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点心中華編  作者: せみ
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第2回

 ようやく食べ終わった麻婆豆腐。大半は彼女がおいしそうに食べてくれた。

 はいっ、と差し出された水。警戒心を持って、まずはテイスティング。うん、ふつうだ。ごくっと一気に水を平らげる。ふぅ、生き返った。

「とこれでさ、ちょっと聞いていいかな?」

「うん、いいよ」

「無理なら断っていいからさ、その、ここでバイトしてみない?ここ、従業員が私を含めて2人しかいないに・・・・・・」

 どんどん声が小さくなっていく。けなげっていいなぁ。そう、私はそこまで人は悪くないんだ。引き受けてあげようではないか。

「うんいいよ。なんか困ってそうだしね。それに、ね」

 本来ならこの後に、「自給も高いしね」とくるのだが、ここは胸の奥にそっとしまっておこう。

「えっ、ほんと?ありがとう」

 潤んだ瞳に見つめられ、そのうえ手まで握られて。これこそまさに、神の祝福って奴か。うん、ありがとう神様。千載一遇っていう四字熟語がピッタリっぽいな。

「ところでさ。何でチャイナドレス着てんの?まさか制服とか?」

「そのまさかだよ」

 うっそ、マジッすか先輩。私も着るんすか、そのチャイナドレス。いや、一人称は私ですけど、一応男ですから。そんな趣味ありませんて。

「大丈夫だって、男の子にはそれ相応の制服があるから」

 ほっ。っとまて。また見透かされたか。たく、やるなおぬし。

「んで、いつからくればいい?」

「それじゃ早速だけど、明日の8時にはここに来てくれないかな」

「OK。それじゃ8時にね」

「待ってるよーーー」




 現在時刻は7時45分。あの商店街に行くにはもう家を出てないといけない時間だ。まぁもっとも、とっくに家は出てってるけどね。

 そういえば、あの子の名前聞いてなかったな。結構可愛かったし、名前もきっとかわいいだろう。

 点心の前であの子が迎えてくれた。ヤッホーと手をぶんぶん振り回して。朝からやけに元気だな。少しは見習わなきゃ。

「やあ、少し遅かったかな?」

「ううん、だいじょーぶ。それより、昨日聞き忘れたんだけどさ、君の名前は?」

 そう、そう来ると私はすでに予想してたのさ。さ、なんて答えよう。普通に答えるか、はたまたちょっと面白おかしく言うか。と、ここまで考えたものの、私にはそんな能力なんてナッシングなので、ここはシンプルに普通で行こう。

「私の名前は結城或(ゆうきある)。結ぶ城に、或いはの或。因みの高校1年生。ところで君は?」

「ふーん、結城或っていうんだ。勇気があるって捉えられるね。あっ、そうそう。坂東菊音(ばんどうきくね)っていうんだ。よろしく、或クン」

 おおっと、いきなり名前ですか。焦りますねー、なんか。

「さ、入って入って」

 手を引っ張られて無理やり店内へ。傍から見ると、朝っぱらから馬鹿じゃねえの的に見えるけれども、これは拉致ですよアニキ。うらやましがったら負けって奴ですぜ。




 昨日も見たけれど、店内は意外と綺麗だった。たぶん菊音ちゃんが、せっせと掃除してんだろうな。勝手な妄想だけど。

「んじゃ、ちょっと着替えてくるからそこで待っててね。或クンの制服も持ってくるから」

 脱兎のごとく駈けていった。文法的にあってるか分からんけど、まぁ気にしない。

 そういや、店長って誰だろ。今厨房にいるかな。いたら挨拶ぐらいしなきゃか、人としての礼儀だと思うからな。

 厨房の方を見ても人の気配なし。もしや、店長は気を消せるのか?厨房に近づいても気配なし。今は買い出し中とかか。うん、納得。

「或クーン、おまてせぇ」

 おぉ、主役の登場か。いやぁ、ほんというと菊音ちゃんがいるから、バイト始めたようなもんだしね。あと自給も高いか。

「はい、これが或クンの制服」

 と、渡された制服。なんと言えばいいのか。もちろん、チャイナドレスではないのだが、なんだかなぁ。中国武術の達人が着るような、カンフーの服かよ。似合わねー。マジやばいってこれ。

「まぁ、お似合いよー」

 と、菊音ちゃん。あなたが男だったらぶっ飛ばしてるよ、もう。まぁしかし、生地のさわり心地はいいね。さらさらして、意外と気持ちい。何の生地だろ?

「あぁ、それね。それは確か・・・・・・そう、一応絹だったはずだよ。シルク、シルク」

 フーン、絹かぁ、絹ねぇ・・・・・・って、まじっすか?やばいって、私には一生縁のない物だって。高嶺の花だってこれ。

「さ、仕事仕事」

 あぁ、どっか行っちゃった。たく、どうすりゃいいんだよ。いくら見たって絹には変わりない。いっそのことパクッちゃおっかな。

 仕事かぁ、だるっ。はぁ、バイト引き受けなきゃよかった。自給高いわりには客来ないしさ。やってけんのかなこの店。裏では、暴力団とかマフィアとかと繋がってたりして。うぅ、考えるだけで寒気がしてきた。

 考えててもしょうがない。仕事内容知らないけど、なんかやるか。

或>おめでとう菊音ちゃん。

菊音>???なにが?どうしたの?

店長>おめでとう。

菊音>あぁ、まだ本編に出てない店長まで。いったいどうしたの?なんかエヴァの26話みたいだよ?

或>まだ気づかないの?ほら名前だよ。

菊音>名前?・・・・・・あぁ、『こけた彼女』から『菊音』に変わ――

或>昇進したんだよ。

菊音>ちょ、何でさえぎんのよ?だいいち昇進って何?

或>あっ、長いからもうここでおしまいってことで

菊音>ちょまっ、なんなの――

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