プロローグ
初作品です。大変暖かく見守っていただけると恐縮です。
会社員7年目。
正直生きるのに疲れた。
上司にパワハラを受けているわけではない。同僚からいじめられている訳でもない。仕事が激務だというわけでもない。会社がブラックだというわけでもない。何かこれと言って不満があるわけでもない。
でもただ疲れたのだ。
朝起きて満員電車に揺られ出勤して、会社でいつもと同じような仕事をして、仕事を終えて、会社を出てまた満員電車に揺られ家に帰る。そんな一日を毎日続けている。ごくごく一般的な会社員であるだろう。
でもそんな変わらない日々に疲れたのだ…
だからだろうか自分は帰り道でトラックのライトが目の前いっぱいに広がったとき、思わず笑みを浮かべてしまった。
こんな生活から解放されるだろうと…
気が付くとそこは知らない世界だった。
というかこんなところがあるのだろうか。
そこは一面真っ白な世界で上も下も右も左も見当たす限り真っ白な世界。自分が今立っている床であろうところも真っ白な何も無い世界。
すると目の前に何か白い人型のような靄が現れた。
「なんだこれ」
興味本位で触れようとすると急にその靄が声を発した。
「私は神である」
「へぇ?」
靄がとても威厳を感じさせるような声を発した。
「私は神である」
「神?」
トラックに撥ねられたと思ったらよくわからないところにいる。
急に人型の靄が現れたと思えばそれは自分を“神”だと言う。情報量が多すぎて混乱する。これは夢か何かなのだろうか。自分は本当にトラックに撥ねられたのだろうか。
「中山 勉君、君は先ほどトラックに撥ねられて死んでしまったのだよ」
“神”と名乗る靄が自分の疑問に答えてくれた。それになぜか自分の名前を知っている。こいつは本当に“神”なのだろうか。
「中山君、まだ混乱しているのも納得できる。しかし話を進めさせてもらおう。君は会社からの帰宅途中、横断歩道で前方不注意のトラックに撥ねられて死んでしまったのだよ。残念だったね。でも君にはチャンスを与えよう。もし君が望むのであれば君を地球とは異なる世界にだがもう一度人生をやり直す機会を与えることができる」
「それって“異世界転生”ってやつですか?」
自分は思わず質問してしまった。
だってオタク趣味の自分にとっては異世界転生とは最高のシチュエーションじゃあないか。興奮が収まらない。この疲れた生活で異世界に行けたらとどれだけ考えたほどか。
「そうだ。君が想像している“異世界転生”と考えてくれていいだろう」
「マジですか‼じゃあもしかしてチート能力とかももらえたりするんですかね」
「分かった君に力を渡そう」
「やった‼これで俺も異世界で俺TUEEEEEしてハーレムが作れる。
ありがとう神様。ありがとうお母さん。俺を産んでくれてありがとー」
日々を消費していた自分の生活の中で数少ない心を癒せることができたのがアニメや漫画だったのであろう。その中でも自分は異世界ものでは頭を空っぽにできるものが多くて好きだった。
最近はすべていおいて疲れていて無気力だった自分。
娯楽に触れることもなく一日をただ消費していて、少し距離を開けていたが自分の大好きなことであることには変わりはない。そんな憧れの異世界へ行けるなんて。
「それでは中山君、異世界ガラエルに行くかい?」
「はい‼よろしくお願いします」
「では君を異世界へ送ろう」
「えぇ‼もうですか⁉」
すると視界がホワイトアウトしていき意識もだんだんと薄れていく世界で“神”が手を振っていた。
「さようなら」
最後に”神”の一言がポツリと聞こえた