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超重騎士  作者: 磨穿鉄硯
第一章
4/9

九歳

時は経ちハロルド9歳。


彼は充実な農民ライフを送っていた。




 9歳にもなり大分こちらの生活にも慣れてきた。


 朝、日の出とともに起床して畑に向かう。それから一刻ほど作業をする。そうしたら朝食休憩をとる。それから昼頃の休憩まで仕事をする。昼の休憩のあとは午後の仕事を開始する。仕事が終わるのは日が沈む少し前になってからだ。そんな生活を送っている。


 雑草の除去。たい肥の作成。害虫の駆除。水くみ。どれも人力で行うため大変な重労働になる。特に9歳の子供にはかなりの負担だろう。



 しかし自分はそこまで大変な仕事ではなかった。

 それはこの世界の自分「ハロルド」がとても恵まれた体格で生まれたからだろう。


 9歳にして身長は140㎝を超えるほどある。

 体格も子供にしてはしっかりとしたものだ。



 その恵まれた体を使って日々畑を耕している。


 ここ数年で自分がおこなってきたことは農地の開拓だ。



 我が家では自分の後に子供が二人生まれた。


 自分より3つ下の次女メラニーと5つ下の三女リンジーが生まれた。

 二人とも女の子で父がとてもかわいがっている。


 我が家は8人家族の大所帯になったのだ。



 そこで問題が生まれる。



 それは食料問題だ。


 ただでさえ自分の時にでも食事はカツカツだったのにそれから二人も家族が増えたのだ。


 もちろん対策はした。畑に落ち葉や灰などを撒き肥料にしたり、畑をもう一度深く耕しなおしたりした。


 この村では鍬などの農具はほとんどが木製のもので、人力で畑を耕すだけでも前世の鉄製の農具とは驚くほど労力を使う。鉄製の物ほど頑丈ではないため深く耕すのは難しい。木製のため簡単に壊れてしまう。


 それでも必死に畑を耕し、収穫量も増やすことができた。




 しかし自分は忘れていたのだ、自分たちがどんな立場なのか。



 徴税官は1年に一回村に来る。

 畑の大きさごとに税金として麦を回収していく。


 大体収穫量の3分の2はもって行かれてしまうのだ。

 せっかく一生懸命作った麦もその半分以上はもっていかれる。これでは一向に食糧事情はよくならない。


 農民と言う地位が自分の努力を一瞬で踏みにじられる。その苦しさを自分はこの時はじめて味わった。

 異世界転生もので農民に転生する話も多々あるがそれではこんな苦しさがあるとは思わなかった。




 だから自分は農地を開拓することにしたのだ。


 家族の協力は得ないで、その代わり畑仕事は手伝わないで農地開拓に邁進(まいしん)した。


 村の外れにはまだ誰も手を付けていない土地が残っている。これは村の人口が増加していないためだ。様々なものを作るために木を伐採することはあってもそこを農地として整備し耕す労力がこの村にはないのだ。


 だから自分がこの状況を少しでも変えたいと思ったのだ。

 新しく開拓した農地は5年の間税金を納めなくていいためその間に食糧の安定化と、できれば鉄製の農具を購入したい。鉄製の農具が一つあるだけできっと生産効率は大きく上がりまた新しく畑を耕すのにもいいだろう。



 自分は一人孤独に戦った。



 日が出きっていないオレンジ色の空のなかで畑を耕し始めるの。


 未開拓の土地は土も硬いため鍬を何度も何度も力いっぱい振り下ろさなければならない。さらにまだ人の手が入っていない土地は石や植物の根っこが多くそれはしっかりと取り除かなくてはいけない。もし力いっぱい振り下ろした鍬が下手に石にでも当たれば鍬が欠けて仕事はより難航することもある。



 本当につらい仕事だ。


 それでも朝起きてから日が暮れて家に帰るまでひたすら無心で畑を耕した。





 そして2か月ほどで我が家の新しい畑を作ることができた。我が家が今まで耕していた畑の半分程度の大きさを開拓することができた。


 これにより我が家の食料事情は改善されていった。



 この我が家の開拓をきっかけに村で開拓ラッシュが起きる。


 村人たちの心理は自分たちと同じような経済状況の家が新しく農地を開拓したことで生活に余裕ができたのだ。

 それを見て「じゃあ自分たちも頑張って新しく農地を開拓しよう」という考えの者が増えたのだ。


 それによりわが村では開拓事業が急激に進んでいった。

 村のみんなでお金を出し合い農地の開拓をより効率的に進めるため鉄製の農具を買ったり、はじめは個人個人で開拓を進めていたがみんなで協力しあって開拓を進めていった。


 一番つらい一回目の鍬入れはみんなで一斉にやった。お互いを励ましあい一生懸命鍬をふるう。


 もちろん自分も開拓事業に参加した。



 開拓事業は進み森の開拓にも取り掛かった。


 木々を伐採し、水を引き、土を耕す。


 自分は一日も休むことなく村の大人たちに交じって働いた。



 我が家から始まった開発ラッシュは村全体を巻き込んでいった。


 そしてみんなの類まれな努力により村の農地は倍近く増やすことができた。

 我が家では鉄製の農具や更に今までは借りていた牛などの家畜を購入することができた。食糧事情は安定し生活に余裕もできたのだ。





 そして現在、自分は充実した農民ライフを送っている。



 季節は春、気温が上がり暖かくなってきたころ。


 小麦は芽を出し始めているころ。

 雑草などのむしり小麦の発芽を邪魔しないように畑を維持する。肥料などはもう冬の時期に撒いてしまっているので後は芽が出るのを待つのみ。


 その日は午前中畑仕事をして午後は妹たちの面倒を見る。


「ハルお兄ちゃん今日はなにして遊ぶ?」


「おにーちゃんなにする」


 妹のメラニーとリンジーが自分と遊ぼうと袖を引っ張る。

 ちなみにだが自分の愛称はハロルやハルだ。村のみんな今は自分のことを愛称で親しみを込めて呼んでくれる。


 次女のメラニーは母さんに似たかわいらしい茶髪に青い瞳だ。性格は活発的で将来は父さんのような頼れる大人に成長するだろう。


 三女のリンジーは父さんのような金髪碧眼だ。顔は母さんに似ていてこちらは特に将来に期待できそうだ。



 今日は二人に文字を教えてあげようと思っている。


 父さんや母さん兄さん姉さんにももちろん教えようとしたんだが、みんな文字なんて読めなくても別に困らないと文字を覚えてくれなかった。


 妹達には文字を教えて知識と言うものの大切さを知ってほしい。



 と言ってもただ文字を教えても小さい二人ではすぐに飽きてしまう。


 そのために自分が作ったのは、絵札だ。

 この絵札は表面に絵が、裏にはそれに対応するスペルが書いてある。絵札を表にして並べ、この絵のスペルは何かと答えていく。無事その絵のスペルが言えたら絵札が貰えもう一回答えのことができる。言えなかったり間違えたら次の人が回答していく。最終的には枚数が多かった方が勝ちだ。

 そんなカード遊びだ。


 これはメラニー達以外にも村長の孫娘クロエや薬師の孫エバともたまに遊ぶときにこのカードゲームをやっている。

 二人ともメラニーたち自分の妹にいいとこが見せたいのか二人が居るときには積極的に絵札で遊んでくれる。

 エマは正解率がかなり高くなっているが、クロエはよく間違えてエマに笑われている。


 まだ3歳のリンジーには文字を覚えるのは早いと思うがゲーム感覚で楽しめるものだと刷り込むために一緒に遊ぶ。

 5歳のメラニーには文字を覚えるのはちょうどいいくらいだろう。



「二人との今日もこのカードで遊ぼう」


 二人にカードを渡す。


「えー またこれやるの。これむずかしいからリンジーきらい」


「あたしは最近分かるようになってきて楽しいなぁ」


 リンジーはやはりまだ早いようで外で走り回ったり体を動かす方が楽しのだろう。

 一方でメラニーは自分の彼女への知識の必要性を訴え続けたのを理解してくれたのか最近知的好奇心が強くなり、この絵札遊びもよろこんでくれるようになった。


「分かった。じゃあこれで少し遊んだらクロエかエマのおうちに行って一緒に遊ぼう」


「やったー おにーちゃん早くやろうよ」


 リンジーは自分とよく一緒に遊ぶ二人のことを姉のように慕っている。



 三人で絵札で遊ぶ。


 この絵札もずっと同じものだと飽きてしまうので定期的に新しい札を追加する。

 新しい札を今までのものと混ぜて変化をつけていくのだ。こうすることによって妹たちはもちろんクロエとエマの二人も飽きずに楽しく遊べている。



 自分の想像していた異世界転生よりも戦いからは離れ、現実的に困窮し、またほのぼのゆったりとしたものではあるがこれはこれで楽しく過ごせていた。

 かわいいく最近女の子になってきている二人の友達。

 かわいらしい妹たちをはじめとした家族。

 かなり充実した日々を送れていると思っている。






 ハロルドはこうして異世界で家族や友人たちと一緒にほのぼのと安定した日々を過ごしていたのだった。

 いたのだった。

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