45話 同棲 section6 家事の役割分担
仕事の休憩時間はあっという間に終わる。
雇われの身は自分の時間なんてあってないようなものだろう。
それに、そんな限られた時間も仕事のことを考える人は溢れるほどいるに違いない。
それは雇われているからこそ、時間を少しでも仕事に向けていきたい一心の表れか。
そんな雇われの身である藍野と拓斗は、
時折、休憩時間にもかかわらず恋愛相談をしている。恋愛相談なんて職場でするものかと思う者もいるであろう。
しかし、二人にとっては極めて大事なのかもしれない。
なぜなら、二人の関係性を築き上げていった一つのコンテンツと言ってしまえば埒が明く。
そんな二人は休憩時間を終えると仕事場に戻る。
「あっ、亜子と付き合ったことを言えてないや」
限られた時間の中では、言えなかったこともある。
そんな中での付き合いは、時間を大切に思えたいものだ。
友人、恋人または家族と皆に値することかもしれない。
夕刻、仕事を終えた藍野はパソコンの電源を落とした。
「さぁ、帰るとするか」
藍野も拓斗もすぐさま帰路に向かった。
「じゃあな、拓斗」
「おつかれさまです。藍野さん」
まだ太陽はそれに浮かぶ。オレンジ色に照らすビル群を藍野は眺めながら歩く。
藍野が向かう先は自宅だが、今日も亜子がいる。
スマートフォンで亜子にメッセージを送る。
「もうすぐ帰るよ」
「気を付けてね」
お互いの状態を確認しあうのは、どれだけの人がやっているのだろうか。
藍野は大人になってから恋愛の走者となった。
だから、いまいちどのように振舞ったらいいのかわからない時がある。
こんなやり取りで良いのだろうかと思いつつ、
自分なりに考えて振る舞うのだ。
家に着くと亜子が玄関で迎えた。
「お帰りなさい」
亜子はLove Duckを早く切り上げて帰ってきていた。
同棲になれるためというのも一つの理由であろう。
そんなことは当然店長には言っていない。
「そうだ、役割分担をしないとね」
帰ってきて早々、役割分担の話を切り出した。
お互いが家事の何をするかを決める会議だ。
すぐに終わるだろうと思っていた・・・。
席に着く二人は早速話を始める。
「まずは洗濯の担当は?」
と藍野が質問すると、二人が同時に手を挙げた。
「んー、とりあえず洗濯は保留にしよう。次は掃除の担当は?」
また、藍野と亜子の二人が手を挙げた。
「ちょっと、二人とも手を挙げたら決まらないじゃないの」
亜子が不満をぶつける。
「亜子、僕は少しでも亜子の負担を減らしたいと思っているのだよ」
藍野にとって役割分担の目的は、亜子に大変な思いをしてほしくないからだ。
「そんなやって当然の家事は私だって手を挙げるわよ」
「家事の中でも大変な分野だろ?僕にだってやらしてくれよ」
思っていたこととは違って、議論を投げ合う会議となった。
どちらも手を引かないところが逆に決定に至らない要因となってしまった。
結局・・・。
藍野は洗濯をする担当を譲ってもらえたが、それ以外はすべて亜子になった。
「亜子だって働いているのに・・・」
「いいの!気にしないで亮介!」
家事決定会議はこうして幕を閉じた。




