第二話
ギルドに入りカウンターに向かう。
そして受付嬢に話し掛ける。
「すまんが、冒険者登録をしてくれるかな?」
「えっ!? あっ……はい、分かりました」
冒険者登録をすると言ったのがオッサンだからか二度見されてしまった。
まぁ剣を持っているとは言っても何の変哲も無い片手剣だ。
なので普通は依頼する側のような格好にしか見えないから仕方ないだろう。
「それでは手続きをしますので、金貨一枚をお支払い頂けますか?」
「意外と取るんだな」
「ええ、経費ということもありますが冷やかしで登録する人の対策ですね」
それは暗に俺の事を言っているのだろうか……。
まぁ登録さえ済めば、今にどう思われていようが関係ないがな。
なので言われた通りに金貨を支払う。
「……それでは手続きを致しますので少々お待ちください」
「ああ、分かったよ」
しばらく待っていると受付嬢は、魔術契約に用いられる特殊なペンを持ってきた。
「それではこちらのペンで署名していただけますか?」
「ここでいいのか?」
「はい、そこに署名することでギルド員の規約に同意したことになります」
「は?」
名前を書ききった所での言葉に、思わず聞き返してしまう。
「何か?」
「いやいやいや、ギルドの規約とは何ですか?」
「知らなかったのですか……でもまぁ当然のことですが、依頼の報酬から手数料をギルドが頂くこと、そして依頼で発生した事案に関してギルドは責任を負わないということです。なのでもし依頼の中で魔物に殺されても、ギルドは何も保証しないので家族がいるのであれば気をつけて下さい」
まぁ確かに冒険者になろうとしている人なら当然に知っておくべき事柄なのだろうが、それでも署名する前に確認して貰いたかった。
まぁ戦うことしか能が無かったからこんな歳まで独身なんで、関係ないがな。
「いや大丈夫、俺は簡単に死にはしませんから」
「そういう人ほど早く死ぬのですよ」
「さいですか……」
本当に見た目は大事なんだろうな。
幾らギルドの職員とは言っても、こんな普通のオッサンに期待なんかしない。
「それではこちらが、レックスさんの冒険者カードになります」
「へぇー、これが冒険者の身分証なんだ」
「そうです。今後、依頼を受ける際には必ず提出して頂きます。その他に実績を積めば、本来は入ることの出来ない場所にも入り許可を得ることが出来ますよ」
「へぇー……ちなみにどんな所に?」
「そうですね……まぁ貴方が入ることはないでしょうがSランクの冒険者になれば、北のウルガス山など伝説級の魔物がいるような場所にも入れますよ」
「へぇー……」
伝説級って、あのトカゲ共のことか。
まぁ冒険者だけでは手に負えないからとよく向かっていたが、それがSランクの特権って……。
「ちなみにレックスさんはFランクからのスタートですから、死なないよう張り切って頑張って下ださいね!」
「はいよ」
こうして、俺の冒険者生活がスタートした。