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騎士団から追放されたので、冒険者に転職しました。  作者: 紫熊
第1章 初心者冒険者
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第六話


 キラーマウスの群れに遭遇してしまい、あえなく敗退してしまった俺たちは浅い川を越えた所まで逃げてきた。


「ここまで来れば大丈夫だ」


 キラーマウスの縄張りを脱したこともあるが、川は人の匂いをも洗い流す。

 そしてキラーマウスに見失った敵を追い続ける知能はないのだ。


「こんなことになるなんて……」


 ケインが失敗に対してガックリと肩を落としている。

 だがそこまで落ち込む必要はない。

 確かに依頼を達成することは難しくなったが、窮地に陥ってから無事に脱した経験はかけがえのないものだ。


「キラーマウスは一匹のうちに駆除が推奨される魔物だ。複数になると爆発的に増える可能性が高い。だからこれはギルドのランク設定が間違っているんだと思うぞ」


 一匹だけなら弱いキラーマウスであっても、複数になると手強くなる。

 その状況を初心者冒険者が対応するランクに設定してはいけないだろう。


「そんな……でも知っていたならなんで先に教えて来れなかったんですか?」


「そうだな……強いて言えば経験して欲しかったからかな」


 魔物に対する危険性、そして複数体の魔物に対する対処、そして窮地を脱する経験。

 それらを一気に知る事が出来る機会など多くはない。

 それも騎士団のようにベテランが付くことのない冒険者であれば特にだろう。

 もし彼らだけで向かおうとしたならば無理にでも止めただろうが、今回は俺という保険付きだから止める理由が無い。


「でも依頼を達成出来なかったら意味が無いじゃないですか」


「そうか? 依頼なんていつでも達成できるだろ?」


 経験に勝るものなど無いから言ったのだが、冒険者には事情があるようだ。

 それをレイナが説明してくれる。


「冒険者は依頼の達成率も評価に含まれるんです。幾ら難しい依頼を達成しても、幾つもの依頼を失敗してたら昇格出来なくなるんですよ」


「へぇー、ってそれは最初から影響するのか?」


 そうだとしたら幾ら何でも厳しいだろうと思ったが、返答は是であった。


「はい……最初の失敗は冒険者資格の停止になるんです」


 実績の無い人間が初めからギルドの信用を落とすのだから然るべき措置なのかもしれないが、余りにも優しく無い。


「そうだったのか……ってそれはマズイじゃないか!」


「だから、落ち込んでるんだよ。オッサンが幾ら知識が豊富でも、依頼を達成出来ないなら意味ないんだよ」


「そうか……」


 一度ぐらいとも思うが、俺はこれからさまざまな場所に出向こうと思っているから、ギルド資格があった方が都合が良い。

 そして何日も何も出来ない日々が続くのは耐えられないものだ。


「分かった。今回は俺が依頼を受けるのを止めなかったし、何とかしてこよう」


「何とかって、どうするつもり……」


 ケインが話し終わるのを待たずに俺は走り出す。


「まぁ、軽い運動にはなるかな」


 キラーマウスなどの低級の魔物と真剣に向き合うのはいつぶりだろうか。

 本気を出せば魔石すら吹き飛ばしかねない相手なので、逆に神経を使うだろう。

 先ほどの地点に戻るも、既にキラーマウスは去った後であった。


「ふむ……仕方ない、アレをやるか」


 こんな相手に使うのはもったい無いが、俺は追跡魔法を使う。

 レイナのような詠唱はせずに無詠唱ではあるが、光の球が現れキラーマウスの痕跡を辿り始める。

 そしてたどり着いた先にあったのは洞窟であった。


「面倒だな……」


 洞窟の中がどれほどなのか分からないので、思わぬ時間を取られる可能性がある。

 ケインたちを待たせている以上、余り時間は掛けたくない。

 仕方がないので、中からキラーマウスに出てきてもらうことにする。


「全く、思わぬ出費だな」


 取り出したのは誘引香と呼ばれる液体の入った瓶だ。

 その匂いで周囲の魔物を引き寄せる代物である。

 とある魔物からしか手に入らないアイテムなので貴重なのだが仕方ない。


「ヂュウ!」


 後は飛び出てきたキラーマウスを倒していくのみである。

 しかし暫くすると他とは違うキラーマウスが現れた。


「クイーンのお出ましか……」


 他のキラーマウスより数倍の大きさを誇るこいつは、キラーマウスを増やす#女王__クイーン__#だ。

 こいつがいる限り、餌となる物の量にもよるが際限無くキラーマウスが増えていく。

 既に依頼達成に必要な数を倒したが、見つけた以上は放置出来まい。


「クイーンよ、あの世にエスコートしてあげましょう」


 意味が伝わる訳はないのだが、危機感を覚えた取り巻きのキラーマウスが襲ってくる。

 撫でるように斬り捨て、そしてクイーンの目の前に立つ。

 これで残るは一匹。


「ギュウ……」


 幾ら大きくても所詮は低級。

 突っ込んで噛み付いてくるしか能は無いので、あっさりと斬り倒す。

 そして上半身と下半身が分かれながらも、断末魔の鳴き声を上げて絶命した。


「さぁ、これで終わりだな」


 こうして周囲のキラーマウスを倒しつくした俺は、皆が待つ場所に戻るのであった。

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