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あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑬

「私なんて“執行部”って呼び方を知ったの高等部に入ってからよ?」


あ、それわかります!ですよね!

ボク達も“生徒会”という組織があるものだと思ってましたから。明之星(ウチ)の学生全員が“生徒会”に所属しているなんて露ほども考えていませんでしたから、初めて聞いた時は驚きましたよ。


「中等部の頃なんて、委員会活動とか部活には()()()()()()()興味なかったのよ。なのに高等部に入った途端、執行部に引っ張り込まれて。私、あまり優秀ではないから、もう本当に、いろんな事を覚えるの大変だったわ… 」


「蓬お姉さまでも大変だったのですか!?」


「それはもう。自慢じゃないけれど私、成績は完全に平均だったのよ。200人中100位、みたいな。」


へぇ、真ん中くらいだったのですね。

……まって。…『()()()』…?


「だった、というと、上がったのですね。」


「ええ。執行部に入ってからジリジリ上がったの。書類整理や収支報告などで文字や数字に強くなったみたいでね。まぁ自分でもそこそこ勉強はしたのだけれど。」


ははぁ、あれかな?全然外国語が出来なくても、外国で生活していれば、いつの間にか会話出来る様になっているっていう…ふぅむ、ボクもそういう環境に身を置けば…発音良くなるかな?


「…一年生の学年末試験の頃には学年10位くらいになってたわ。長期のお休みの間なんて『受験生かっ!』て思うくらいお姉さまに(しご)かれたんだから。…あれで成績上がらない訳ないのよ…。」


おぉう…蓬お姉さま、あまり思い出したくなさそうですね…?

そんな()()()()する様な思い出なのですか…?

何かこう、蓬お姉さまの方から秋の空っ風が吹いてきている、そんな気がするんですが…

すると蓬お姉さまが、少し俯き加減に、座った眼で、口の端を持ち上げて


「あのやり方なら、私が教えても学年最下位からでも50位くらいまで押し上げるくらい出来るわよ?」


ヒュ〜…っと薄寒(うすらさむ)い風が吹いた様に感じたのだけれど?!

やめて、こわいコワイ怖い…!


あ〜…いえそのぉ…遠慮させて頂きたく存じます。

ええと…おそらく成績に関しては、あまり問題はないと思いますので、謹んでご辞退申し上げます…はい。


「ふふ、そうね。2人ともとても優秀だと聞いているわ。」


学校の授業なら、まぁ、充分ついて行けるれど…それを以て優秀と言われると…ちょっとくすぐったいですねぇ。

ほら、勉強出来ないけれど社交性が高くて魅力的の人とか、交渉事が上手な人とか?何か突出して秀でている人などは、まさに“優秀”と言ってもいいわけじゃないですか?

執行部に求められているのって、どちらかというと()()()()()()なのでは、と、思ったりするのですけれど。


「そうよぉ。寧ろそっちの方が重要かもしれないわね。私は『貴女は人当たりも良いし場が和むから良い』って言われてスカウトされたのよ。」


…凄い理由だ!?


「それで入った後に『役員は成績でも生徒の手本と成らなければいけない』って言われて…まぁ成績を上げさせられたのね。」


なるほどね。

役員ともなると、他者の手本とならなければならぬ、と。

だから、行儀にも気を回せという事なんですね。

セリナ様にOFF時にもしっかりとした立ち居振舞いが出来る様になさいって言ってたのは、そういう理由かぁ…。


「そう。その点でも貴女達は“(すこぶ)る付きで優秀”なのだそうだし、実際先日の、せりさんの振る舞いを見ればね、流石と言わざるを得ないわ。」


「さすが…ですか?」


それはボクも思った。

何が『さすが』なのだろうか?

蓬お姉さまは、僅かに『しまった』という顔をした後、少しだけ間を置いて続けた。


「…ええ。少し失礼な言い方なのだけれど…『鈴代先生の妹だけの事はある』という意味よ。」


いえ別に失礼なんて事はないと思いますが…

実際、妹である事は事実なわけで、妹として恥ずかしくない振る舞いが出来ていたのなら(むし)ろ喜ばしい事なのだけれど…?

はて?


「母と姉の真似をしているだけなので…あまり褒められると恐縮してしまいますね。」


「まぁ。お母様の?」


「はい、父が『お母さんの所作は美しい』と、よく言っていたので小さい頃から見様見真似で。」


そうなのです。ママの所作は美しいんです。

まぁ、何をやらせても出来ちゃう女性(ひと)なんで、真似しようにも真似しきれないんだけれども。それでもムキになって真似して、『なんか違う』ってなって、出来ないのが悔しくて、またムキになって…

ん?

待てよ?

おぉ…?これって『ドリル』というやつじゃないですか?

理想系を思い浮かべて繰り返す事によって、少しずつ理想に近付ける練習方法。書き取りや武術の形稽古なんかと同じ反復練習。

そっか、ボク達って小さな頃から自然と反復練習してたのか。

ふむふむ。これも『三つ子の魂』かな?


「思い通りに真似出来ないのが悔しくて、朝から晩まで母や姉に付いて回っていたんです。それがいつしかお手伝いになり、癖になり…という感じなのですが…所作も気配りもまだまだ遠く及びません。お褒め頂いた妹の行動も、ほとんど無意識だと思いますよ。」


…っと、少し思考に沈んでたら会話が進んでいる。

いけない、いけない。

で、なんだって?ボクがセリナ様の手伝いをした行動が?無意識の行為だと?何て事を言うんですかお姉様。

その通りです。

いや、だってあの時は、ただ“お手伝い”する事しか頭に無かったんだもん。後輩であるボクがさ、お姉さま方のお手伝いするなんて当たり前の行為だと思うんだけど如何に?

…そのせいで“教育係”が如何のって妙な方向に話が進んでしまったのだけれど、それは結果であって……いや、やめよう。

脳内で言い訳しても虚しいだけだし、今は関係ないし。


「意識しないであの気遣いが出来ているのは凄いわね。ホント、セリナにも見習ってほしいわ… 」


うぐぉ…今、考えるのやめようって思ったばかりの事が…!










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