悲境駅
2018年3月3日 16:00
山道を走行中に車が故障し、山を彷徨うこと数時間。
俺の体力は限界に達していた。
助けを呼ぼうにも、電波は届かない。
従ってオンライン地図も使えず、現在地も分からない。
このまま誰にも気づかれぬまま雪に埋もれてしまうのではないか。
そう諦めかけていた時・・・
「あ、あれは?」
遠くに小さな建物が見える。
気力を振り絞り、俺は駆けだした。
ホームに待合室・・・
ここは、駅か?
非常に簡素な作りであるが、確かに駅の形をしていた。
駅なら、電車が来る。
助かった。
そう思って気が緩んだ瞬間、一気に疲労が押し寄せた気がした。
「電車が来るまで待合室で休んでいよう。」
そう思い、待合室の扉に手を掛けるが・・・
「ん?」
「あれ?」
開かない。
ちょっと待て。
駅の待合室に鍵が掛かっているとは、どういうことだ?
いくら人気の無い無人駅だからと言って、鍵を掛けるか普通?
「駄目だ。」
くそっ
何回かドアを動かそうとしたが、びくともしない。
こうなったら、電車が来るまで外で待ってるしかない。
携帯は相変わらず圏外だが、電車で街まで出て車の回収を頼めば問題無い。
「あと数十分の辛抱だ。」
そう自分に言い聞かせて、電車を待った。
2018年3月3日 18:00
おかしい。
一向に電車が来ない。
雪で電車が運休になってるのか?
だが、この地域は気温こそ-10℃に達するが降雪は少ない。
朝のニュースでも遅延や運休があるようなことは言ってなかった。
一体いつになったら来るんだ?
ふと後ろを振り向くと、白い看板。
「お、時刻表」
次の電車は何時に来るか確認。
――――○×線 △△駅 時刻表――――
上り 〇〇方面 下り ××方面
6 :34 11:55
14:15 15:20
20:52
ははは・・・
なんじゃこの時刻表は。
上りが1日たった3本に、下りが2本だと!?
こんな過疎路線は見たことが無い。
「こりゃ電車が来ない訳だ。」
次の電車は、最終の20:52の上り電車か。
あと3時間、待つしかないだろう。
2018年3月3日 21:00
「何でだよ!!」
来ない。
時刻を過ぎても電車の姿は一向に見えない。
ダイヤが乱れてる?
運行状況を調べられないのがもどかしい。
「時刻表の見間違いじゃあないよな。」
念のためもう1度確認。
――――○×線 △△駅 時刻表――――
上り 〇〇方面 下り ××方面
6 :34 11:55
14:15 15:20
20:52
「やっぱ合ってる・・・ん?」
下に何か書いてある。
※20:52発〇〇行き電車は、平日のみの運行となります。
なんてこった!
土日は運休かよ!!
と言うことは、今日はもう電車は来ない。
「どうすりゃいいんだよ・・・」
誰か助けてくれ。
~2018年3月4日 3:00~
夜も更けてきた。
寒い。
とんでもなく寒い。
手がかじかんでいる。
低温と雪で、何度も意識を失いそうになっていた。
次の電車まで、あと3時間余り。
俺は耐えられるのか?
・・・駄目だ。
何とかして待合室に入ろう。
ドアを壊すのは犯罪だが、非常時だ。
命が懸かっていたのだから、許されるだろう。
「お?」
もしかしたら、窓が開いているんじゃあないか?
そう思い、窓に手を掛ける。
と、そこで待合室の中に貼られた時刻表が目に入った。
――――○×線 △△駅 時刻表――――
上り 〇〇方面 下り ××方面
6 :34 11:55
14:15 15:20
20:52※
何だ、時刻表か。
・・・下に何か書いてある。
※20:52発〇〇行き電車は、平日のみの運行となります。
※12~3月は、全列車が当駅を通過します。
・・・・・・・・・。
駄目だ。
ここに居ても電車は来ない。
こうなったら、非常電話で助けを呼ぼう。
仮にも駅なら、管理駅への直通電話が設置されている筈だ。
受話器を上げて、待つこと数十秒。
「・・・出ねぇ」
いや、そもそも繋がってない。
まさか駅自体が通電していないのか?
いくら何でもそれは有り得んだろう。
「いや、そういえば・・・」
この駅には何個か電灯があったが、日没になっても点灯してなかった。
この待合室にも蛍光灯があるが、点かない。
「何だよこの駅・・・」
まともに管理が為されていないのか?
それとも、俺はどこか異世界に迷い込んでしまったのだろうか。
俺の頭は混乱し始めていたが、ふと顔をあげて目に入った張り紙で、すべて合点がいった。
「○×線は、2017年11月を以て廃止致します。
当駅廃止に伴い、待合室は施錠します。
長らくのご利用、誠にありがとうございました。」
これくらい本数の少ない駅は、地方には結構あるんですよね。
訪問する場合、ダイヤを調べてから行かないと大変なことになります。




