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愛鴨  作者: 山本 宙
1章 ようこそLove Duckへ
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4話 デート

 街コンパーティーはヘイヘイと連絡交換をした後、静まるように解散した。

そしてあくる朝、藍野のスマートフォンには「ヘイヘイ」という名が電話帳に記されていた。

大いに盛り上がった街コンパーティーは色々な企画もあっただろう。

しかし、藍野の記憶はヘイヘイとの会話がとても印象的だった。


じっと眺めるスマートフォンの画面は「ヘイヘイ」の名前に留まる。


たったひとつの名前だけが表示された画面を眺めるほど、藍野の記憶にはヘイヘイの表情がふつふつ沸いてくる。


中国の武漢市なんてヘイヘイの出身地をスマートフォンで検索したところで、何がわかるのか。


行ったこともない地をネットで検索しても、きっと意味はないに等しい。


それでも検索したくなるほどヘイヘイのことを知りたい気持ちが強いのだ。


ヘイヘイは中国の武漢市出身。

趣味は歌を歌うこと。

日本が好き。

苦手なものは高い所。



街コンで知れる相手の情報なんてしれている。


次に会った時はたくさん話しかけたい。なんて思いながらも、少なかった会話の中で、次のデートを連想したりする。


もう一度会って話したい。連絡してみよう。


SNSで連絡をした。


二人が会うところは神奈川駅。

待ち合わせ後のプランはしっかりと考えたいところだ。



当日は昼の時間に待ち合わせとなった。ヒデからの連絡。

「藍野!やるじゃねーか。まさかいきなり連絡交換できるなんてな。これからが本当に楽しみでならないよ」

電話越しでも大きな声がする。

スマートフォンからの音が耳元に響いた。

藍野は少し照れたような顔をした。電話越しでもさすがに照れる。ただでさえ、街コンでの出来事で嬉しい気持ちが込みあがってくる。

どうしても嬉しい表情が抑えられない。

頬がきゅっとしまって、にやけてしまう。

嬉しい気持ちになるのは当然であると自分を肯定しながらも、周りの人が自分のにやけ顔を見つけて、声をかけてこないか心配になった。



「ありがとうヒデ。デートの内容もためらわずに話すから、またな」


デート当日。


藍野は神奈川駅に着いた。


ヘイヘイの姿はまだ見当たらない。

あたりを見渡しながらも、腕時計にも目を向けた。

秒針がカチカチとかすかな音を鳴らしながら動いているが、とても遅く動いているように感じた。

見る所は秒針じゃない。

早めについた藍野はフッと息を吐いて、うごめきたい体を静止させた。



すると、改札から出てくる女性。

細い足をピタッとジーンズが締め付けている。

それはとてもカジュアルな服装に身をまとった女性はヘイヘイだった。

「あれ?藍野さん早いですね。」

一言目の言葉が中国人とは思えない流暢な話し方だった。


藍野の耳がカタコトの言葉になれたのか。藍野は一瞬の間を埋めるようにヘイヘイに話す。

「僕も今さっき着いたところだよ。さぁ、行こうか」

足並みをそろえるように二人は歩く。



歩幅が合わない二人はお互いがお互いに合わせるように歩いて

少しぎこちなく歩んでいった。



二人が向かった先はカフェ。

それは、駅近くにあるカフェで昼食をとりながら会話をしようと藍野が考えた。


歩いている合間、ヘイヘイが明るく話しだす。

「誘ってくれてありがとう。私は今日を楽しみにしていました。藍野さん、神奈川駅は遠かったですか?」

ヘイヘイは藍野の住まいを知らない。

同じ神奈川県に住んでいることだけ知っている。

「僕の家は少し遠いよ」

「そうなのデスネ。遠いところまで来てくれたデスネ。今日はゆっくりお話ししましょう」


カフェについて二人は席に座った。


藍野がそっとメニュー表を手に取り二人で見合った。

「私はミルクコーヒー好きです。だからミルクコーヒーにします。藍野さんは?」

「僕はコーヒーを頼むよ。」

そして注文をして一息つくとスマートフォンが鳴った。

「ごめんね」

藍野はスマートフォンを開くとヒデからのメールだった。

「ちゃんと藍野がリードするんだぞ。デートの内容は、あとから聞くからな。がんばれよ」

何から何まで励まそうとするヒデはまるで兄の振る舞いだ。

でも、さすがにデートをする時間帯を知っていながら、メールを送ってくることを少しお節介に思えたし、茶化されている気もした。

「ヒデ安心してくれ。後でゆっくり話すから、またな」



このデートが実現したのもヒデのおかげでもある。

ちゃんとしようと思えるのも、ヒデのこまかい励ましがあってのものだ。



スマートフォンをそっとポケットにしまってヘイヘイの顔を見た。

ヘイヘイはニコッと笑って話しかける。

「藍野さん、優しい顔をしています。なんか子供みたい。幼いですね。」

藍野は照れ笑いをした。

「ねぇ、一緒にカラオケに行きませんか?」

ヘイヘイは自分が趣味である歌を歌うことを藍野に知ってもらうため、カラオケを提案した。


お互いの行きたいところを意見として出し合っているなんてとても理想的なデートだと言えるかもしれない。

もちろん藍野の返事は大きく頷いて笑顔だった。

しかし、藍野はあまりカラオケに行ったことが無い。

まぁ、多少は相手の要望に応えてこそ、理想のデートが実現するのであろう。

藍野とヘイヘイはカフェから近くにあるカラオケに足を運んだ。

実はというと藍野も次のプランは、はっきりと決まっていなかった。


ヘイヘイの行きたいところ。異国出身なのだから、異文化であることを考慮してプランを練ろうとしたが、なかなか思い浮かばない。


国籍の違う人たちは付き合うにあたって、文化の共有を必然的に求められるのだ。

ともかく、ヘイヘイから次の目的を発言したことは、藍野にとってほっと一息つけたのだ。


カラオケでは早速ヘイヘイから曲を選ぶ。

「私の歌いたい曲を、機械で入力してください」

マイクを持った手を大きく上に伸ばして、天井に届けとばかりに伸ばした。歌う気が満々であったが、もう一つのマイクを藍野に渡す。



「ねぇ、藍野さん、キラキラ★Dream知っていますか?」

「あぁ、最近人気のアイドルグループだよね」

あまりアイドルを知らない藍野だが、キラキラ★Dreamは街中でもよく流れている歌を歌っている。

「私はキラキラ★Dreamのリーダーの橘ななみが好きなの」

「橘ななみか。高校時代の同級生と同じ名前だ」

ヘイヘイは人気の曲を楽しそうに歌った。

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