えぴそーどおぶおーでぃなりー⑪
…は?!
いえ、あの、なんと仰いましたか?!
百合沢セリナの?
教育係?え?誰が?!
「そう。とびきり優秀な子が執行部に入ってくれるんですもの、ついでにウチの困った子の教育もお願いしたいの。」
あれれ?!た、確かにね?『折角お口添え頂いたのだから期待には応えたい、執行部に所属するのも吝かではない、寧ろ望むところだ。』なんて思ってはいましたよ?思ってはいましたけれども!
なんですか『百合沢セリナの教育係』って?!
次期役員候補というのはまだしも『教育係』って!
しかもお姉さまの!
いくらなんでも想定外にも程がありませんか?!
ちょっとセリナ様、何とか言って下さ…なんでそんなに落ち着いてお茶飲んでるんですか!ぎゃーす!!
「パニクってるパニクってる。」
口をパクパクさせながらオロオロしていたボクを見て、花乃お姉さまが実に楽しそうに笑った。
ま、まさか嵌められた?!誘導された?!
「それはない。」
「いくらなんでも陰謀論過ぎる。」
「天才軍師も真っ青ね。」
あ、左様で…。
じゃ、じゃあ花乃お姉さまと蓬お姉さまが頷き合っていたのは?
「ああ。それは、せりさんの意見が話を切り出しやすいところに勝手に転がっていったからよ。セっちゃんの擁護に走ったでしょう?」
墓穴!なんという事でしょう!自分で掘った落とし穴は予想以上に大きかった様です!
「で?受けてくれるんでしょう?」
「そうよね。執行部入りはしてくれるつもりだった訳だし、ひとつ仕事が増えただけだもの。問題ないわよね?」
「双子ちゃんにしか頼めないのよ。」
ぐぬぬっ…!
流石は執行部のお姉さま方…押しが強い…!
っていうか、蓮お姉さままで…!
け、けれど、セリナ様はどうなんです!?
後輩に叱られるとか嫌じゃないんですか?!
「なんで?」
なんで、って…
「そうね…例えば、自分より所作の綺麗な小学生が居たとして、それを真似たりコツを教えて貰ったりするの、イヤ?」
いえ…真似ますし聞きますね…
「でしょう?そういう事。それに… 」
それに?
「せりと なづなと一緒に仕事出来るんだもの。楽しそうじゃない?そこが一番大事。それ以外はオマケよ。オマケ。」
くっ…!そんな風に言われたら嬉しくなっちゃうじゃないですか…じゃなくて!え〜と…、セリナ様はボク達の事をあまりご存知ないはずなのに、なんでそんな確信を持った様な言い方が出来るんですか?そこが不思議なんですけれど。
「勘よ!」
ふふん!と胸を張り、一層のドヤ顔を見せるセリナ様。
か…勘かぁ。勘はなぁ…侮れないからなぁ…。
これだけ求められているのだから、申し出は受けざるを得ない…受けるべきだろう。まぁ、もとより断るという選択肢はボクの中には無かったのだから、経緯はどうであれ『お受けします。』と答えるのだけれど。
勿体つけ過ぎ?違うよぅ。こちらが切り出す前にガンガン来られて二の足踏んじゃっただけだもん。
っていうか、ご挨拶に来るのは所属申請をした後で なづなと一緒に来るつもりだったのだけれど…まぁいいか。
…いいのか?
あ。セリナ様の件は…なづなに なんと説明したものか…
「では、せりさんは正式に生徒会執行部所属という事でよろしいですね?異議のある者は?」
蓬お姉さまの言葉に他のお姉さま方は黙って頷いたり、にこにこ笑ったり。誰一人として異議を唱える人はいなかった。…が、此処にいらっしゃらない方達の意見は聞かなくて良いのでしょうか?
「それなら大丈夫、執行部メンバーの意見は賛成で固まってるから。今のは花乃と蓮、それから せりさんと彩葵子さんに聞かせる為の…いわばパフォーマンスよ。」
内外に周知する儀式の様なものか。なるほどねぇ。
時にお姉さま方。
正式に所属するにあたって、お聞きしておきたい事があるのですが…よろしいでしょうか?
「ええ、どうぞ。」
その、私達はいつから正所属となるのでしょうか?
それから、なづな…姉は皆様と面識がないので、所属前に一度ご挨拶に伺おうと思っていたのですが…どうしましょう…。
「え?本人の意思確認が取れた時点で所属しているわよ?」
はい?
花乃お姉さま、さらっと凄い事言いませんでした?
「双子ちゃんさっき異議ださなかったでしょ?本人の意思確認も済んでるじゃない。まぁ、書類は作成する必要があるけれど、絶対必要なものじゃないから後回しでも問題ないのよ。」
「そうね。私が学院側に『鈴代姉妹を正式採用しました』って言えば済む話よ。」
蓬お姉さま曰く、正所属と言っても11月にある生徒会選挙、若しくは信任投票で選出される迄は准役員…幹部候補生なのだそうだ。防大とか士官学校の学生みたいな感じかな。
え?わかりづらい?そ、そう?
ま…まぁそんな感じで、今現在は割と緩い立ち位置なのだとか。そのかわり仕事が出来なければ、先代からの指名を受けられず、それでも尚執行部に居たいのなら、信任ではなく立候補して選挙で勝たなければならなくなる。しかし、正所属にも関わらず指名されなかったとなれば、ほとんど当選の目はないらしい。
…そんなシステムだったんだ。初めて知ったよ。
去年は全然興味なかったからなぁ…むぅ。
しかし、なるほど。執行部は代々優秀な人が揃っているのも頷けるね。
「あと、なづなさんを連れて来るのなら放課後が良いわね。大体ここに居るから。」
「教室に来てくれても良いわよ。」
その方が対外的なアピールも出来るから一石二鳥ではないか、だそうです。ふむふむ。なかなか注目を浴びそうですね。
…だから、苦手なんですってば!
「そうねぇ…来週なら全員揃うかしら?」
「クラスで新歓祭出るって誰か言ってなかったっけ?」
ボク達もです。
その為に講堂の使用許可取りに来たんですから。
なのでボク達の方は実力テストの後は無理として、火曜日以降なら…いつでもいいのか…な?まぁ一回だけじゃなく何度来ても良いのだから、都度々々来ればその内お姉さま方全員にご挨拶出来るでしょう。
あ、でも、なづなは教室巡りしようって言い出すかも…。その時は仕方ない…周りの視線を我慢しましょう…。
13:25
本日はここ迄と致します
毎回、ご迷惑をおかけします。
次回は12/5 AM01:00の予定です。




