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愛鴨  作者: 山本 宙
3章 鴨でも良い。鴨が良い
17/70

17話 後輩 section1

件名 旧正月祝いの件


To ヘイヘイ

From 藍野


 ヘイヘイさん、先日のイベントは店内がすごく賑やかで明るかったです。

その中でヘイヘイさんとその場を楽しむことができて本当に良かったです。

ありがとうございました。

郡上八幡のことは忘れていません。ぜひ、今度一緒にドライブしながら絶景を楽しみましょう。

よろしくお願いします。








藍野はヘイヘイにメールを送った。

出会った頃の最初は、中国人相手に難しい日本語を使うのを避けるようにしていたが、今はそれも気にせずメール本文も送信している。

なぜなら、ヘイヘイはやけに難しい単語も知っており、日本語のコミュニケーションを何の抵抗もなくやってのけることを藍野は知ったからだ。


メールを送った時の藍野は少しにやけ顔だった。

まだ、彼女でもない相手にメールを送るだけでも気分が高まっているようだ。

メールを送信した後、事務所にある自分の席に着いた。隣の社員が話しかけてくる。


「藍野くん、最近妙に明るいね。何かいいことでもあったのかね」


隣に座って業務をする人は藍野にとって先輩社員だ。


「ちょっと恋に芽生えてしまったのかもしれませんね」


調子に乗って話す藍野に先輩はあっけらかんとした。

「恋に落ちすぎてもだめだぞ」

杭をさすように先輩が話した。


「気を付けますね」


そう言って藍野はパソコンのキーボードに手を伸ばし、業務を再開する。

先輩は一度小さくため息を吐いたが、藍野が業務をする姿をジッと見ていると鼻笑いをした。


「藍野くんは最近特に良い働きをしているし、問題はなさそうだな」


藍野の仕事に向かう姿勢は恋愛が発展する前と比べても怠ることなく、まっすぐ業務に向かっている。先輩は藍野の姿を見て安心した。

「何があっても頑張るのだよ。藍野くん」


「ご安心ください」


意気軒昂に藍野は喋る。

会社の先輩は元気なさまを隣で見守っていた。

休憩時間になるとヒデからの不在着信に折り返し電話をした。


プルル・・・プルル。


藍野からの折り返しの電話も繋がらない。

入れ違いの状態なのだろうか。

仕事終わりにもう一度電話をすることにした。

休憩時間を終え、着々と次の業務をこなして仕事をする藍野。

時計の針が音を立てて動く。ぽつぽつと従業員が席を立ち、退勤する。

藍野の業務は定時を過ぎて終えた。


「少し残業になってしまったな」

藍野はゆっくりと席を立ちカバンを持ち上げた。

一人の男性従業員が藍野のところへ歩み寄る。


「藍野さん、お疲れ様っす!」



話しかけてきた男性は望月拓斗。藍野の後輩だ。




「拓斗、お疲れ様。お互い残業になってしまったな。駅まで一緒に歩くか?」

「はい!」


拓斗はハキハキとしたスポーツマン系のような口調で話す。

元気よさげな雰囲気がいつもの様子だ。

「藍野さん、聞いてくださいよ!僕地元の友人に彼女を作れ。って言われたんっすけど、全く出会いもないし困ってるんっすよ」


少し馴れ馴れしい話し方に最初は抵抗があった。



でも、しばらくの付き合いで藍野も拓斗の個性として受け止め、気にしなくなった。



喋り方は酷くても仕事には一生懸命で、藍野にしっかりと付いていく存在。


お互いに信頼を寄せていた。




「そんなに焦る必要はないよ。まだ二十歳そこそこなのだから、やりたいことをやっていれば良い」

「ありがとうございます!勉強になります!」

ちょっとした一言も指導を受け止めるかのように拓斗は聞く。


「ただ、藍野さんのように女性とも関係を築く人間に憧れています!どうやったら女性とも関係築けるんっすか」


拓斗も実家を離れて上京してきた従業員のうちの一人。


出会いの場を求めるのも必然的であろう。

「そうか。じゃあ話がてら飯でも行くか」

そう言って拓斗に夕食を誘った。

「ありがとうございます!」

「ところでさ、合鴨料理って食べたことある?」

「合鴨料理っすか」

二人が向かった先はもちろんLove Duckだ。藍野の案内で店に向かって歩いて行った。


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