えてたの?」

「ちょっとだけね。」

「いくらなんでも、ひとりに押し付けたり出来ないわよ。みんなでやりましょ。」

皆んなで協力してやる。それが大前提なんだから、一人で苦労するのはダメだと。理解はしてるんだけどね。

けど一つ反論させて貰うならば、なづなの方が、人の為に頑張っちゃうタイプなんだよね。だから、指摘されたら反省も自制もするけど納得はしてない。自分だってそうじゃん!って。言わないけど。

そうなったら黙って手伝う。なづなだって菫さん達が居なかったら、口に出さずボクを手伝うに決まってる。

菫さんは、文句言いながら手伝ってくれるタイプだな、きっと。だから言ったのに、とか、ひと(こと)言ってくれればいいのに、とか。ぷりぷり怒りながら。

光さんも一人でやろうとする子な気がする。黙々とやってそう。ちょっと気を付けて見といた方が良いかもしれない。

また脱線した。

ま、そんなこんなで明日も用事が出来ましたとさ。


「なづな、そろそろ時間?」

「ん。そうだね。」

体育館に行って後片付けのお手伝いをしなければ。

「2人共、何か用事があるの?」

「うん。進級式の後片付け。お姉さま方と約束したから、行かないと。」

「え、後片付けを手伝うの?」

「昨日も設営手伝ってたからね。片付けも、だよ。」

「実行委員所属しているの…?」

実行委員…!よくぞ2日に渡り、やってくれた喃。

「違うよ?個人的に頼まれ事をして、そのままお手伝いしたの。」

「そ。看板書いたり、貼り紙書いたりね。」

「「えっ?!」」

わぁびっくりした。

「な、何?どうしたの?」

「看板に貼り紙って、毛筆の?!」

「会場入口とか案内とか、進行表とかの?」

「進行表は鈴代先生だけど、ね。」

「看板と貼り紙はボクらだよ。」

ホントに?嘘でしょ?せりさんが書いたの!?って大興奮してますけど、なんなんですか。失礼な。あと、書いたのはボクじゃなく、ボク達ね。

「い、一応ホントだけど、なんで?」

「今朝、あなたたちと会う前に、光さんと話していたの。」

「誰が書いたんだろうって。」

へえ〜。毛筆…書道に興味があるのかな?

「うちの祖父が毛筆をやっていて、よく目にするのだけど…あの書は素晴らしかったわ。」

まさかのべた褒め!照れる。

「すずな姉ちゃ…じゃない、鈴代先生は師範資格がどうのって言ってたし指導者レベルではあるからね。」

「え、待って、鈴代、え。もしかして姉妹なの!?」

「うん。鈴代すずなは私達の姉、だよ。」

「全然気付かなかった…。」

それはそうでしょう。歳だって(とお)も離れてるし髪の色なんてほとんど真逆だもの。

「毛筆は鈴代先生に教わったの?」

「最初は書道教室に通ってた、よね?」

「途中から姉ちゃんに教わったんだっけ?」

あれ?すずな姉ちゃんに教わってたのっていつだ?

一昨年くらいは週一で教室行ってた様な気がするけど…

…あ、時間!

「なづな、行かないと。ごめん、二人とも。」

「あ、そうよね。引き留めてごめんなさい。」

じゃあ、また明日…と言おうとしたところで光さんが

「あの、私達もご一緒していいかしら?」

うん?お手伝いを手伝ってくれるという事でしょうか?それなら断る理由がないのですけれど…。

「あ、え〜と、後片付けに同行したい、という事で良いのかな?」

「ええ、もう一度あの毛筆を見たいの。」

なづなと顔を見合わせる。ふむ。

「後片付けを手伝ってくれるなら…」

「人手は大いに越した事はないし。」

いいんじゃないかな?

「ありがとう。お手伝いさせてもらうわ。」


「じゃあ行こうか。あ、体育館シューズ持ってる?」

「今日は持って来ていないわ…」

「私も…」

まぁでもフロアシート剥がす迄は問題ないし、剥がしちゃったらロビーの作業でもいいのか。うん。

「わかった。まぁ大丈夫。たぶん。」

お手伝い増員GET!


体育館までの道中で話を聞いたのだけれど、光さんのご実家がお寺さんで、住職のお爺さまがお寺で書道教室をやっている、と。書道家としても、そこそこ有名らしい。存じ上げなくて申し訳ございません。

達筆と言われる字はたくさん見てきたけれど、ボク達や姉ちゃんの字は並外れて美しかった、とか言われてもう、恐縮するやら、照れ臭くさいやら、もう、ホントにもう。

そりゃあ褒められるのは嬉しいけれども、褒められ過ぎるのもムズムズする。なづななんて、恥ずかし過ぎてさっきから動きが可笑しい。クネクネしてる。

「光さんは書道、するの?」

「嗜む程度よ。」

ははぁ、かなり上手いと見た。

「菫さんは?」

「私はからっきし。硬筆なら少々。」

なるほど、毛筆は自信ないけど字は綺麗、と。

「でも、見るのは好きなの。」

「彼女、和風の物が好きなのよ。神社仏閣、仏像彫刻、書もそのひとつ、というわけ。」

おぉ和風好き。良いね、和装似合いそうだもんね。

「光さんと菫さんを着物で並べてみたい、な。」

「わかる。想像するだけで麗しい。」

「えぇ、そうかしら?」

「今度着てみる?」

その際は是非お誘い下さい。カメラ持参で伺います。


体育館ロビーに入ると、まだ数人のお姉さまがいるだけだった。少し早かったかな?

「あら、双子ちゃん、いらっしゃい。早いわね。」

「「ごきげんよう、お姉さま」」

軽くカーテシー、お約束ですね。

きゃあと小さく黄色い声が上がる。何故か、ボク達の後ろからも。

ちらっと見たら、光さんと菫さんが口元に手を当てて目を丸くしている。え〜…何その反応。

「花乃さんも、もう直ぐに来るはずよ。少し待っていてね。」

「「承知しました。」」

そうだ、二人を紹介しておかなきゃ。

「お姉さま、こちらのお二人がお手伝いを申し出て下さいましたので、お連れしました。」

「そう、とても助かるわ。よろしくね。」

「「はい。よろしくお願い致します。」」

まだ、しばらくは始まらないらしく、お姉さま方もお喋りに興じている。今なら進行表とか見てても平気なんじゃないかな?

「光さん、進行表とか、見に行く?」

「あ。そうね、見たいわ!」

小走りで進行表の前に行き、溜め息をひとつ。

うっとりしてる。そんなに好きなんだ。

なかなかにニッチな子だなぁ。

菫さんは菫さんで、ボク達が書いた立看板の方を見ている。そんなに真剣に見られるとなんか恥ずかしい気がしてくる。いや、見られて恥ずかしい訳はないんだけど、なんだこの感情。

「やっぱり良いわ…。のびのびしてて、晴れ晴れ!って感じ。…こっちのは少し暗い?沈んだ感じだけど、これはこれで重みがあって良いわね…。」

わかるのか…驚きだ。正直見損なっていた。

「菫さん、すごいね。ちゃんと読み取ってる。」

「うん。ボクも驚いてる。」

ひとしきり堪能したのであろう光さんがボク達の側までやってきて、うっとりと上気した顔で

「あぁ、素敵だわ…。」

喜んで頂けたようでなによりです。


そろそろ始まってもいい頃合いなんだけれど、お姉さまはまだいらっしゃらない。こんなにのんびりで良いのかなぁ?

「花乃お姉さま、こないね?」

「だね。どうしたんだろう?」

「せりさん、なづなさん。」

「どしたの?菫さん?」

話しかけて来たは良いが、何か逡巡している様だ。

聞きにくい事なのだろうか

「えと、さっきの、お姉さま方にご挨拶したじゃない?」

はいはい、しましたね。

「あの時、お辞儀したじゃない?」

「カーテシーの事?」

そう、それ!って一気に食いついてきた。

「とても可愛かったの。」

「う、うん?」

「噂に違わぬ愛らしさだったわ。」

「あ、ありがとう?」

「それで思ったのだけれど、」

「うん。」

「2人ともバレエ経験者なのかしら?」

え?なんでそうなる?

「ううん、バレエはやった事、ないよ。」

「日舞はちょっとかじったけどね。」

「そうなの。何かバレエの挨拶の様だったものだから。もしかして、と思って。」

あぁ!菫さんが言ってるのって、レヴェランスの事か。なるほど、そう見えるね。

「うんとね、バレエの挨拶はレヴェランスって言うんだけど、ボク達がやってるのはカーテシーっていうのね」

「で、ボクらのは、かなりライトな、会釈みたいなお辞儀に相当するんだ。」

「バレエだと、子供がやる一番簡単なレヴェランス

がカーテシーだと思えば良いよ。」


「大人用のは、もっとずっと優雅、だよ。」

「…普通の挨拶としては大袈裟過ぎるけどね。」

へぇ、ちゃんと違いがあるのねと感心しているが、

日本のお辞儀の方が、はるかに複雑だと思うよ。


そんな事を話していると、ようやく花乃お姉さまがやって来た。


「はーい、みんなちゅうもーく」

皆が集まり、お姉さまに注目する。

「みんなお疲れ様。遅れてごめんなさい。」

「えー実は先生方から、アーチの件でのお詫びと慰労を兼ねて、本日、作業終了後、坂の下のケーキ屋さんで打ち上げを行おうという提案がありました。」

おぉ…ざわざわ…

「私はご馳走になる、と、即答したのだけど、みんな参加でOKね?」

否はいない。洒落ではなく。

みんなを見回して、うん、と頷く。

「よろしい、では終了後のケーキ目指して、おっ始めましょう!」

号令と共に皆が散って行く。予めおおよその担当が決まっている様だ。

だが!始める前に確認しておかなければならない事があるのだ!

「あの、花乃お姉さま。」

「やぁ双子ちゃん。どしたの?」

「実は、お手伝いしたいという方をお連れしたのですけれど…」

「あら、それは助かるわね。」

「終了後はどうしましょうか…?」

「え?連れて行けば良いじゃない。」

事もなげに、そんな。

「それで、よろしいのでしたら…」

「問題なし!」

なんというか…男前だなぁ。

「じゃあ…」

グッと腕まくりのポーズを取って。

「さあ、やるわよ、私の可愛い貴女たち!

さっさと終わらせてケーキパーティーと洒落込むわよ!」


「「はい!お姉さま!」」









ようやく片付けが始まりました。


菫さん、光さんは、なかなか良い感性をお持ちのようです。

書から人柄や感情を掬い取ることの出来る人なんですね。

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