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海の神々へ捧ぐ音(なろう版)  作者: 春風由実
第二章 海の洗礼

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10.ライカル到着


 汚名返上とばかりに急いだタークォンの軍船は、七日後の夕刻にライカルへと辿り着いた。

 通常よりはずっと早く着いたが、それを誰も賞賛出来ない状況である。

 

 到着後にイルハが真っ先に確認したのは、シーラの船がまだふ頭にあるかどうか、という点だった。

 見覚えのある船を見付けたとき、イルハがどれだけ安堵したか、想像に難くない。

 何と言っていようと、どんなに平静な態度を示そうと、妻を心配しない夫ではなかった。


 到着した日に王宮での挨拶を済ませた王子は、ライカルの王宮ではなく迎賓館に通された。

 ライカルにおいて高貴な来訪者は、ここに泊まることになっている。


「殿下、シーラたちを探して来ても宜しいですね?」


 王子の部屋に現れたイルハは、当然のように言った。

 しかし王子は不敵な笑みを浮かべる。

 イルハが嫌な予感を覚えたとき、ちょうどトニーヨが部屋にやって来た。なんてタイミングの悪い男なのだろう。


「待て。俺も行く」


「それは出来ません」


 イルハが断っているというのに、王子はトニーヨに言うのだ。


「おい、トニーヨ。俺は街を見て来るからな」


「はい?」


 トニーヨは明日の予定を確認するために来たはずだった。

 何故こうなるのか。トニーヨの顔が青い。


「着替えて行けば、問題ないだろう?お前たちだって、羽を伸ばすつもりだよな?俺がいけない理由はあるか?」


「いけないわけではありませんが、お待ちください、殿下。ここは異国の地であって、タークォンではありません」


「適当に警備兵を付けてもいい。ライカルの者たちに怪しまれないようにしろよ。いいな?」


「…御意」


 断れるはずもなく、トニーヨは慌てて警備兵に、王子を見守るように伝えなければならない。


 しかしながら、目立たないようにするのは困難であった。

 私服といっても、どの者も用意したのはタークォンらしい服であるし、警備兵は良く鍛えられた体をしているから、どうしても目立ってしまう。タークォンではむしろ目立つように存在していたせいか、身を隠す所業というのは警備兵たちにとってとても困難な指令であった。

 それでライカルの港街には、タークォンらしい男たちがあふれかえることになる。

 ライカルの者たちが何も言わなかったのは、それを受け入れる常識を持った国であったからに違いない。


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