収納魔法の間違った使い方
美袋空は、その日啓示を受けた気がした。
この世界の魔法には、まだまだポテンシャルがある。
そう、知らされた。誰から聞いたを説明する事はできないのだが、そう思った。
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------中世ファンタジー世界
------人々は冒険者となり、成り上がる事を目指す。良い依頼を達成するためにお金を借りて装備を揃えて成功する者、失敗する者。
------商人を目指し成り上がりを目指す者は、レバレッジをかけて一気に成り上がろうとし、成功する者もいれば失敗して奴隷に落ちるものもいる。
この世は、奴隷という存在が当たり前に存在する。
------成功した者は、成り上がりで得たお金で奴隷を買い、自分とは別に冒険させて効率よく冒険したり、異性を買って性処理をさせたりする者。
そんな常識に囲まれた世界。
美袋空は、今、ギルドで大きな勝負を仕掛けようとしていた。
「この依頼を受けます。」
本来ならば、ランク的にはクリア等できる筈もないが、なんとしてもクリアしないといけない理由があった。
美袋空にそんな大きな勝負を仕掛けることができる理由は、産まれつきもったとある魔法のおかげであった。
【収納魔法】それは、冒険をする者、商人どちらにとっても憧れであった。
その魔法を使うだけで、隣の町だけでなく海辺の魚を山間部の町に持っていき高く売ることができる。
大量の荷物を持ち運ぶ際に、馬車等の運送方法を考えなくても良いのだ。
冒険する者にとっては、頼みの綱である装備や薬品等、荷物を嵩張らせることなく運んで冒険をする事ができる。
習得の方法は確立されておらず、使い手は需要に対して圧倒的に少ない。
ある日、何かのきっかけで覚えるか、産まれつきおぼえているかのどちらかだ。
「本当に良いのですか?」
受付をしてくれてくれたギルドの職人が心配そうに尋ねてくる。
「----大丈夫です。」
美袋空は、そう、答えた。
実際はとある理由からそう、答えるしかなかったのだが。
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美袋空が契約した内容は、もしも依頼に失敗した場合、奴隷に落ちる。
【収納魔法】が使えるため、自分の身を担保に出せば今回の依頼にかかる装備のお金や腕利きの冒険者をやっていた奴隷の人たちを買うのは簡単であった。
依頼に失敗した場合、と契約内容をそうする事で出資する者は普通に買うよりも良い条件で【収納魔法】の使い手を手に入れる事ができると考えて出資した。
なお、腕利きの冒険者をやっていた奴隷達はその出資者の元所有物でありこの依頼のため、一時的に所有者を美袋にしていた。
----依頼内容は、ドラゴンの討伐。
美袋空の故郷を奪ったドラゴンを討伐するために、美袋空はその身を捧げて討伐しようとしていたのだ。
美袋の身に危険があった場合、街の教会に転送される召喚魔法もかけられたため、逃げる事もできない。
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火竜の住む山へと向かい、闘ったが、大方の予想通り、一緒に戦うために居た奴隷達は次々に倒れてしまった。
絶対、この竜を倒す。そう思っていた美袋の決意などをあざ笑うかのように残りが少なくなっていった。
その時、啓示のようなものを受けた。
倒れて、息のある冒険者を【収納】する。
【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】【収納】・・・・・・・・・・【収納】
本来、生き物は【収納】できない。
しかし、奴隷は所有物。
できないとされてきた生き物が【収納】されてゆく。
美袋は、力が体に溢れるのを感じた。
力、知力、能力等も【収納】され、合わせる事で強大な力を発揮した。
------ドラゴンを倒す力を手に入れた美袋は、ドラゴンを倒し、依頼を。悲願を、果たした。
大勢で倒しに行った冒険者が、何故か一人だけで帰ってきたその様子を見て不思議に思う者は居たが、討伐の証拠であるドラゴンの牙を見せられてからは、何も言わなかった。