あふたーすくーるあくてぃびてぃ⑩
一旦、一部のみ投稿いたします。
後程、加筆予定。
「ここから先は私にとって未知の領域だからね。」
ちゃんとエスコートしてよねと、なづなが笑う。
あぁそうだよね、職員棟の上階なんて委員会活動している生徒でもなければ、ほとんど来る事なんてないもんね。ボクだって一回来ただけだし。
まぁ、それはさておき。
取り敢えずなりきりロールプレイで、一時的とはいえ平常心を保ててる今がチャンスだ。いい加減動かないと、またネガティブな思考が頭の中でグルグルしちゃいそうだもん、ちょっとだけでも持ち直している今のうちに行動してしまった方が良い。ボクはボクの役目を果たす、それ以外の事は全部後回し。
ボクの役目は“なづなのエスコート“なんだから、今はそれだけ…それだけを考えるんだ。今のボクは強い。誰よりも強い。何者が相手であろうと、必ず なづなを護ってみせる。
後で思い出して凹んでも、運動して汗かいて思いっきり疲れて、ご飯食べてついでに なづなに甘やかしてもらって寝る!たぶん起きたら回復してるから…今だけ頑張れボク。成りきるんだ。
「きっちりエスコートしますとも。任せて。」
「よろしく私の騎士様。ん?王子様…王女様?」
普段なら舞い上がってテンション上がりそうなセリフだけれど、今はロールプレイで余裕ない所為か…ちょっと小っ恥ずかしい。いや嬉しいけれども。
また今度、改めて言って?
「面倒臭くなってるなぁ。」
まぁ私もヒトの事言えた義理じゃないかって なづなは笑ってるけれど、側から見たらさ、しっかり気持ちを整理して立て直している様に見えるんだから…スゴイよなぁ流石だなぁと思ちゃうんだよね。
まぁ、それは置いといて。
差し出された手を取って、階段を二段、三段と上り、なづなより上の段に位置を変え目線を合わせる様に軽く膝をおとす。
「では、まいりましょうか、お姉様…じゃなくて姫様?」
「そこは疑問形にしないでよう。」
あ、ごめん。
いやでも、ほら、今いっぱいいっぱいだからさ?
その辺りは一寸大目に見て欲しいなぁ、なんて思ったりするのだけれど?
「ん、わかった。じゃあ行こう?」
手を引いて階段を上って生徒会室のある最上階へゆく。
時間的な問題なのかそれとも時期的な問題なのかは判らないけれど、全く人の気配が無いというか、ホントに誰もいない。
まぁ今はロールプレイ中なので他の事に構っている余裕はないからね、誰にも会わないっていうのはある意味有り難いのだけれど。
あれ?そういえば前回来た時も誰にも会わなかった様な?扉の前でお会いした蓮お姉さまは…生徒会室に御用事だったのだから“他の委員会の人”って訳じゃないし…。
ふむ。
生徒会執行部の関係者しかここまで上がってこないって事はないんだろうけれど…もし普段から人がいないとなると、それはそれで寂しい気もするなぁ。
…それもボク達が出入りする様になれば判る事か。
そうこうしている内に生徒会室のある階に着いてしまった…。
ボクは二回目なので驚きはしないのだけれど…やっぱりこの扉、威圧感あるよねぇ。
「いやぁ〜…えらく立派だねぇ。」
だよねぇ。
ボクも見た時は『これ絶対社長室だろ』って思ったくらいにはビックリしたもん。
で、だ。
ここまで来ておいて今更なのだけれども。
…お姉さま方、いらっしゃるだろうか?
SHR終わってすこ時間は経っているけれど、土曜日だし…もしかすると今日は集まっていないとか…あるかもしれない。いやいや、居なければ週明け改めて来れば良いだけだ。
週明けなら精神状態もずっとまともになっているはずだし。
うん、それはそれで問題無し。
よし。
じゃあ行きます。
ボクは軽く息を吐いて、目の前の扉をノックする。
コンコン。
…ふむ。返事が無い。
前と同じで、奥にいらっしゃるから聞こえていない、とかかな?取り敢えずもう一度。
…うん。反応無し。
仕方ない、開いているのなら入ってしまおう。
この大きな扉は内開きなので必然、ボクが先に入室して扉を押さえる形になる。実はこれボクの拘りポイントなんだけれど、『ボクが扉を開けたのならば先に入るべきはボク自身』という考えを持っているんだ。
レディーファーストなら、せりを先に通すのが筋じゃないかって思うでしょう?
そうなんだよ。まさにそこが拘っているポイントでね。
正直、ボクはその“レディーファースト”というのが好きになれなくてさ。なんでかって?うんとね、元々のレディーファーストってさ、女性を『囮にして室内の安全を確認する』だったり『衛生状態の悪い建物側を歩かせて自身は比較的衛生的な車道側を歩く』だったり…まぁ自分本位の安全策って意味合いがあったらしいんだよね。勿論、今現在のこの世界では、そんな事をする意味もないし、そんなつもりでやってる人もいないのだろうけれど。
でもね、一度知ってしまうとさ、言葉と意味が結び付いちゃって嫌悪感が先に立っちゃうんだよ。自分の身くらい自分で守れ、人を盾にするんじゃない!ってね。
エスコートする相手はボクが守るべき対象な訳で、その相手を罠が有るかもしれない場所へ先に通すなんて、お話にならないと思わない?
思うでしょ?
…いや、確かに現代に於いてその心配は杞憂以前の問題だとは思うのだけれども……だから拘りなんだって。
おっとと、また盛大に脱線したな。
まぁいつもの事だから。ごめん、慣れてね。
…む、こんな事を考えられるくらいには精神が持ち直しているのか?それなら良い傾向かもしれないな。うん。
「…はぇ〜、これはスゴイねぇ。」
部屋に入って来た なづながちょっと間の抜けた様な声を漏らした。どうやら内装や調度品を見て感嘆の声らしい。
わかるわかる。ボクもそんな感じだったもん。
「なづな。こっちこっち。」
室内の調度品に釘付けになっている なづなに手招きして、奥の扉を示す。
「校内にこんな豪華な応接間があるなんて…。」
ホントにねぇ。
まぁ理事長先生のお下がりらしいから、豪華なのも当然と言えば当然なのかもしれないけれど。しかし、改めて見ても良いねぇ、渋いねぇ。
さて、と。素敵なアンティークを見て少ぉしだけど気分がアガったところで、いよいよ麗しのお姉さま方とご対面ですよ。お姉様、覚悟はよろしゅう御座いますね?
「うん。大丈夫。」
うわ、本当に平気そうだ。
隣で見てても普段とほとんど変わり無く見える。
凄いな並列思考。
では…
コンコン
「はい、どうぞ。開いていますよ。」
あ。やっぱり中にいらっしゃる様ですね。
蓮お姉さまが言っていた通り、この扉が閉まっていると外の扉をノックしても聞こえないのだろうな。って言うか、先日指摘されたばかりなのに何故閉めているんだろうか?
「失礼します。」
扉を開き奥の室内へと入ると、最も奥の席で何かの書類と格闘している方が見えた。先日も同じ席でふわふわと微笑んでいた、不思議な雰囲気の持ち主。高等部生徒会役員の蓬お姉さまだ。
どうやら今日はお一人の様だが…居てくれて良かった。
「はい、いらっしゃい…あら?」
書類から顔を上げてボク達を見るや、目を丸くして固まった。
え、なに?なんか変だった?
身体検査の時と違って、ちゃんと制服は着てるよね?!
「…あらあら、まあまあ。」
なんか、うちのママみたいな事を呟きながら席を立ち、ボク達から視線を外す事なく歩み寄って来る。
「貴女が鈴代なづなさん…で、よかったのよね?」
「はい。左様です蓬お姉さま。鈴代せりの双子の姉、なづなと申します。」
「あら、私の名前… 」
「先日、昇降口でお会いした時に。」
「あぁ、そうだったわね。覚えていてくれて嬉しいわ。」
蓬お姉さまが少し悪戯っぽくふわふわと微笑むと、やはり周囲で温かな風が吹いている様な感覚を覚える。どうやら なづなも同じ様に感じているらしい。ちょっとビックリ顔だ。何度経験してもおもしろいなぁ、これ。
「それにしても… 」
ボク達の顔をマジマジと見比べ、ほぅ、と息を吐いて「本当にそっくりなのねぇ。」と呟く。
あはは、よく言われます。
なんてったって一卵性双生児ですから。
更新日を一回飛ばしてしまいました…
ので、せめて前回分を書き足しておこうという…実に情けない方法を取りました。申し分け次第も御座いませぬ。
次回は…次回こそは…。
2月11日A.M0:40
整合性を取る為、内容を微修正いたしました。




