↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛鴨  作者: 山本 宙
9章 どうぞ召し上がれ
PR
69/70

69話 愛しています。鴨さん

 「ねぇ、亮介。久しぶりにどこかにお出かけしない?」


食器を洗いながら亜子が藍野に話しかける。

ソファーに座ってテレビを観ている藍野が亜子の方に顔を向けた。


「お出かけしようか。どこか行きたいところはある?」

「ん~、亮介は?」


「そうだな。フライボードで遊んでみたい!」


意外と返事が早く返ってきた。

しかも、亜子にとってあまり聞きなれないものだった。


「フライボード?何それ?」


亜子が頭を抱える。

空を飛ぶ遊びだと直感したが、

藍野に詳しい説明を求めた。


「フライボードって言うのは水圧で上に上がって、水上を駆け巡るスポーツだよ」


楽しそうに話す藍野。

それを聞いて亜子は一瞬沈黙の状態になったが・・・。


「楽しそうね!!私、それ今すぐやりたい!!!」


亜子も楽しそうと思ったら、すぐにやりたがる人間だった。


「よし、そうと決まったら準備をしよう」


この二人はとても楽観的で、決め事も意外とすんなり決まってしまうようだ。


場所も多少遠くてもあくまでも楽観的に向かう姿勢で、

遊びにはどうやら苦が無いようだ。


「行先は湘南だ!!行こう!」


「イエーイ!フライボード!!」


二人は湘南にたどり着いた。時間は昼間で丁度運動するにはもってこいの時間だ。


「ところで、亮介はこのスポーツやったことあるの??」


「いや、無いよ。全然・・・」


亜子は満面の笑顔から、苦笑いへと変わっていき、不安に包まれた。


「大丈夫だって!楽しいに決まっているのだから!」


何の根拠もない言葉だが、亜子はその言葉をただ頼るしかなかった。





いよいよ体験の時・・・。

二人は水着でライフジャケットを羽織った。

見たこともないボードなどの道具一式は

インストラクターに言われるがまま、身体に装着した。


少し緊張している亜子の顔を見て藍野が声を掛ける。

「安心しろ。俺がいるから」

その瞬間の藍野の顔は亜子にとって、ひと際たくましく。そして大きく亜子を安心させた。




フライボード、やってみれば二人はとても楽しんでいた。


水辺に落ちる。水辺から飛び出す。

言葉は歓声。言葉は悲鳴。


そして二人は水上を飛び回った。


ぐるぐると回り、格好を気にしない腰引けの藍野は

亜子から見て愛らしく思えたりした。


「あなたは鴨?」

亜子が冗談を藍野に飛ばす。


「僕は藍野亮介だ!」

インストラクターを気にせず二人は言葉を交わす。


「うるさい!亮介は鴨――!!」


「くわ、くわー!」

笑い飛ばして藍野は勢いよく水辺に向かって落ちた。


水がはじける音。

ケラケラと便乗して笑う周囲の人。



・

・・

・・・。


「愛しています。鴨さん」

そう誰にも聞こえない小さな声で亜子が囁いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。