60話 ダーリンノート
明日香のストーカー行為は毎日のように続いていた。
藍野を尾行して、常にひっそりとして藍野の様子を観察していた。
なんともおぞましい証拠がある。
それは明日香がカバンから取り出して、薫に提示した。
自慢げに話す明日香に怯えるほど薫はおののく。
明日香が取り出した物は一冊のノートだった。
表紙に「ダーリンノート」と記載されている。
一枚一枚ページをめくる。
2月24日 同窓会
私の目の前に座る男性が藍野亮介くん、一目ぼれしちゃった。
今日から私のダーリン。
3月3日 アイドルの女性と面会
知らない女が私のダーリンと会話をしている。でも、良い雰囲気じゃない。相手は地下アイドルとして活動する女のようだ。マジでダーリンに触るな。
3月18日 中国人の女と外食
私のダーリンは色んな女性と会うようだ。今日は中国人の女と食事をしていた。モテるから女性に狙われているのだろう。私が選んだ相手だから仕方がない。それでも心配だから私は監視します。
4月8日 アイドルと中川菜穂と公園で話していた
何かあったのかな。心配だから後をつけたけど、アイドルの女は泣いているし、菜穂は監視しているし意味が分からない。監視するのは私の役目だっつーの。
藍野の日常をすべて監視していた。
色々な女性と会っていたことも記載されている。
なんとも恐ろしいノートだ。これ以上見てはいけないと薫は目を閉じて、ノートを明日香に返した。
「何よ、薫はあまり、私のダーリンに関心が無いのね。」
薫は、膝の上に置いてある手が明らかに震えていた。
明日香が完全に藍野の尾行をして毎日記録しているのがはっきりと分かった。
「ねぇ、でも藍野くんって彼女がいるんじゃないのかな・・・」
やはり、言うべきことは言わないといけないと思い、彼女がいる男性に手を出すわけにはいかないと説得を試みた。しかし・・・。
「あんなの彼女じゃない。私が藍野くんを守っているのだから、あの変な女はそのうち別れさせるわよ」
「別れさせる・・・!?」
言っていることがめちゃくちゃだ。
いったい明日香にとっての藍野はどういう立ち位置なのだろうかと疑問を抱く。その上、私が藍野くんの本当の彼女だと言わんとしているのか。
明日香の言い方はあたかも、私が藍野の彼女である主張が沸々と言葉ににじんでいた。
「明日香・・・。私は知らない。何も知らないことにするわ。あなたがやっていることは私には理解できない。ごめん、帰るね」
完全に嫌気がさした。
いくら友人だとは言え、ここまで過激な行動をとる友人と一緒に入れないと思ったのだ。
「私の事なんて誰も理解してもらえないわよ。それでも私は・・・」
一人になった明日香は歯を食いしばりながらノートを力強く握りしめた。
「悔しい!好きな人は藍野くん!私の藍野くんでいてほしい!」
独り言とは思えない声量だった。
心の声が表に出てしまった。
我に返ると、周りの人たちが心配そうに明日香を見ていた。
ふと周りの視線に気づき、明日香もその場を離れていったのだった・・・。




