第九話
ギルド長との話し合いを終えた俺は、ケインたちの元に戻る。
「大丈夫ですか、レックスさん!」
「ああ、そりゃあ話をしてただけだから大丈夫に決まってるだろ。って、なんで皆んなそんなに心配そうなんだよ」
「それは、ギルド長と一対一で話し合いなんて普通では無いですから。一体何の話をしていたんですか?」
ケインたちと話していたのだが、受付嬢のベルが話に入ってくる。
「そんなの決まってるでしょ! 当然に不正について問い詰めて……」
しかし話が終わる前にギルド長のジャンが首根っこを掴み、引っ張る。
「いい加減にしておけベル。これ以上は庇いきれんぞ」
「そんな! でもどう考えても、彼らが嘘を」
「それは無い。お前は目の前にいる人物が誰なのか本当に気付かないのか?」
「誰って、どこにでもいるオッサンじゃないんですか?」
「まぁオッサンには間違いないが、俺は元騎士団員だ」
このままでは話が進まないので、認識を改めて貰うことにする。
「それがどうかして……失礼ですが、お名前は何と、いえでもそんなまさか……」
「いや、そのまさかだ。彼はあの剣鬼のレックス殿だよ」
俺の代わりにジャンが答えた。
そしてベルは……一目散に逃げ出してしまう。
「おいおい、依頼の処理はどうするんだよ」
「すみません、それは代わりに私がやります。あとでしっかりと叱っておきますので、命だけは許してやってください」
「しないよそんなことは。ほらお前がそんなこというから、皆んなが怯えてしまったではないか」
怯えてというよりかは話についていけなかっただけなのか、ケインが質問をしてくる。
「えっと、結局はどうなったのですか?」
「ああ、依頼は完了で問題無いよ。ですよねギルド長?」
「はい、問題無いで……んん、無いよ」
あまりにも立場が逆転きてきたようなので釘をさすように目線を送ると、ジャンは言い直した。
「なら報酬は全て彼らに渡してくれるか? 俺はランクさえ上げられれば問題ないからな」
「いいんですか、レックスさん?」
「ああ、俺には必要ないからな。騎士団の頃の癖でお節介をしてしまったからな、俺からの達成祝いとして受け取ってくれ」
かなりの数の魔石があったから、それの売却益を合わせると良いお金になるだろう。
それで武器や防具を揃えるか、飲みに出かけるかは彼ら次第だ。
「ありがとうございます!」
皆が頭を下げて礼を述べてくる。
「まぁ俺たち全員で依頼を達成したんだから、そんなに恩を感じる必要はないよ。それなら俺はこれで失礼するから、後はよろしく頼むよジャン」
「分かりました。例の件も、直ぐに手配します」
「ああ、よろしくな」
こうして俺はギルドを後にしたのであった。