40話 同棲 section1
二人の間には赤い糸が走っている。
お互いの小指に蝶々結びできつく締めてある。
付き合い始めたのは、つい先日からだ。
はっきり言って実感があまりない。
ヒデに打ち明けても、
本当に藍野と亜子は赤い糸で結ばれているのかと目を疑うが、赤い糸は
確かに互いの指を結んでいるようだ。
「良かったな!藍野!!ようやく彼女ができたんだな」
そう言って藍野の背中を強く叩いた。
喜び、励ますように背中を叩いているのだが、藍野は恐れるように
背中が丸みを帯びた。
するとキッチン裏から扉が開く音・・・。
エプロンを着ながら亜子が二人のところに歩いてきた。
噂をすれば本人登場。
ジーっとヒデが亜子の姿を見る。
「おなじみの顔ぶれですわね。お二人さん」
いつも通りの挨拶が飛ぶ。
馴れ馴れしい雰囲気が本当にいつもと変わらない。
(本当に付き合っているのかな。この二人は)
やっぱりヒデも疑う様子で見届けている。
すると亜子から思いもよらない言葉。
「亮介君、同棲しましょう!」
その言葉が出た途端に沈黙する。
藍野とヒデはお互いの顔を見て同時に亜子の方へ顔を向けた。
「同棲!?」
「今度荷物を持って亮介の家に行くからね」
「ちょちょちょっ!!」
焦って慌てふためく。
「何か?」
「何か?って急すぎるよ。まだ心の準備が・・・」
クスクスッ
口に手を押さえて亜子が笑った。
「いいのよ。ダメならダメって言ってくれれば。返事待っています」
そう言って厨房に向かって歩いて行った。
「亜子ちゃん、とてもストイックだよな。どうするんだよ、藍野・・」
「えっと・・・」
藍野が考える。
すると頭によぎったのは・・・
サブマシンガンを構える亜子・・・
銃口をこっちに向けて標準を定める。
「暗殺されるかも・・・」
「藍野・・・何言ってんだ?」
「いや!!何でもない!!」
サバイバルゲームの亜子の印象が強すぎる。
同棲って楽しみが膨らむが、
拳銃を構える亜子と住むとなると、
緊張が覚めやまないだろう。
変に汗が出てきた。
でも・・・いい歳だし真剣に考えているのだろう。
どうせ独り身なのだからと思って、
同棲もすぐに決めてしまっても問題ない。
そう自分に言い聞かせている藍野。
「何かあったらヒデ、僕を助けてくれ」
「まぁ、他人同士だから、色々と勉強になるんじゃないの?亜子ちゃんもよっぽど藍野を信頼しているんだろうな」
同棲を心待ちにするようにしてからは肩の荷をおろすようにフーッとため息が出てきた。
「藍野、いつでも連絡して来いよ。相談はここでしような。亜子ちゃんがいないときに」
(同棲か・・・)
いよいよと話が進んでいき、恋愛は急展開をし続けている。
藍野は受け止め切れるのだろうか。




