あくしでんと⑤
…やっと着替え終わりました。
ええお陰様で、ちゃんと制服に着替える事が出来ましたよ。
どうやって教室の戻ったのかって?あぁ、それなら桂ちゃんと光さんが保健室までボク達の制服を持って来てくれたんだ。
いや、ホント助かりました。
あのままだったら、またあの格好で教室まで戻らなくちゃいけないとこだったからね。衆人環視の中をあの格好で歩いて戻る度胸は…さすがに有りませんので。
取り敢えず、持ってきてもらった制服を着て教室まで戻りまして、戻った後、改めてスカーフ着けたりスパッツ脱いだりしまして、キチンと身嗜みを整え終わったのが今しがた…という訳です。
椿さんは、しばらく保健室で安静にしていろとのお達しで、凛蘭さんは眠っちゃっているので保健室で預かるという事で、置いてきちゃいました。本当なら誰かついていてあげた方が良いのだろうけれど、一応半ドンとはいえ授業もあるからね。
「…まったく…あんな格好で飛び出して行くなんて…。」
いやホント仰る通りで…
自分でも下着姿だって事を失念していたので、返す言葉もございません。
…と、まぁ…教室に戻るなり彩葵子さんに呆れ混じりのお小言を賜りまして、恐縮しきりです。ボク達が2人を抱えて出て行く時に『せめて服を着てから』と声を掛けたらしいのだけれど、全く聞かずに飛び出して行っちゃったのだとか。
全然気付いてませんでしたね。
確かにあの時は、ちょっと慌てていたので周りの声は耳に入っていなかった気がする。もう少し落ち着いた行動を心がけなきゃいけないねぇ…反省反省。
…まぁ、クラスメイト達にはお姫様抱っこの方が概ね好評だった様で『カッコよかった』とか『王子様みたい』とかって言ってくれたけれど…そんな良いものじゃなかったと思うなぁ。
いっつも最後が締まらなくってさ。尻もちついたり、膝ついちゃったり、まぁカッコよくはないよね。どうせならもっとこう…颯爽とというか、ビシッと決めたいよね?あ、そうそう、司お姉さまみたいな感じで。
…あれ?『司お姉さまと同じタイプ』って言われた事があったっけな?あれは誰に言われたんだっけか…?すっごい褒め言葉な感じだけれど今なら『あんなにカッコよくないです』って反論出来そうな気がするね。
「…まぁそれでも、ああいう時に迷わず動けるのは、なづなさん達の美点よね。ホント……素敵よ。」
え…ええ?!ありがとう?
素敵…素敵だって。
つい今しがた『カッコ良くない』と自戒したばかりなのに、こんな事を言われたら勘違いしちゃいそうというか…変な自信がついちゃいそうで困るなぁ。…お褒めの言葉は有り難く頂戴するけれど。え?だって嬉しいものは嬉しいからね。褒められたんだもん、そこは喜んでおくよ。
あ、あと、コレはどうでもいいけれど…なんか今の彩葵子さん、言い方が微妙にツンデレっぽくて可愛かったな?彩葵子さん本人は決して『ツン』じゃないんだけれどね。
余談ではあるのだけれど、この出来事のおかげでこのあと暫く、というか結構後々まで一部の生徒の間で『王子様』だの『騎士様』だのって呼ばれる事になってしまったという…まぁそっちはそのうちね。




