第1話 楓さん、ゲームの世界に立つ
特にやりたいことがない・・・わけでもなかったと思う。
小さいころは女の子お馴染みのお花屋さんとかやってみたいなあとか漠然とした夢は持ってた・・・と思う。
しかし中学生になるとあれもしたいなあとか、これもしたいなあといろいろなことを思い始めると
「これ、本当に自分がやりたいことなの?」
と自分自身とセッションし始めるようになってきた。
高校生にもなると
「いやーこれやってみたいけどまあなんかできないっしょ?」
とか思うように、なかなか自分のやりたいことが見えなくなってきた。
そのまま卒業して、会社に就職するわけでもなく進学するわけでもなくそのままフリーターになっていた。
まあそれからはコンビニだのコールセンターのバイトだのやって今は新聞配達のバイトで生活している。
意外と新聞のバイトは稼げたりする。部数にもよるが私は結構配るので20万以上は貰ってる。
贅沢しなければ一人生活は結構余裕だったり。
とまあこんな感じで私、彼杵楓はふらふらーっと生きてます。
今日も配達終わって家に帰るとさっとシャワーを浴び髪をかわかしてPC前に座る。
「さて、今日のアニメチェックしつつソシャゲ周回かなあ」
と、いつものルーティンに入る。我ながらいつも通り過ぎて少し乾いた笑いが出た。
その時、あることを思い出した。
「そういえばこの前告知してたオンラインゲームのベータ今日だったっけか」
そういって私はそのゲームのタイトルを検索にかけた
「ルインズゲートオンライン」
公式の発表だとそのルインズゲートオンライン内は広大なマップが広がっておりその中に過去の遺跡や廃墟、機械などが数多く眠っていてそれを仲間と遺跡や廃墟に入り、謎や仕掛けを考えながら解いていきこの場所で何があったのか?等を見つけて行く。もちろん一人で自由にするも良し。という内容だった
最近流行っているMMORPGみたいにみんなでダンジョン潜って戦闘! よっしゃレベルアップだ! みたいな感じではどうやらなさそうだったので、あまり話題にはされてないゲームではあった
みんなで戦闘する時にミスったときにドンマイ!ドンマイ!って気を遣われたり逆に相手がミスった時に気を遣ったりするのが面倒と思いあまりオンラインゲームは長続きしなかった。
だから戦闘もあまりなくソロで遊べそうなゲームだったこのルインズゲートが少し気になっていたのだ。
「えーっとダウンロードはきてるのかなあ?」
と思い公式サイトに行ってみるともうダウンロード出来る状態になってきた。
「結構早いなあ。イヤー仕事してますねー」
なんて軽口をいいながらゲームをダウンロードする
フォルダを開いてアプリケーションを開くとゲームが起動した
タイトル画面が映し出されそこには白く美しい遺跡にこれでもかってくらい木の根が張ってる遺跡だった
その遺跡の真ん中には大きな樹が天井を突き抜けて空にめがけてめいっぱいの木の枝が葉っぱをなびかせながら堂々と君臨していた
「おー、なんか雰囲気出てるしいいじゃん!」
私はちょっと期待しながらゲームスタートを押す
カチカチ・・・カチカチ・・・
「あれ?クリックしてもなにも反応ないんだけど」
クリックしてもログイン画面にならずタイトル画面のままだ。しばらくまってクリックしてもうんともすんともいわない。マウスが効いてないのかなあと思い差し替えてみたけど反応はない
「初日から不具合ですかー?」
っと一人でパソコンにしゃべってたら画面に何か文字が現れた。
あなたはこの世界で自由に生きる権利を得ました
現実にさよならしてこちらに来ることを望みますか?
はい いいえ
「なんだこれ・・・w」
最近のゲームはこういう演出もやってくるんだなあとちょっと感心しつつちょっと驚いた
よくある異世界物のアニメでも見る状況に笑っちゃったけど
「まあ別に現実でやりたいこととかないんでこっちで骨をうずめられるなら本望ですよー」
と言いながら私は・・・
はいをクリックした
その瞬間、強烈にモニターが白く光った!
私の部屋全体が真っ白になるくらいの光が放たれて私自身もその光に飲み込まれる感じだった
「ちょっと!マジでどうなってんのこれ!?モニター壊れたってそんなレベルじゃないでしょ!!!」
と椅子から立ち上がり目を腕で覆いながら光が収まるで耐えていた
そして・・・
光が収まり目を開けたら・・・
「え?ここどこ?」
私は見知らぬ場所に立っていた
四角の透明なタイルみたいなものが天井も床も左右の壁にも敷き詰められていてタイルの端が緑色に光っていた。そして透明な壁の先に見える景色は何もなかった。本当に何もないどこを見渡しても何もない真っ黒な世界がそこに広がっていた。そこで私は真っ黒な空間に浮かんでいる四角の部屋の中に閉じ込められてることに気付いた。
展望台に登ったら床が透明で下が見えるみたいなものがあるが比じゃないくらい怖い。
だって下真っ暗で何も見えないし何より飲み込まれそうだし。
そんなことを考えてキョロキョロしていたら突然後ろから声が聞こえた。
「こんにちは、楓さん」
ビクッ!って反射的に声がした方の反対に飛び下がりその声の主を見つけた。
すげー可愛い白い羽の生えた女の子が立っていた。