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騎士団から追放されたので、冒険者に転職しました。  作者: 紫熊
第1章 初心者冒険者
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第七話


 キラーマウスを倒した俺は魔石だけを回収し、残りは燃やして処分する。

 キラーマウスぐらいでは剥ぎ取りに掛かる労力が割に合わない。


「さぁ戻るかな」


 キラーマウスの死骸が燃え切ったことを確認し、元いた場所へと歩を進める。

 そしてケインたちの元に合流したのだが、暗い表情は変わらなかった。


「早かったですね……やはり一人では無茶だと悟って逃げ帰ってきたんでしょう?」


「何でそう思うんだよ。ほら」


 俺はケインに二つの魔石を投げ渡す。


「えっ!?」


「キラーマウスの魔石だ。これで依頼は達成だろ?」


「そうですけど、どうやって」


「どうやってと言われても、倒したとしか。それにまだあるぞ」


 持って帰ってきた魔石を全て取り出す。


「レックスさんって強い?」


「おお、リアーナか。まぁそうだな、そこらの冒険者には負ける気はしないな」


 すると驚いた表情で口を開けっぱなしにしていたケインが頭を下げてくる。


「い、今まで生意気な態度をとってすみませんでした!」


「どうした急に?」


「いや俺、てっきりレックスさんは弱いと思っていました。本当にすみません!」


「ハハハ、まぁ冒険者としての俺にはなんの実績もないからな。気にしなくていいよ」


「ちなみに前はどんなことをやってこられたのですか?」


「ん? ああ、ケインは聞いていなかったのか。俺は王国騎士団で大隊を率いていた。まぁ今は辞めちまったがな」


「王国騎士団で、隊長で、レックスってまさか……」


「なんだ、俺のことを聞いたことあるのか?」


 ケインたちがガタガタと震え出し、答える。


「まさか……竜殺しの剣鬼なのですか?」


「ああ、そんな風に呼ばれることもあったな」


 俺が答えた瞬間に一歩二歩と後ずさりされる。


「「「「すみませんでした!!」」」」


 今度はケインだけでなく皆が頭を下げてくる。


「おいおい、どうしたんだお前ら? 何か悪いことをした訳でもあるまいに、なんでそんなに頭を下げるんだ?」


「いえ、その、私たちとレックスさんとでは地位が違いすぎるといいますか……」


「なんだ爵位のことか? 確かにふつうの貴族であれば問題だろうが、俺も元は平民だから気にしないぞ?」


「それもそうなんですが、駆け出しの冒険者である私たちとレックスさんとでは、エリクサーと泥水ほどの違いがあるといいますか……」


「なんだそれ……まぁ確かに騎士団で俺はかなりの地位を築いたが、それは昔の話だ。今は君たちと同じ、新人なんだから威張るつもりはないよ」


「そうはいいますが……」


「まぁこんなところで話していても何だから、とりあえず街に帰ろう」


「「「「はい!!」」」」


「いや、普通に……まぁいいか」


 いきなり俺が率いるパーティみたいになってしまったが、これ以上の問答は面倒なので無視をする。

 そして変なテンションになったケインたちと共にギルドに入ると受付嬢に変な目で見られた。


「どうしたんですか、彼らは?」


「いやこれは……まぁ気にしないでくれ。それよりこれが依頼達成の証だ」


 俺はカウンターにキラーマウスの魔石を出した。

 優に二桁に達するその魔石を見て受付嬢は驚愕し、質問をしてくる。


「ちょっと待ってください、何ですかこの量は!? それにこの一つだけ大きい魔石は……」


「ああ、キラーマウスのクイーンがいた。充分な調査も無く、適当なランク付けをしてたら死人が出てもおかしくないぞ」


「そんな馬鹿なこと……貴方たち、まさか市場で魔石を買って来たのでしょう? 力のない冒険者が良くやる手です。そんなことをしたら違反行為で……」


 パニックになった受付嬢が俺たちを悪者に仕立てようとしてくるが、後ろから現れた男が肩を叩き止める。


「ギ、ギルド長!」


「なにかあったのかい、ベル」


「聞いてください、こいつらが依頼を達成するために魔石を買って持ってきたんです! 駆け出しの冒険者が、そんなに魔物を倒せる訳がないのに馬鹿ですよね!」


 ギルド長と呼ばれた男は依頼書と置かれた魔石を見て、ため息をつき頭を下げてくる。


「……はあ、馬鹿はお前だベル。すみませんでした皆さん、うちの者の不注意で危険に晒してしまいました」


「えっ、えっ、何でですかギルド長!?」


「キラーマウスの爆発的な増殖は、ギルド職員として常識的に知っておけ!」


「それは……そうかもしれないですが、なぜ彼らが倒してきたと分かるのですか?」


「この魔石を解析すると全て、一人の人間に倒された形跡がある。それが彼なのだ」


「そんな、こんなオッサンが……」


「お前は……ですが、私もあなたに興味が湧きました。少し奥の部屋でお話を聞いてよろしいでしょうか?」


「まぁ……話だけなら」


「ではこちらにどうぞ」


 非常に面倒だが、断って目をつけられるほうが面倒だ。

 俺も言いたいことはあるので、素直にギルド長の部屋に案内される。


 こうして俺はギルド長と話をすることになったのであった。

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