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愛鴨  作者: 山本 宙
4章 望月拓斗 編
19/70

19話 本当の趣旨

 入社して間もない社員の望月拓斗は、少し服装を乱しながら電車に駆け込む。

前日に合鴨料理店のLove Duckで先輩の藍野にご馳走してもらい、恋愛について語り合った。


拓斗は社会人になる前から恋人が3年以上いない男だった。

先輩の話を聞いていると自分も恋愛をしたいと思うようになった。

急いで乗り込んだ電車で拓斗は一息ついた。

そしてあたりを見渡すと女性ばかりの車内だった。


「これは藍野さんが言っていたLove Duckに通い始めてから恋愛が発展していった効果のあらわれか?」


「すみません、ここは女性専用車両です」



傍にいた女性に話しかけられたと思ったら、女性専用車両に乗り込んだ拓斗への指摘だった。


「間違えました!」


そう言って拓斗は急ぎ足で隣の車両に移った。

冷や汗をかいた拓斗はハンカチで額の汗を拭き、乱れたネクタイを整えた。


「藍野さんの言っていたことは自分から積極的に女性にアプローチをする。だったな。魔法のように女性から接近してくるようなことはないか」



自分の勘違いにすぐ気が付いて左右の頬を両手でパン!と叩いた。



「気になる女性は勇気を出して話しかける!後、街コンもすすめられていたな」


昨日の話を思い出しながら通勤時間を過ごした。

変な勘違いをするほど、拓斗は単純かつ天然な考えを持つ男だった。

電車は都内を駆け巡る。そのまま通勤時間、勤務時間も何事もなく一日を終える。



「恋が芽生える出来事なんて何もなかったな」



そう言って眠りに着こうとしたが、街コンの話を思い出してスマートフォンで「街コン」と検索をかけた。

どれでもいいから参加してみよう。


スマートフォンの画面をスクロールし始めた拓斗。すぐに手が止まった。

「アニメ婚?面白そうだな」

めずらしい街コンに注目した。拓斗はアニメが好きだ。


「これだったら、話も盛り上がるかもしれない。すぐに予約入れるか」


拓斗はアニメ婚のイベントに予約を入れた。

その後に詳細を確認してスマートフォンの画面を閉じた。


「場所も内容もいまいちわからなかったけど、何でもいいや」


適当なところが拓斗らしい。アニメ婚が待ち遠しい気持ちになる。



「アニメ婚に参加する前にいくつかアニメを見ておくか」



街コンの趣旨から外れてしまっているような発想だった。


本来なら街コンに向けて準備をすることはいっぱいあるのだが、拓斗はイベント当日までにアニメをいっぱい見ることだけに専念した。


「僕の好きなアニメを語りまくるぞ。イベントまでアニメの予習だな」

そう言って拓斗は眠りについた。拓斗は街コン当日まで、毎日アニメを見る生活を送る。


ある日には会社で休憩時間に藍野が声をかけてきた。

「あれからどうなった?恋愛の方は」

「今度、街コンに参加することになりました。アニメ婚っていうアニメを題材にしたイベントなので、それまでアニメの予習をしているっす」



「アニメの予習・・・」



藍野も唖然とした。


拓斗は本当に恋人を見つけようと思っているのだろうか。と心配になった。


「藍野さん!吉報をお待ちください!かならずやアニメを語りつくしてまいりますから!」

藍野はその言葉を聞いた瞬間、心の底から不安になった。

「まぁ、頑張れよ。応援しているからな」


そして日は流れ、拓斗はイベント当日を迎えようとしていた。


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