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愛鴨  作者: 山本 宙
5章 EXCITE
25/70

25話 アイドル

 世の中には男性の心を虜にする踊り子たちがいる。その踊り子たちは歌も歌い、様々な奉仕的活動をしている。世の男性たちはその輝く女性たちに目を引かれて舞台へと駆け込むのだった。踊り子たちは皆に好かれて「アイドル」と銘打って懸命に男性の心をわしづかみにする。

アイドルチーム「キラキラ★Dream」は地下アイドルとして活動をして東京の男性に人気を誇っていた。表には出てこない知る人ぞ知る存在は特別であった。


「キラキラ★Dreamのライブに足を運んでくれてありがとう!今日もいっぱい歌って踊って、皆さまを癒します!」

リーダーが誓うと、男性ファンは大きな歓声をあげた。

「いいぞー!!橘さーん!!」

リーダーは紛れもなくキラキラ★Dreamの中心者であり、多くの人気を勝ち取っていた。ライブの終盤にリーダーは重大報告と言って会場の真ん中に立った。

「皆さん、私は改名します」

「改名?」

ファンたちは現状を把握しきれなかった。いきなりの報告と言って改名を述べるリーダーに状況把握に必死に食らい付いた。

「改名ってことは芸名を変えるってことか?」

「そういうことだよな」

ファンたちはリーダーの一言に疑問を抱きながら、次の言葉に固唾を飲んだ。

「いったいどんな名前に変えるんだ?」

「名前を・・・橘ななみから・・・何になるんだろう」


キラキラ★Dreamのリーダーが口を開く。

「私は・・・橘ななみから・・・橘美姫に改名します!!」


会場がどよめく。緊急の報告でファンたちのどよめきは収拾がつかなくなった。

しかし、それでも美姫は話し始めた。

「ことの経緯なんて難しい話はしません。でも、これだけは言わせてください」

ファンたちがまた美姫の言葉に注目した。

「私の本名は橘美姫。これからもアイドルとして精いっぱい頑張るけれど、ありのままの自分で皆さんと接したい。私の本名は橘美姫。これからは美姫として皆さんと一緒にキラキラ★Dreamを盛り上げていきます!!!」


その言葉の瞬間、ファンたちは大歓声を美姫に送る。

「本名でアイドルを続けていくってことか!!」

「すごいじゃないか!!」



大歓声が覚めやまぬ中、美姫は手を胸に当てて目を閉じた。

(亮介、菜穂、ありがとう。そして、ななみもありがとう)

ライブは最終曲も盛大に盛り上がった。


翌日、ネットニュースを見ていた藍野がいた。

「人気絶好調のアイドルが改名。橘美姫」

ネットニュースに上がっている写真をクリックして拡大した。

「あいつ、アイドルだったのか」



世の中が狭く感じた瞬間だった。ニュースを見た藍野は偶然にも美姫と食事の約束をしていたのだった。


「今度の食事・・・大丈夫かな。ネットニュースに上がるくらいなら結構、世間に注目を集めているんじゃないか」

全く美姫のアイドル活動を知らなかった藍野は今度の美姫との食事会を心配していたのだった・・・。


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